彼女との出会いは殺人現場でした……。
残酷な描写&R15タグは保険。
よくあるバトロワモドキなのは仕様。
(ただし、原則的に主人公視点のみ)
バットエンドではないが、ハッピーとは言えない結末が待ってます。
恋愛要素アリですが、アクセント程度です。
殺伐としてるはずなのに、どこか可笑しいのは仕様です。
突然だが……オレは転校生の安宮隆と言う、普通の男子高校生だ。
ここ、私立高校である共学の際湖学園に来たばかりの転校生なんだが……。
現在オレは、足元で血まみれで倒れている同級生? を見下ろし、途方に暮れているところだったりする。
さーて、落ち着いて考えよう。 始まりは……
―――
――
―
この学校に一ヶ月ほど前に、オレは親の都合で転校してきた。
転入してから過ごした時間はわずかだが、それでもここでの生活に、かなり慣れてきたと思っていたんだが……どうやら気のせいだったらしい。
ピンポンパンポーン!
「只今より、部活動対抗戦を開始します。
10分以内に各自所属の部室に集合して下さい。
開戦は……17:00ちょうどです。
開戦前の戦闘行為は違反となりますのでご注意下さい」
「……は?」
始まりは、そう……放課後のホームルーム終了直後にあった校内放送だ。
内容の意味不明さに困惑するオレを余所に、周りのクラスメートは帰宅準備を放り出して、慌ただしく教室を出て行った。
行き先は恐らく、それぞれ所属の部活だろう。
オレは転校間もないのと、部活動にあまり興味を持てなかったので無所属だ。
そんなオレと同じく部活動をヤッてない生徒が数人、まだ教室残っていたので、彼らから話を聞くと……。
無所属は“帰宅部”とみなされる。ただし、部活未満の同好会でも所属していれば、そちらが優先される。
対抗戦に勝てば、部費増額、大学推薦、正式な部に昇格などなど……色々と特典が貰えるそうだ。
大学推薦には少し心惹かれたが、今日はバイトがあるので参加せずに帰る事にしたのだが……そうは上手くいかないらしい。
校門は閉じられ。その前で待ち構えた風紀委員に止められ下校が却下されたからだ。
「バイトがあるんですが……?」
「ダメだ……戻れ!」
「学校の許可は取ってあるんだけど?」
「ダメだ……戻れ!」
「誰に下校の許可を取れば良いんですか?」
「ダメだ……戻れ!」
話をしても全く埒が明かず……雰囲気が異様だったため素直に引き下がる事にした。
だってさ……木刀や竹刀を持ってるんだぜ?
目つきもなんか虚ろで、ヤバそうな相手が6人もいるんじゃ引き下がるしかないよな?
だがしかし、バイトに遅れるわけにはいかないので、裏門から抜け出そうと校舎裏に回った。
ピンポンパンポンッ!
「部活動対抗戦を開始します
日没まで、各自……がんばってください」
ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽーん!
開幕を告げる放送を背に受け、校舎を回りこむ。
そこで見たのは、野球部と思われる集団が……サッカー部と思われる集団と乱闘している姿であった。
……言い直そう。
乱闘……と、言うより決闘。
いや、集団だから抗争と言うべきか?
ぶっちゃけた話……彼らはガチで“殺し合い”をしていた……。
―――
――
―
返り血で薄汚れ、ボコボコになった金属バットを持った生徒と目が合った瞬間。オレは一目散に逃げ出した。
その後、校内のいたるところで叫び声や、ガラスが割れる音や悲鳴が響き渡る中。適当な空き部屋に隠れようとしたオレに、一人の生徒が襲いかかってきた。
とっさに突き飛ばしたは良いが……ガッっと鈍い音がして、倒れた生徒を見てみると……後頭部から血を流しピクリとも動かない。
これは所謂アレだろうか? 打ちどころが悪かったって奴で…………殺っちゃったぜ☆ てへぺろ♪
―――じゃねーよ!?
人が死んだんだぞ? 人を殺したんだぞ? 誰が? オレだよ!?
