クエスト『街道を荒らす悪逆非道な盗賊を倒せ!』
「さぁ、魔王を斃しに出かけましょう! 私達の手で世界に平和を! これが夢見る最初の一歩なのです!」
何だか、元気いっぱいな声が聞こえた。このドワーフ……ユーノは元気だな。はぁ……そうだな。そろそろ俺とアリサも動くか。このユーノを加えて仲間も増えた事だし。俺やアリサをこの世界に呼んでくれた爺様との約束……いや、義理立てに出発しても良い頃だろう。
「どうする? アリサ」
「セネシェさんの中では、もう決めてあるのでしょう?」
俺はアリサの微笑みに答える。そうだな。とりあえず南の王都へ行こうか。王都に行けば、何かしら魔王の事についてもより詳しい話が聞けるに違いない。世界の動きを知るには、この街は田舎過ぎる。
──んで、だ。
◇ ◇ ◇
──王都へ向う街道。その森沿いにはしる街道から少し離れた丘陵地帯。たぶんこの辺りに村人から聞いた盗賊のねぐらが……<<魔法眼>>による索敵だ。なかなかそれらしい場所は見つからな……いや。うん。あった。発見だ。この距離なら狙い撃ちできる。よーし、場所さえ判れば盗賊なんて、俺達の敵ではないはずだ。
「とりあえず<<火球>>」
俺の拳から打ち出される炎の球。それは一直線に奴らのねぐらの前に飛んで行く。
「ちょ、セネシェ!?」
俺の魔法詠唱に、すかさずアリサが突っ込んで来たが気にしない。いや、むしろ俺が正しいはずだ。『悪党に人権は無い』と、どこかの偉い魔道士も言っていた事だし。
そして炎の玉は落着した。その場を火炎と轟音が支配する。うーん、爽快爽快、気分もすっきり。
まぁ落ち着けよアリサ。
「おお、凄まじい威力なのです! ユーノ、突貫します!」
右手では頭を隠していたユーノが丸楯と戦斧を構えて突撃に移った。
「わ、私も行きますユーノ!」
続くアリサも連接棍と小楯構えて駆け出す。ええと、俺の目の前では盗賊どもが吹っ飛んだと思うんだが?
俺も長剣と丸楯を手に、一歩遅れて駆け出した。
おお、盗賊どもが転んでる転んでる。近くの村々や旅人を襲っては金品を巻き上げていたらしい悪党どもに相応しい最期といえるだろう。よし、残りを殲滅だ! 盗賊どもよ、大丈夫だ。お前らが溜め込んだ金品は俺達がしっかりと有効利用してやるからな?
◇ ◇ ◇
そしてここは街道沿いの村、ニオロ村の唯一の酒場兼宿屋。鉱山都市リルデウムから南に半日歩いた程の距離に位置している農村だ。
ああ食った食った。今日も目の前に空の皿が幾つも並んでいる。
「セネシェと一緒に旅をするのは楽しいのです!」
エールのジョッキを片手にユーノのツインテールが揺れた。
「はい。そうなんですよユーノ」
そんなユーノの笑顔にアリサが微笑む。
「そうなのです!」
よし、今日はカリカーラを呼んでいない。そろそろ俺達のレベルアップも近いはず。ちょっと呼び出してみるか。
「出て来いレベル神!」
しーん。
おいカリカーラ。またサボりかよ。俺はあのダ女神の姿を思い出す。
「だから出て来いカリカーラ! このダ女神!!」
お? 煙がモクモク……。来た来た。
そう。現れたのは豹柄の、いつも通りにバブリーな女神様だった。
「あーらセネシェちゃん、お久しぶり~! お姉さん心配してたわぁ」
「うるせぇよ」
とりあえず俺はその間抜けな挨拶に突っ込んでおく。ああ、それでも俺の視線は勝手に際どい胸元に。くそう、やはり何度見ても見えそうで見えない! ……俺、疲れているのかな?
「アリサちゃんもいつも可愛いわね~。あら、仲間が増えたのね? ユーノちゃん? 可愛らしいお嬢さんだこと! セネシェちゃん、良い趣味してるじゃな~い」
「だから、う・る・せ・ぇ・よ!」
そんな話を聞かされる、俺の方が恥ずかしい。余計な事は言わなくて良いんだよ。カリカーラ、お前は早く用件をだな……。
「セネシェちゃんとアリサちゃんは後21ポイントの経験が必要よ? あ、それとユーノちゃん? 彼方はレベルアップおめでとー! コレで彼方は4レベルね」
いつでもどこでも話しを聞かないこのダ女神め。いつかギャフンと言わせてやる。
はぁ、魔王を求める俺の旅は始まったばかり。このままとりあえず王都を目指そうか。
登場人物紹介
セネシェ Hum-N-Sam 肉体年齢15歳 男性 ソードマスターLv.3
アリサ Hum-G-Pri 肉体年齢15歳 女性 ハイプリーステスLv.3
ユーノ Dwa-G-Fig 年齢不詳 女性 ウォーリアLv.4
カリカーラ Goddess 年齢不詳 女性 レベル神




