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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第二章 ならず者集団ミスティア連合と生意気な少年
16/82

文化祭とエルドォワ祭りの合同開催開始


リカルたちと分かれた後、俺たちは久しぶり・・という程間はあいてないが、居酒屋権兵衛で、ジョッキやコップをあけていた。断っておくが、俺は飲んでない。ずっとウーロン茶で我慢している。結局権兵衛の主人に材料を渡して、焼き鳥を作ってくれるよう頼んだのだ。とりあえず串に刺して焼いてくれればよいという旨を伝え、細かい味付けは主人に任せてみる事にした。


「それでは、ミス研の勝利とリカルやハンナさんの無事を祝って、もう一度、乾杯〜」


皆手に持っていたグラスをそれぞれあげ、今日何度目になるかわからない乾杯を繰り返す。


「お待たせいたしました〜」


店員が大皿を持ってやってくる。上には念願の焼き鳥が乗っていた。注文通りタレと塩の2種類がある。いやぁなつかしい。これが食べたかったんだよ。長い道のりだった・・俺は早速焼き鳥を手に取り、口の中に放り込んだ。うまいっ!飯田橋で食べてた焼き鳥よりうまいんじゃないか、これ?噛み締めるごとに中のに肉汁が口の中一杯に広がり、それでいて適度な歯ごたえがある。これなら何本でもいける気がする。酒を飲めるやつらが羨ましい。


「へぇ〜只単に串に肉をさして焼いただけに見えるのに、こりゃすごいわね。」


菜食主義者だったはずのニーナまでうまそうに頬張っている。ニーナの中でも焼き鳥には合格サインがでたらしい。


「おお、これなら麦酒がいくらあっても足りんな。おい、おかわりくれ。」


まだ、30分くらいしかたってないのに、カルロスはもう大ジョッキ6杯目に突入している。リッチマンやランシアもカルロスほどではないが、相当速いペースでコップを空にしていってる。


「確かにこれなら文化祭に出してもいけるわね。串だから持ち歩きながら、食べれるし。大人にも子供に喜ばれそうね。」


ミワ姉も感心したように、頬張っている。あっという間に皿は空になり追加オーダーを頼む。


「リカルも元気そうだったし、めでたしめでたしよね。それにしても、ランシアよく瞬時に作戦思いつくわよね。」


「今回の功績はニーナのおかげよ。いくら帳簿があったからと言って、関係取引先全員に釘を刺すなんて、私にはとうていできないもの。それもあんな短時間で。そういえば、カルロスも酒屋で活躍したそうじゃない。」


「ああ、酒瓶で殴られても表情一つ変えないんだもんな。見てるこっちの方が冷や汗出たよ。」


今回の功績について、それぞれお互いを讃え合っているうちに、追加した焼き鳥がテーブルに運ばれてきた。第二弾だが、こちらもすぐに完食となる。文化祭のときは、どのくらい売れるだろうか。あんまり多く材料を仕入れすぎて、売れ残っても赤字になる。ミス研メンバーには好評だが、当日の客にも喜んでもらえる事を願うしか無い。


俺は何度かリアに一杯ぐらいいいじゃないと酒をグラスにつがれそうになったが、まだアルコールには口をつけていない。一応、未成年なんでね。それに焼き鳥との相性が抜群みたいだし、最初に一杯飲んだら止まらなくなるような気がした。


権兵衛での打ち上げ兼焼き鳥試食会が終わると、俺はリアとミワ姉と一緒に、喫茶満腹亭に帰るためのペガサス列車にのる。リアを最寄り駅で見送った後、久しぶりにグラ爺の手伝いをした。こちらもエルドォワ祭りの準備で最後の商品調整に入っている。


基本的にはコーヒーとグラ爺が考案したオムライス、リアの提案したシュークリームで攻めるつもりだが、店にとっては、学園の文化祭と違い、生活がかかっているため、売上数の想定や在庫調整を詳細に行う。事務仕事は主にミワ姉がやってくれているが、俺も出来る限りのサポートはする。グラ爺は祭りの直前ギリギリまで商品の研究を続けるつもりらしい。


