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無鉄砲な鉄砲玉は出落ち要員

 

 「そうか……元凶は元・生徒会長か……受験を控え大人しくしてると思っていたが……」

 「スズキだっけ? べーな、俺っち激おこプンプン丸って感じだぜぇ?」

 

 「自分で確かめたワケじゃないので、確定じゃないですけどね」

 

 2年前。一人の女生徒が自殺を計った。

 

 アンドウたち不良グループに乱暴され、それを苦にした結果の“事故”らしい。

 

 直接関係はないはずなのだが、当時の生徒会長だったスズキは、監督責任を取らされる形で辞任を迫られ、生徒会長を辞めさせられたそうだ。

 

 とうぜん内申書も悪くなり、予定されていた推薦も取り消された。

 

 そこで色々と逆恨みをした末の犯行が……この部活動対抗戦だって話だ……。

 

 本来なら学校側が責任を取るべきだと思うのだが……詰め腹を切ったのは何故かスズキだった。

 

 結果、地元の名士を親に持ち、成績も良く。将来の栄光も約束されていたのに……全てパーになった。

 

 世を儚み、学校を逆恨みする気持ちも、わからないでもない……が、やり方が過激すぎる!

 

 そりゃさ、本来裁かれるはずのアンドウが、3ヶ月の停学程度で済んでるのも、学年主任が飛ばされただけってのも、他人ごとながら納得がいかないが……。

 

 それでも人殺し! しかも自分の手を汚さず……むしろ、親しい物同士でも笑って殺しあうように“認識”を狂わせる争わせるのは酷すぎる!!

 

 スポーツ感覚で、人を……知人同士で殺し合わせるなんて……発想自体が狂ってるとしか思えない!?

 

 「ならば確かめれば良い。

  放送室を抑えれば、色々と証拠や証人を確保できる」

 

 「……それに、馬鹿騒ぎも終わるっしょ? 一石二丁拳銃ってやつじゃね? ひゃっほーい!」

 

 「……はい、そうですね」

 

 色々と不安のある面子だが、三人寄れば文殊の知恵って言うし、シノハラ先輩のリーダーシップが強いので、船頭多くして~っと山に登る事もないだろう。

 

 それに放送室は“敵”の重要拠点だ……。

 

 見張りだけでなく、ガードマンっぽいのが詰めてるはず。こっちの戦力も多いに越したことはない。

 

 ヤマダ先輩は、拾った金属バット。

 シノハラ先輩は、素手。ただし、合気道二段の段持ち。

 

 そしてオレは、用務員さんから渡された武器……スタンガンだ。

 

 シノハラ先輩を助けるときに使ったが……体格の良い風紀委員が、バチィと、一撃であっさり崩れ落ちたのには驚いた。


 ヤマダ先輩はアレなんで論外だが、シノハラ先輩も微妙だ。

 段持ちとは聞いているが……足を少し引きずっているのが気になる。当てにしないほうが良さげだ……。

 

 つまり主力はオレって事になる。


 嫌だがしょうがない……先輩とは言え女性。さらに怪我人を前線には出せない。

 金属バットなら手加減可能だが……それは使い慣れた人の話であって、ヤマダ先輩じゃ無理だ。

 

 だったら、一撃必殺……もとい、一撃必倒のオレが前に出るしか無い。

 

 ……不安はある。風紀委員の時は、上手く不意を付けたが、オレが真正面から戦って勝てるだろうか?

 

 いやいや、勝てるかどうかじゃない! 勝つんだ! これは決定項だと言い切らないとダメだ!!

 

 さて、そこの角を曲がれば職員室だ。

 職員室前を通り過ぎたら、放送室はすぐソコだが……ヤマダ先輩の動きが止まった。

 

 「……ちょっとまった」

 「ん? どうしたヤマダ? ……腹でも下したか?」

 

 「……あはは、いえっさ!!」

 

 ビッっと親指を立ててそう告げたヤマダ先輩は良い笑顔だった。

 

 *ねば良いと思ったオレは悪く無いと思う。

 

 

 ―――

 ――

 ―



 「……で、ヤマダ君。その人は何かな?」

 「……その校章は、一年か?」

 

 「旅は道連れ! 世は情けねぇってやつだぜ? シノッち」

 

