北条高時腹切りやぐら
これは、今から18年前、私達が新婚旅行先で、神奈川県鎌倉市に行ってきた時の、恐怖体験です。
その頃、私は大河ドラマの「太平記」に夢中になり、鎌倉市に歴史探訪がてら行くことになりました。太平記ゆかりの地だけあって、探訪する箇所は多くあり、私達は数日宿泊する心づもりで来ていました。
その歴史探訪の中に、今にして思えば二度と思い出したくもない、名前すら聞くのも嫌な、北条高時腹切りやぐらがあったのです。
鎌倉駅からすぐ近くには、北条氏屋敷跡だった一部分が、宝戒寺として建っています。
そこから10分ほども歩いて行くと、小さな橋があり、そこを渡ると、かつて北条氏一族の菩提寺があったと言われている、東勝寺跡がありました。
辺りは既に松林となっており、左右の松林の中央に道が一本、山裾まで続いていました。
東勝寺に火を放ち、870有余名が自害して果てた、鎌倉幕府滅亡の地である東勝寺跡。
この一本道を進んで行くと、十数段ほどの階段に突き当たります。
その階段を上りきった左手に、例の、北条高時腹切りやぐらがあったのです。
やぐらとは、山裾の岩盤を掘って穴蔵にした、言わば、中国式の墓所です。
知る人ぞ知る場所だけあって、昼なお暗く、辺りは鬱蒼とした樹木が生い茂り、小動物…、いえ、鳥一羽、虫一匹の気配すら感じる事はできませんでした。
さらには、やぐら入口付近に密集して垂れ下がっている藤の花が、自害して果てた武将たちの無数の手に見えるような気がして、嫌がうえにも、不気味なほどの静寂をより一層、不気味にしていたのです。
ぽっかりと開いた、高さ1メートルほどの薄暗い穴の中には、「北条高時以下870有余名」と記載された、大きな木製の墓標が建っていました。
そして、それを囲む様に、五段に積んだ小石が、幾つも点在していたのを覚えています。
そこは、周りが静寂に包まれていたからだとか、全く人気がないから、とかいう次元の話ではありませんでした。
おどろおどろしい、とでも言うのでしょうか?
目に見えずとも、何かしら鬼気迫るものがあるのを、感じずにはいられなかったのです。
ほんの数分間いただけにも関わらず、あまりの不気味さと、魂を押し潰されるほどの圧迫感に、気分が悪くなりそうでした。
耐えられなくなった私は、
「…ちょっと、気味悪くない?もう帰ろうよ。」
と、言ったものの、全く霊感のない主人は驚いて、
「えっ?帰るの?せっかく来たんだから、もう少し見ていこうよ。」
などと、信じられない事を言い出しました。
私は、主人の言葉を振り切って、
「とにかく、帰ろう!」
と、急き立てました。この場所の異様な雰囲気が、耐えられなかったのです。
私が踵を返して、帰ろうとした時です。 突然、すぐ近くから砂利を踏みしめる足音とともに、歩く度に当たる帯刀した甲冑独特の音が、聞こえてきました。
しかもそれは、こちらに向かって、次第に近づいて来るではありませんか。その気配は、明らかに、生身の人間のそれとは雰囲気が異なっていました。
“…まずい!早く、ここから逃げなければ…。”
私が数歩進みかけた時、フッ…と、右後方に何者かの立つ気配がしました。
主人かと思い、名を呼ぼうとして見回しましたが、誰もいません。それどころか、主人の姿すら、まるでかき消すようにいなくなってしまったのです。
“…えっ?…嘘、何で…?”
恐怖のあまり、脚に根が生えたようになっている自分に鞭打って、体を動かそうとした私の耳が、左側の草藪からガサガサッ…という、何かの蠢く音を捉えました。
私は、思わず目を疑いました。
その草藪から、5~6人、いえ、もっといたでしょうか?何人もの傷ついた兵士が、何とも表現し難い苦悶の表情で、恨めしげに、こちらの様子をジッ…と見つめていたのです。
と、今度は、私の左側後方から、人の気配を感じました。が、誰もいません。そう思った次の瞬間、反対側の右後方にヌッ…と、何者かの放つ異様な妖気が漂いました。
そこには、大柄な厳つい姿の…
“…武将…?”
