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無口な少女

「……与吉、俺は一体どうしたら……」

 そんな思考が駆け巡る。


 喪服の女は、辺りが不気味なほど静まり返った薄暗い夜に帰っていった。

最後にこう言い残して……


「弥勒、どうか願いが叶うのなら……もう一度だけ、与吉に会わしてください。どうかせめて最後の別れだけでも……」

 力なく女は、そう言った。確かに、か細い声でそう言ったんだ。


 そりゃあ、俺だって、その願い叶えてやりてぇよ……

与吉もきっと嫁に会いたがってる。こんな若い二人の今生の別れが、事故だなんて、お天道様も残酷なことをしなさる。

俺には与吉に生み出してもらった恩もある。

 この女のことも哀れで可哀想だと、心から思う。

同情もする。それに俺は、与吉が名付けてくれた弥勒菩薩のようにいつだって村のわっぱや旅人を、ずっとこの場所から見守ってきたんだ。


 そんな俺が何もできないだなんて……とんだお笑い草だ……

せめて与吉に会わせてやれりゃあ……


 色んな感情が渦巻く中で、微かに声が聞こえたようなした……


「……おじちゃん……おじちゃん……」

 細長い目を見渡すと、シトシトと小雨が降っていた。

 そして、そこには、赤い着物を着た黒髪の少女が目と鼻の先に、心配そうにのぞき込んでいた。


「……おじちゃん……心が泣いてるよ……」

 無口な少女が囁いた……

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