この祭りはいい成果が出れば、新規顧客の大幅獲得につながるため、相当真剣だ。俺とミワ姉はグラ爺には料理研究に専念してもらえるよう、なるべく接客応対や雑務処理は自分たちだけで対応するようにしていた。


翌日からはリアや他のミス研メンバーも手があいたときに手伝いにきてくれるようになり、あっという間に準備期間が過ぎた。一度、魔獣使いのアリシアさんの面会にも行こうとしたのだが、囚人との面会はよほどの理由が無い限り、祭りが無事終わるまでは待つようにとの王都からのお達しがあり、それまでの間、面会は待つ事にした。


そして祭り当日の朝を迎える・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺とミワ姉は喫茶満腹亭の手伝いとミス研での俺のいた世界の記事と焼き鳥の販売を掛け持ちする立場にあったが、飲食店経営の方が生活がかかっているため、優先してくれてよいというミス研メンバーからの有り難いお言葉をいただいていた。俺とミワ姉はその言葉に甘え、今はグラ爺の手伝いに専念している。リアももうすぐ手伝いにきてくれることになっており、ミス研での文化祭の方は残りのメンバーで担当してもらっている。午後には一度ミス研の方にも顔を出す予定だ。


「すいません、オムライス3つください。」



家族連れで祭り見物にきた客から注文が入る。記念すべきお客様第一号だ。この客の反応は今後の売れ行きを占ううえで極めて重要だろう。


「ありがとうございます。少々御待ちください。」


グラ爺が店の前の鉄板の上に卵をひく。祭りの場合いくつか予めストックを作っておくのが定番だが、満腹亭ではオムライスは出来立てを食べてもらいたいという趣旨から、注文を受けてからの作成となる。多少待たせる事になってしまうが、味で勝負するなら、こちらの方がよいだろうという考えのようだ。シュークリームの方はさすがに事前に準備しておいたが、こちらもなるべく新鮮な状態で提供したいという思いから、保存状態には相当気を使い、二重三重の保存のための魔法がかけられてある。


「お待たせいたしました。熱いのでお気をつけ下さい。」


俺はグラ爺の作ったオムライスを客に渡し、お代を受け取る。おつりを渡して次に並んでいる客の応対に移る。


「おお、こりゃすげぇ。表面の卵を割ると中からさらに卵がとろけだしてくる。美味しいよ、これ。」


「本当、口に入れるとじわっと旨味が広がってくるし、それでいて、味付けもさっぱり気味で後を引かない。この店、大正解ね。」


最初にオムライスを買ってくれた客から、嬉しい悲鳴が聞こえてくる。俺とミワ姉は深々と頭をさげてお礼を言った。


「ありがとうございます。喜んでもらえて嬉しいです。今後ともご贔屓に。」


その後も客足は順調に続き、午前中だけで準備していた材料の5分の3ほど使い切っていた。途中でリアも合流し、店の宣伝を手伝ってくれたおかげで、ますます客足は増えた。だが正直これだけ短時間で売れるとは思ってなかったため、俺はリアとミワ姉に店をまかせ、追加の材料を購入するべく市場に向かった。


「あら、カシワさん。どうも。お祭りは楽しんでますか?」


材料を吟味していると、横から声がかかる。ハンナさんだった。教会ではリカルたちがバザーを開いているらしい。行ってみたいけど、時間をとるのは難しそうだ。


「こんにちは。おかげさまで満喫亭での売れ行きも順調にすすんでいます。よかったら、ハンナさんも後で来てみてください。オムライスとシュークリーム、美味しいですよ。」


「あらあら、それじゃ、後で行ってみましょうかねぇ。そういえば聞きました?祭りの大型イベントとして、夕方から噴水広場の前にある公園で武術大会が開かれる事になったみたいですよ。」