とでも表現した方が妥当と思われる男性が、やはり、何とも表現できぬ苦悶の表情を浮かべたまま、怖じ気立つほどの冷たい視線を、私に投げかけていたのです。
その表情は、生者に対する、激しいまでの憎悪 と嫉妬ではないかと、私には感じられました。
例の兵士たちがわらわらと、爬虫類のように、草藪から這い出てきます。霊に囲まれたと感じた私は、思わずゾッとなりました。
“…ひぃっ…!”
声にならない叫び声をあげたかも知れないし、あげなかったかもしれません。
“このままでは、間違いなく魂を抜き取られる…゜或いは、…霊に取り付かれる…!”
とっさに判断した私は、主人もそこそこに、その場から逃げ出しました。あんなにも、身の危険を感じた恐怖は、未だかつてありませんでした。
その時、私の名を呼びながら追いかけてくる主人の声が、聞こえてきました。やはり、主人は、私の近くにいたのです。
身の毛もよだつ恐ろしさに、振り向いて後ろを確認する余裕など、私には、全くありませんでした。
今にも、彼らの息が、耳元にかかるのではないか?今にも、首筋を、鷲掴みにされるのではないか?
そんな考えが、脳裏を霞めました。
階段を、急いで降りる私の頭上…と言うより背後に、もはや、魑魅魍魎、妖怪変化、悪霊、怨霊と化した武将たちの霊魂が迫って、全身に纏わりつきながら、追いかけてくるのがわかりました。
確認したわけでもないのに、なぜか、巨大化した白い塊のような物が、組んず解れつ迫ってくる姿を、容易に想像できたのが。不思議でした。
私達は、這々の体で、何とか命からがら、ホテルまで逃げ帰る事ができました。
“…た・助かった…。”
主人は何も感じなかったようですが、私だけは、ホッと胸を撫で下ろしました。
帰ってからも、あの時の恐怖体験が、脳裏から離れませんでした。
しかし、本当の恐怖はこれからだったのです。
疲れ果てた私達は、ベッドに横たわるや否や、昼間の恐怖も忘れて、すぐに眠りにつきました。
一体、どのくらい経った頃でしょうか?
何かが、体の上に乗ってきたような感覚があったかと思うと、突然、金縛りにかかり、私の体は動けなくなってしまいました。
両腕・両脚はもちろん、指一本動かす事ができないばかりか、助けを呼ぼうにも声もでません。
…と、体が空中に浮いたかと思った次の瞬間、今度は、まるで、何者かに引きずられるかのように、私の体は、ドアの方へ引き寄せられ始めました。
見えない何かによって、ズルズルと引きずられてゆく恐怖。
引きずられまいと、必死になってベッドにしがみつきますが、シーツが皺になるばかりで、体を留める役には立ちません。
その時、私は見てしまったのです。
腹切りやぐらで出くわしてしまったあの武将が、私の両脚を鷲掴みにして、引き摺っていこうとしているのを…。
それはまるで、私の体内から魂だけを抜き取り、阿鼻叫喚渦巻く暗黒のあの世に、連れ込もうとしているかのようでした。
“なぜ、お前らは生きている…?