 「は、初めまして! 一年のミタライ! 帰宅部です!!」

 

 決戦前に緊張してもよおしたヤマダ先輩は、近くにあったトイレに入った。

 

 そしたら、なんか男子生徒を連れて帰ってきた。

 

 「1-Cのミタライ……違反者がまた一人見つかったわけか……」

 

 「……ひぃ!? 風紀委員!!?」


 「あー、この人は大丈夫だよ。ここにいるのは全員、違反者だから……」

 「そうそう、言ったべ? 仲間を紹介するってねぇ!」

 「ハナタダ不本意ではあるが……そういうことになる。私はシノハラ、よろしく頼む」

 

 「あ? えと……はい、こちらこそ! よろしくお願いします!!」

 

 後輩のミタライは、帰宅部と言っていたが、短髪の細マッチョ? ……で、性格も悪くなく力強そうな雰囲気がある。

 

 期待できそうだ……これは戦力アップか?

 

 「さっそくで悪いが……戦えるか?

  あ、いや殺し合えって言うんじゃない、ただ、放送室に行くのに人手がいるって話なんだ」

  

 「無理無理無理っす! 喧嘩なんてしたことないですよ!?」

 

 「あーミズっち。こいつトイレの用具入れでガタガタ震えてたんだわ……」

 

 先輩いわく。トイレで用を足した後……なにか妙な振動を感じて調べてみたら……人間マナーモード状態で隠れてたミタライを発見したそうだ……。

 

 どうやら力強い=荒事OKでは無いらしい。

 

 「……人には向き不向きがある。それでも状況が状況なので、なんとか頑張ってくれないか?」

 

 「……え? ああ……わ、分かりました! ボ、僕に任せて下さい!!」

 

 「そうか! 期待しているぞ……ミタライ!」

 

 オレが怯えを隠しもしない後輩に落胆していると……。

 シノハラ先輩が、震えるミタライの手を取り。身長の関係上、必然的に見上げるようにしながら彼を励まし始めた。

 

 「……シノッちの犠牲者がまた一人」

 「……はい、そうですね」

 

 そりゃ美人の眼鏡っ娘である先輩に、真正面からお願いされりゃノーとは言えないよな……。

 

 だけどまあ、やる気が出たのは良いことだ。

 

 土壇場で逃げ出すかもしれないから、当てには出来ないが……いないよりマシだと思う。

 

 それじゃまずは様子見……っと、借りたままの手鏡を角から差し出し、職員室前の様子を伺った。

 

 職員室前の前は無人。

 その先の放送室前には人影がある。

 

 だが、なぜか蛍光灯が割れていて、暗がりができているため良く見えない。

 

 ON_AIRの表示が灯っているが……逆光のためか顔も影になり誰だかわからない。

 

 人数は、一人しかいない?

 

 少し意外だ……ここは最重要地点じゃないのか?

 

 最低でも4~5人はいると思っていたんだが……?!

 

 「うぉおおおおおおッ!!! ぼ、僕だって! ヤるときゃやれるんだっ!!」

 

 「ちょ、おまっ!? 一年坊主ぅ!?」

 「……むぅ、発破をかけすぎたか?」

 

 「ああもう! どいつもこいつも!!」

 

 よく見えないながらも、なんとか状況を確認しようとしていたら……ミタライが暴走しやがった!?

 

 恐怖み怯えた者の行動は単純になる。

 

 逃げるか、動けず蹲るか……逆ギレするか、だ。

 

 駄々っ子パンチ的に両手を振り回す、ミタライの手には、何処から取り出したのか、鉄アレイが握られている。

 

 ……あ、こりゃ死んだわ。

 

 見も知らぬ見張りに合掌……じゃねえ!? あのバカ! 止めないとッ!?

 

 慌ててオレも飛び出し! スタンガンを……ミタライの背中に……なっ!? 嘘だろッ!?

 

 襲いかかるミタライを視認した見張り……黒尽くめのスーツを着た男は、懐から黒光りするナニかを取り出す。

 

 それはスッと襲撃者の目の前に掲げられ……ターン! っと、乾いた音を鳴らし、暗がりに火花を散らせたのだった……。

 

 

 先走って暴走する少年ってのも、ホラーでは定番ですよね?


 某ゾンビ無双ゲーではBBAでしたがw

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