「え?そうなんですか?そんな話事前にありましたっけ?」


「いえ、それが急遽決まったらしいんですの。どうも最近、隣国のリンガイア王国との関係が上手くいってないらしくて、もしかしたら戦争に突入するかもしれないとか。そんなことおきてほしくないんですけどねぇ。それで、使えそうな人財を集めるために、エルドォワの王様が突然、武術大会を決めたんですって。」


「そうだったんですか。こうして見てる限り平和なんですけどねぇ。一般市民には分からない貴族達の諸事情ってやつですかね。でも戦争は嫌ですけど、お祭りが盛り上がるのは嬉しいですね。」


「まぁ、ちょっと不謹慎ですよ。うふふ。私は誰がなんと言おうと平和が一番。でも確かに武術大会があれば、もっと多くの人々が集まりますわね。あ、もうこんな時間。そろそろ行かなくちゃ。それじゃ、失礼します。宜しかったら教会の方にもいらしてくださいな。」


「はい。是非。と、言いたいんですが、なかなか店の方が忙しくて。すみません。でも出来れば後で顔だせるように頑張ってみます。」


「あら、そうなの?でもいいことだわ。お客さんいっぱい来てくれてるってことですものね。それでは、また。」


俺はハンナさんと別れ、引き続き材料選びを続ける。しかし、思った通り、これだと思う食材はだいたい売り切れており、残っていたのはちょっと痛んでいたり、微妙に変色してしまっているようなものばかりだった。仕方なく、余り物の材料を購入する。満腹亭に戻るとすでにオムライス、シュークリームともに完売していた。予想をはるかに上回る売れ行きだったようだ。俺はリアとミワ姉、グラ爺にあまりいい材料が残ってなかった事を告げ、とりあえず購入してきた食材を見せる。グラ爺は材料を見て落胆したが、気を取り直して告げる。


「これしかなかったのか。まぁ、事前にもっと購入しておかなかったこちらが悪いんだし、仕方ないと言えば仕方ないんだが。ふむ。これで料理をお出しして、お客さんのお腹を痛めでもしたら、かえって店の評判が悪くなってしまう。しょうがないから、今日は店じまいにするか。カシワ、ミワ、ここはもういいから、ミス研の方にいっていいぞ。後はやっておくから。リアも手伝ってもらって悪かったね。今度来たとき、コーヒーサービスするよ。」


まぁ、確かに変な材料を使って、お客さんにもしものことがあったら、今日だけは売り上げが伸びても、今後の経営にひびいてしまう。下手なものをだすくらいなら、店は休みにした方が良い。俺とリア、ミワ姉はグラ爺に礼を言って、ミス研の待っている大学の文化祭の方に向かう事にする。大学に向かう道中でリアとミワ姉に、ハンナさんから聞いた武術大会のことを話した。


「へぇ、武術大会ね。戦争なんて雰囲気全然ないのにね。今もこんなに皆祭りを楽しんでるんだし。ハンナさんの言う事じゃなかったら信じられなかったわ。」


ミワ姉が相づちをうって答える。


「まったくだな。まぁ、事情はどうあれせっかく開いてくれるってんなら、カルロスあたりに話せば参加するかもな。あいつ、こういうイベント好きそうだし。」


「カシワはでないの?武術大会。」


「俺は向いてないよ。どんなルールかも知らないけど、多分参戦するより見学する方が性にあってると思う。」


「あら、情けないわね。そんなんじゃリアに愛想着かされちゃうわよ。」


だが、リアは気にしないといった様子で、ミワ姉に向きあう。


「別に私はそんなに興味ないし。カシワが出たいって言うなら、応援するけどね。」


「ありがとう、リア。ま、そんなわけだから、武術大会のことはとりあえず置いといて、今はミス研の売り上げ伸ばすことを考えようよ。」


ミス研は特集記事の販売と焼き鳥の販売の2部構成で文化祭に参加しており、ランシアとリッチマンが特集記事の販売を、ニーナとカルロスが焼き鳥をそれぞれ担当していた。特集記事は部室で販売し、焼き鳥販売は屋台をかりている。まず最初にニーナたちのやってる焼き鳥を焼いている屋台に行くと、ニーナが俺たちを見つけ大声をあげる。