我らと共に、我らの苦しみを、…悲しみを、…恨みや怨念全てを…味わうがいい…。”
よく見ると、私の周りには、例の兵士や武将たちが、ベッドをぐるりと取り囲んでいました。脚を鷲掴みにしている武将だけでなく、彼ら全員の目がそう語っていました。
私は必死になって、抵抗しました。
しかし、力尽きたのか気を失ったのか、…目が覚めると、いつの間に朝になっていました。
あにはからんや、私の上半身はベッド上にあったものの、昨夜の体験を物語るように、シーツは皴だらけになって、ベッドの半分までずり落ちていました。
さらに、下半身はと言えば、…
辛うじて、ベッドから落ちる寸前ぎりぎりで、とどまっていました。
“ああ、…やはり夢ではなかったのか…。あの武将たちは、私の魂をあの世へ連れ込もうと…。”
そこまで考えて、私は思わず、全身が総毛立ちました。
霊体験豊富な私でしたが、これほどの怖い思いをした事は、未だかつてありませんでした。
こうして、私達は、何とか無事に帰宅する事ができました。
旅行から帰宅後、しばらくの間は、何事もなく過ぎていきました。
恐怖体験を忘れかけていた、そんなある日。再びあの悪夢が、私を襲ってきたのです。
当時、某大学図書館に勤務していた私は、いつものように、仕事に追われていました。
というのも、他大学からの寄贈図書五千冊の整理のため、猫の手も借りたいぐらい忙しかったからです。
以前勤務していたA先輩は、結婚退職してしまい、夏休みに入りかけた事もあって、手伝いに来ていた私と仲のいい学生2人も、当日は、来ていませんでした。
校内に響く足音で、教職員の誰が来館するのか判別できるほど、校舎内は静寂に包まれていました。
寄贈図書を、新刊案内として並べていた時です。
どこからともなく、一陣の風が、館内に吹き込んできました。
“…風?ドアは、開いてないはずなのに…。”
一瞬、私は嫌な予感がしました。
館内の窓という窓は、全て開いていたのですが、地下1階の図書館に出入りするドアだけは、いつも閉めてありました。
問題はその風が、閉めてあるはずのドアを突き抜けて、まるで、無理やり入ってきたような気がしたからです。
“風じゃない…。何か違う…。”
そんな事を考えていると、ドアノブが何者かによって、カチッと金属独特の音をたてるのが、聞こえました。
ドアを開く、重苦しい異様な音が、館内に響きました。
“誰か来た…。”
当然私は、そう思いました。が、誰も入ってきた様子はありません。というより、誰もいないのです。
だいいち、もっとおかしいのは、館内に通じるドアを開ける時、あのような音など出るはずがありませんでした。
“まるで、…自分の存在を相手に知らせるような…。“
私は、思わずゾクッとしました。脳裏をよぎったのは、あの武将たちでした。
“…まさか、ね…。”
かまわずに仕事を続けていた私の耳が、異様な物音を捉えたのは、その時でした。
足音と共に響く、帯刀した甲冑独特の音…。
“…えっ!?…嘘…何で…?”
全身に、悪寒が走りました。これが、あの武将でなくて何でしょう。
信じたくもない事でした。できうれば夢であってほしいと、どんなに、心底から願ったことか…。
足音は、入口からではなく、通路の途中から聞こえたような気がしました。
つまり相手は、足音すら立てずに、私が今いる場所から5~6メートル後ろにある、入口から相当離れた場所に、突如として現れた事になるのです。
“…どうして、…今頃になって何でまた…?”
書籍を本棚に並べていた私の手が、止まりました。
足音が、ゆっくりと近づいてくるのがわかりました。それは、紛れもなくあの武将でした。
“あと、…5メートル…。”
気がつけば、頭脳が勝手にカウントダウンを始めていました。
“…4メートル…3メートル…。”
間近に迫る甲冑の音に、心臓は、爆発寸前でした。“…2メートル。だめだ…、逃げられない。…”
足音は、すでに真後ろに迫っていました。甲冑の音が、嫌でも耳に入ってきます。
ぴたりと、足音が止まりました。いなくなったのでは、ありません。私の背後に、そいつはいるのです。
“…き…来た…!”
恐怖のあまり逃げ出す事もできない、私の耳元で、
“見ぃ~…つけた…。”
獲物を嗅ぎ付けた武将の、
“…ふ…ふふ…。”
狂喜にも似たおぞましい含み笑いが、響いてきました。
体中から、冷や汗が流れ出ました。手のひらが、汗で濡れています。激しい動悸が、胸を圧迫しました。頭がガンガン鳴り、喉が、カラカラに乾ききっていました。
“嘘だ…。これが、あいつであるはずが…。”
私は、必死で現在の出来事を否定しようとしました。
“…案外、…何でもなかったりするのではないか?
