平々凡々なう 3
「自問自答なう」
人間界大都市、KYOUZON。
「はぁ・・・」
「どーしたの?むかえ君」
「ああ・・・、サンか。らっしゃい」
この男、妖怪、迎え犬。
「また女に、贈り物か?」
「きょ、今日は違うよ!カイ君、今日が誕生日だって言うから・・・」
「カイ?お前まだあんな奴と付き合ってんのか」
「?『まだ』って、どーゆー意味?」
「アイツろくな奴じゃねぇよ!俺の彼女、別れた途端にアイツのファンクラブ入りやがったんだぞ!?」
「あ~・・・」
モテ男の影響力、大。
「そ、それはカイ君が悪いんじゃないと思うよ・・・?」
「いーや!どー考えてもアイツが悪い!アイツが悪いに決まってるんだ!」
迎え犬はレジの台を思い切り叩き、怒りを表す。
「お、落ち着いて・・・!台壊れちゃうよ・・・!」
「俺は見てたんだ!!俺の彼女が転んだ時、アイツがたまたま通りかかって、そのまま彼女の事を踏んだんだぞ!?惚れるだろ!?」
「ど、どうだろ・・・?」
妖怪と言えど、ドM。
「それだけじゃねぇ!!」
「え!?まだ何かヒドイ事を!?」
「彼女を踏んだ後、それに気付いたアイツは――」
『あ?んだ、この犬。邪魔くせーな、首輪ぐらい付けとけよ』
「――って首輪の贈り物までしたんだぞ!?確信犯だろ!?」
(カイ君・・・、何で首輪なんか持ってたんだろう・・・?)
天使と言えど、ドS。
(結局、カイ君へのプレゼント、買えてないや)
どーしよ、とサンド・ワームが考えていると、言い争う声が聞こえてくる。
「?何だろ・・・。喧嘩?」
路地裏から聞こえる喧騒を辿って、サンド・ワームが近づいた瞬間――。
「ダァッ・・・!!!」
「うわっ!?」
男性が路地裏から吹っ飛んできた。その後から出てきたカイリエルは、躊躇いなく男性を踏みつける。
「さて、弁解の言葉くらい聞いてやる。つまんねぇ弁解したら去勢、ふざけたら去勢、短かかったら去勢、ダラダラ続けたら去勢、黙ったら去勢、思いつかなかったら去勢だ。取り敢えず先に去勢しとくか?」
「カイ君、選択の余地がないよ・・・」
基本、他人の意見を受け入れない。
「サン?」
「や、やぁ・・・。こんにちは、カイ君」
「丁度いいところに来た。コイツ喰って砂にしろ」
「前もそんな事言ってたけど、無理だからね?砂中プランクトンを砂に変えるだけだから、僕」
嫌なイメージ付けないで、とサンド・ワームは引き気味に言う。
「じゃあ、丸飲みでいいや」
「しないってば」
聞く耳持たず。
「と、取り敢えず、その足退けてあげよ?周りの人、すっごい見てるし・・・」
「あ?別に大丈夫だろ」
「いや、でも・・・その人も可哀想だし・・・」
「だから、それが大丈夫だって言ってんだよ。よく見てみろ」
「え?」
カイリエルは踏まれてる男性を顎でさす。その視線にサンド・ワームもつられると、男性は息を乱して頬を紅潮させていた。
「チッ。変態だったもんだから、逆に喜ばせちまった」
(あ、この人よく見たらオークだ・・・)
オーク・・・豚の様な顔に人間よりの姿をした、醜い上に知能が低い豚野郎だぞ☆
「そ、そもそも何したの?この人」
「あ?聞いてどーすんだよ。許せってか?」
「い、いや、聞いてみないと何とも言えないけど・・・」
「・・・盗んだんだよ」
諦めたようにため息を吐いてから、カイリエルがそう言う。
「?何を?」
「俺の鞭」
「ん、ん~・・・?んん~・・・?それじゃあ、しょうがない・・・のかなぁ~・・・?」
正直、鞭はない方が良いと思った、サンド・ワームだった。
数時間後。
「ご協力、ありがとうございます!」
オークを乗せたパトカーは、サイレンを鳴らしながら去っていく。
「まさか、連続強盗犯だったなんてね・・・」
「正義は勝つって事だな」
「ん、ん~・・・?そ、そーゆー事・・・なのかな・・・?」
「お前は何も役に立たなかったけどな」
「少なくとも、オークが去勢されずに済んだよ・・・」
オークの救世主、サンド・ワーム。
「じゃ、帰るわ。あー、無駄に疲れた」
「あ、わわ待って!」
さっさと帰ろうとするカイリエルを、慌ててサンド・ワームが呼び止める。
「何だよ」
「えっと・・・あの~・・・。ゲ、ゲームセンター行かない?」
「金なら貸さねぇぞ?」
(カイ君の、僕に対するイメージって・・・)
物悲しくなる、友人サンド・ワーム。
「やった!取れた!見てよ、カイ君!」
UFOキャッチャーでサンド・ワームが、グラシャラボラスのぬいぐるみをゲットする。
「オー。スゴイ、スゴイ」
「い、いや見てよ。格ゲーしてないで」
カイリエルはサンド・ワームをほったらかして、見知らぬ男性と格ゲーで勝負している。
「っだ!クソッ!負けた!」
「はーい、五万ねぇ。毎度ー」
「堂々と賭け事しないで!」
絵面がカツアゲにしか見えない、天使カイリエル。
「で?俺に何か用事だったんじゃないのか?」
「え?」
「何もねーなら帰るぞ?」
「あ、いや!ある!あるよ!」
(カイ君は何でもお見通しなんだなぁ・・・)
「コレ・・・」
サンド・ワーム先程UFOキャッチャーでとった物を渡す。
「あ?グラシャラボラスのぬいぐるみ?」
「うん、誕生日おめでとう」
「ああ・・・。そーいうことか・・・。サンキュ」
カイリエルは、ふっと柔らかく笑う。
(メチャクチャなところも多いけど、嫌な人って訳じゃないんだよなぁ・・・)
「ところで何でグラシャラボラスが好きなの?可愛いけど・・・」
「ああ、だってコイツ人間を不可視に出来るんだろ?ムカつく奴いたら、自分の目に映さなくて済むじゃん。人間だけってのがあれだけど」
(嫌な人・・・じゃないんだよね・・・?)
自問自答なう。
おわり
前回の「平々凡々なう 2」の誤字が多すぎて、もはや羞恥プレイ。
不快な思いをしていたら、申し訳御座いません。本当、すいません。