おいおいおいおいおいー!? 刑務所行きか? いやいや少年法があるから鑑別所か? まてまてまて……それ以前に人を殺したんだぞ? いやだがしかし、これは正当防衛だろ? だっていきなり襲ってきたんだぜ? それにオレはただ突き飛ばしただけだぜ? 言い訳乙 いやいやいやだがしかしだからなんでこんな………!?
「っん……うう~!?」
生きてる!? 生きてた!!
「お、おい! 大丈夫か!?」
「……うっ……大丈夫じゃないかも……頭がいたい……って、なにこれ? 血!?」
倒れていた生徒が半身を起こした。
そう言えば、頭の怪我は傷の割に派手に出血しやすいとか聞いたことがある……思ったより軽傷……だったら良いが……。
目の前の生徒を観察してみると、どうやら同級生らしい。
―――と言うか、おもいっきり見覚えがある。
確かクラスメイトの……。
「ああ、誰かと思えば転校生のアズミヤ君じゃない」
「スズハラさん……で良かったかな? ごめん、突き飛ばしちまって……」
「え? ……ああ、そう言えば確か、あの時、あなたを倒そうと……え? えええええぇえ!?
な、なんで私そんなことを!?」
襲いかかってきた自覚はあるいらしいけど……様子が変すぎる。
……いや、様子がオカシイのは彼女だけではない。
学校全体が変だ。変わった校風だとか、オレが転校生でこの学校の常識を知らないだけ……では説明つかないくらいオカシイ!
そもそも、なんで殺し合いをヤらなきゃいけないんだ……?
「なあ、今何が起こっているのか分かるか?」
「……部活動対抗戦。
私は茶道部。あなたは帰宅部? だから戦うのはあたり…ま…え……?」
「対抗戦は良いが……ルールは無いのか?
ちょっと無法すぎないか?」
「え…っと、使える武器は、各自部活の部品のみで……知恵と勇気と努力で他チームの部員をリタイアさせれば加点され……終了時に撃破数の多いチームが勝者となる……?」
「リタイア? 殺し合いじゃないのか?
だったらなんで……皆は?」
「リタイアの条件は……生命活動を停止させること……え? それって殺…人……? な、なんでよ?!」
「なんではこっちが聞きたい……そもそも、部活動対抗戦ってなんだ?」
「三ヶ月くらい前にパンフレットが配られて……今朝の全校集会で詳しい説明があって……」
「今朝? 寝坊して……遅刻したから出れなかったが……」
「そう言えば着てなかったね……説明要る?」
「頼む。知らないとマジで命に関わりそうだ」
「うん、判った。えーとね……」
それから彼女から聞いた内容と、コレまでにわかってることを整理すると―――
部活動対抗戦の主催は生徒会。職員……先生達は不参加? 不干渉? 詳細不明。
開催期間は本日、放課後。日没……恐らく2時間後。終了のアナウンスがなるまでの撃破数を競う。
撃破=殺害。手段や方法は問わないが、使える凶器 (アイテム)は、所属する部活動の“備品”のみ。
帰宅部や同好会は、各自所有の“私物”を“備品”として扱う。
また、学校設備にある共有の備品は全員が使用可能。
生徒会所属は、対抗戦の審判&監督役。
違反者は彼らの手によって綴やかに排除される。
違反の監視は、校内各所にある防犯カメラ及び、風紀委員によるパトロール隊が行う。
また、校門や裏門などの校外への脱出路は風紀委員によって封鎖されている。
生徒は強制参加。また、何故か……全校生徒? 戦いに忌避感無く、対抗戦に進んで参加している。
―――って、ところか?
「………つまり、オレの武器はコレだけか?」
胸ポケットに刺していたボールペンを手に取りクルッと回す。
「私のは……コレ?」
そう言ってスズハラが差し出したのは……お茶の泡立てに使う、名前は知らない木製のアレだ。
「……」
「……」
オレたち二人は、お互いの目を合わせると……同時に苦笑いを浮かべた。
可愛い足手まといの登場です。