…そうだ。…これはきっと、私自身の…。
でも、もし、あいつがいたりしたら…“
心の中で、幾度となく激しい葛藤が繰り返されました。私は、振り向きたい衝動に、駆られました。
“何もいない…。何も…。”
硬直していた私は、覚悟を決め、ゆっくりと目だけ、書架のガラス越しに左後ろを睨み付けました。
そこには、異様な妖気を放つ相手の気配を、はっきりと感じとる事ができました。
“…逃しは、せぬ。…”
脅迫めいたその囁き声を、私は、聞き逃しませんでした。
今にも、彼らの息が、耳元にかかるのではないか?今にも、首筋を、鷲掴みにされるのではないか?
あの時と同じ恐怖が、嫌でも脳裏をよぎりました。
恐怖に耐えられなくなった私は、ついに、後ろを振り向きました。
その時、私の目に飛び込んできたもの。
それは、……。
見覚えのある洞穴の入口付近に、密集して垂れ下がっている藤の花。
薄暗がりの中に見える、「北条高時以下870有余名」と書かれた木製の墓標。
幾つも点在している、五段に積んだ小石。
鬱蒼とした樹木が生い茂る、昼なお暗い場所…。
そこは、870有余名が自害して果てた、鎌倉幕府滅亡の地。阿鼻叫喚渦巻く、北条高時腹切りやぐらの前だったのです。
つまり私達は、その場から逃げ帰る事ができたわけではなく、やぐら入口の前に立ったまま、世にもおぞましい幻覚を、見せつけられていたのでした。
私達が、逃げ出したのは、言うまでもないのですが…。
実は、これには後日談 があります。
「…で?」
あゆみが、興味津々に身をのり出してきた。
皆、一様に押し黙っていた。研修旅行での研修終了後、毎年必ず行われる納涼会、いわば百物語である。
一区切りついたところで、彼女が言葉をはさんできたのだ。
ある日、足をどうかしたのか?と尋ねてきたKさんに、私はキョトンとなった。
…私は、体験談を続けた。
何の事か解らずにいると、足首近くに、大きな痣ができていると言う。
確かに、足首周辺が斑ている。どこかにぶつけたわけでもないのに、できた痣…。しかもそれは、両脚の全く同じ箇所に拳ほどの大きさで、対称的に浮き出ていた。
“やだ、何これ…。”
私は、思った。知らないうちに、ぶつけたのだろうか?
が、どう考えても記憶がない。不審に思える痣を、なるべく気にしないようにしながら、帰宅の途につくため私達は、図書館をあとにした。
階段を昇れば、2階は学生課、さらに出入口へと続いている。
玄関近くの鏡の前まで来た時、私の足首近くを見ていた彼女が、急に、さっきの痣を、もう一度見せてもらえないかと、言い出した。
痣は、足首前方上部に横向きに1ヶ所。足首の外側面には、5センチメートルほどの大きさで広がっていた。
さらに後方はと言えば、今度は痣がまるで縞模様のように、4本の線が真横に走っていた。
その、判を押したような対称的な痣は、私に、言い様のない嫌悪感を抱かせた。
“うわ、気持ち悪…っ”
記憶に、これと結び付くような出来事は、何も浮かばなかった。
彼女が何かに気づいた のは、その時だったように思う。
“これ…手の…。
言わんとした内容にギョッとし、彼女は口を噤んだ。
たしかにそれは、足首をむんずと掴んだ人間の手の痕だった。
「皮肉ですね。あなた方が、私に相談を持ちかけてくるとは…。」
不安に感じた私は、霊能者である一ノ瀬先生に、事の次第を打ち明けた。
先生が、開口一番に口にしたのが、この言葉だった。
考えてみれば、どうやってこの先生に辿り着いたのだろう。その案内を見つけたのも、なぜ、この先生に決めたのかも、よく覚えていなかった。
ただ、
“…ああ、この人だ。この人なら…、私の事をよく解ってくれる。“
なぜか、そう確信できたのも事実だった。
…私は、鎌倉に来るべきでは、なかったようだ。なぜなら、私は前世で、一度死んだ身だからだ。
簡単に説明すると、こういう内容になる。
今から数百年前、私は鎌倉時代に、生きていたらしい。何者かの讒言により、私は、よからぬ疑いをかけられた。
その嫌疑を晴らすこともできぬまま、私は鎌倉で処刑された。
「あなたは、幼い頃、なぜ私は、この世に生まれて来たのだろう?なぜ、この時代に生まれて来たのだろうか?