「あ、みんな。こっちこっち。もうすごいわよ。焼き鳥大盛況。リッチマンもカシワのいた世界の特集記事、順調に売れてってるって言ってたし、これでミス研の予算も潤うわ。今夜は権兵衛で一番高いもの注文してもいいわよ。」


どうせだったら、もっと高級な店で祝おうよ。と言葉がでかかったが、両方とも売り上げが順調だと聞き、安心したのでやめとくことにする。


「すごい人の数だな。もう在庫これしか残ってないのか。後は俺たちがやっとくから、ニーナたちは文化祭楽しんでこいよ。」


「そんな、悪いわよ。カシワたちも満喫亭の手伝いで疲れてるんでしょ。そっちはどんなかんじなの?」


「おかげさまで、完売だよ。おかげで、後は店に戻らなくていいことになったんだ。そういうで、じゃんじゃん手伝うから、何でも言ってくれ。」


「へぇ。すごいじゃない。だったらリッチマンたちの方を手伝ってあげてくれる?こっちは

もうほとんど材料品切れ状態だから、もう少しで屋台しめちゃうと思うし。」


ニーナの申し出を受け、ミワ姉だけニーナ達の元に残して、俺とリアは、リッチマンとランシアのいる特集記事を販売している部室に向かった。


「あ、カシワとリア。早かったな。もう店の方はいいのか?」


見るとリッチマンが接客応対をし、ランシアは・・文化祭をまわって買ってきたと思われるクレープやらタコスやらに真剣に向き合っていた。向き合う方角が違うぞ、ランシア・・


「ああ、おかげさまで、満腹亭は商品完売だよ。こっちも順調に売れてるみたいじゃないか。」


「おぉ、やるな。グラ爺じいさんの腕のおかげか?焼き鳥の方もすごい売れ行きだったし、皆大成功だな。」


「よかったね。リッチマンも文化祭楽しんで来なよ。後は私たちがやっとくからさ。ランシアは・・もうすでに楽しんできたみたいね。もう、リッチマン一人に仕事押し付けて。」


リアが店番の交代を申し出て、ついでにランシアの方にチラッと目を向ける。それを聞いてランシアが心外だというように首をふる。


「あら、私は十分に仕事してるわよ?いい、こんな奥にあるような部室、わざわざ人がくるなんて思う?ここにくるお客連中はね、”私”を目当てにやってきているの。こんな美女に近づけるなんて、どこの部室だろうってね。そのためにわざわざ、文化祭の色んなところをうろついて、私を追いかけてくる男達を部室に案内してあげたんだから。」


「何言ってるのよ。単に一人だけ楽しんでたってだけでしょ?まぁいいわ。あなたもリッチマンと一緒に文化祭、もう一度まわってきなさいよ。」


リアがランシアにツッコむ。だが、ランシアの言う宣伝効果は確かにあったのだろう。元々普通なら通りかからないような場所だし、ランシアが売り上げに大きく貢献している事は間違いない。


「そ、じゃあ、後お願いね。こっちももうあと少しで完売できるだろうから、終わったら皆で合流してエルドォワ祭りの方にも行ってみましょうよ。あ、でもカシワと二人だけで見回りたい?」


おお、それもいいな。だが、リアが即座に俺の思いを遮断する。


「うん、わかった。祭りは皆と一緒の方が楽しいもんね。じゃあカシワ、とっととこれ売っちゃおうよ。頑張るぞ〜」


俺はリアに気づかれないように僅かにため息をつき、残りの販売作業に取りかかった。

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