と、その問いかけを心の中で、何度も繰り返してきたはずです。」
幼少の頃から、自然と、早く答えが知りたいと模索し、
「普通の人とは、何かしら違うのではないか?」
と、魂領域で考えてしまうこともあったように、見受けられたと言う。
「あなたは処刑され、やがて鎌倉幕府も、滅亡した。」
いくつもの時代を経て私は、別の人物に生まれ変わり、今の主人を伴侶とした。
ところが、よりによって新婚旅行先に、鎌倉の地を選んだ。
あってはならない事件が、起きた。
「殺したはずのあなたが生きていたからです。」
処刑されたはずの人間が、まだ生きている。それは、由々しき事態だった。
「でも、私は別人として…。それに、あの人達も、もう…」
先生は、首を横に振った。
「魂に、男女の区別はありませんよ。単に、その役割を、演じているだけのこと。
しかし、彼らに、それは通用しなかった。」
私が鎌倉に来ようとしたのには、ある理由があった。
「自分を死に追いやった敵の息の根を、止めてやりたかったから…。」
先生は、私しか知り得ない心の闇を暴いた。
お互い死ぬ間際まで、相手を恨み続けたからだろうか。
この地に来たことにより、お互いがお互いを刺激しあったようだ。
自害した彼らには、時間の概念がない。だから、あのような現象が起きた…。
…が、先生は、私と先生との因縁を何も語らなかった。
「それは、知らぬが仏…ですよ。」
にこやかな笑みを浮かべて、先生が答える。もしかしたら、先生はその昔、私を処刑にした、死刑執行人だったのかも知れない。
…嫌な想像が、脳裏に浮かんだ。
“…逃しは、せぬ…。”
例の武将の言葉が嫌でも脳裏に甦り、私は、全身が総毛立った。
阿鼻叫喚渦巻く暗黒のあの世へ、魂を引きずり込もうとした彼ら…。
この世への未練を絶ち切れず、誰かに知ってもらいたい心残りがあったとすれば、それは、どんなものだったのだろう?
戦乱の世とは言え、彼らは、自害などしたくなかったに違いない。
権力や地位、名誉、家柄、誇り…。
現代人の私達には理解できないけれど、そんなつまらないものに振り回されて、その時代の、いわば犠牲者になってしまった彼らの無念さは、いかばかりだった事か…。
訪れた「北条高時腹切りやぐら」は、鎌倉市では有名な曰く付きの場所だとかで、 地元の人なら、決して寄りつかないと耳にした。
お寺に納骨されたのは、鎌倉幕府滅亡後600年以上も、経ってからだと言われる。
つまり、昭和30年から40年頃まで、彼らの遺体は風雨に晒されっぱなしだったそうだ。
例え供養されたとしても、武将たちの魂が救われる事は、なかったのかも知れない。…
さて、私の恐怖体験はいかがだっただろうか?
こうして、何気なく日常生活を過ごしながら、今も、ふと考えてしまう時がある。
“もし、今、振り向いたら…。
私はまだ、あの北条高時腹切りやぐらの前に立っていて、…
永遠に続く悪夢を、見せつけられているかも知れない…。”
と……。
そして、今なお彼らは、この地に迷い込んでくるであろう誰かに取り憑き、
その魂を抜き取って地獄に引きずり込もうと、手ぐすね引いて待ち構えているのではないか?
そう思えてならないのである。
もしかしたら、次に体験するのは、
これを読んでいる、あなたかも知れない…。