―4.野次馬―
…キーンコーンカーンコーン…
授業終了の合図が鳴る。
「はいっ!今日の授業はこれまでっ!」
「起立、礼、着席」
号令の直後、クラスに騒がしさが戻る。そのなかで少し大きなグループが一カ
所できている。そのグループの中心となっているのは…
「淳!おめー、さっさと白状しろよ!これできたんだろ?」
そう言った男子Aが小指を立ててみせる。
「なんの話だよ。僕には彼女はいないって」
「とぼけるな!俺様の情報網をなめるなよ!おまえが綺麗なねーちゃんと図書館
で仲良く話をしてるところを見たってやつがいるんだよ!」
嘘ーっ、とか、マジでーっ?とか色々な言葉が飛び交う。男子Bはこの情報を
みんなに伝え、いかにも得意げだ。
この発言に僕、薬袋淳はかなり困った。もともと言い訳を考えるのは得意じゃ
ない。本当に『彼』は僕の彼女じゃない。証明も簡単だ。だが、証明するために
は実際に麗に会ってもらうしかない、というところが問題なのだ。麗は友達を図
書館に連れてきても許してくれるだろうか?否、許してくれないだろう。一か八
か、事実を一つ喋ることにした。
「あの人の性別は男です。これでも信じられませんか?」
一瞬静まり返り、なんだよー、とか、つまんねー、とかみんなが言い始め、散
り散りになりそうになったとき、男子Bが急に笑い出した。
「ハハハハハハ!どんだけ下手な嘘だよ!あんな美人で男子のわけねーじゃん!
」
「何だよ。まるで君が見たことあるみたいな言い方じゃないか」
「あぁ。見たよ。俺自身がな」
「さっき他の人から聞いたって…」
「言ってねーよ。俺は『仲良く話しているところを見たってやつがいる』って言っただけだよ」
「………」
思っていたとおり、この発言は簡単に信用性を失い、自分をもっと苦しい立場
に追いやってしまった。
「どうすれば信じてくれるんですか?」
「身分証明書みたいなものを俺らに見せるか、会わせてもらってじかに確認する
、のどちらかだな」
「じゃあ、彼に君と会っても大丈夫が聞いてみるよ」
「へっ。彼、か。諦めが悪いな。どうせ会わせてもらえないのがわかってる。い
い加減喋っちまえよ」
「今日はあと帰らなきゃ」
「淳、逃げるのかよ?」
「どうせ明日も学校来なきゃいけないし、逃げる意味ないでしょ?じゃね。」
淳は立ち上がる時に躓き、豪快に転んだ。腰の打った場所をこすりながら教室
をあとにした。
「あいつやっぱドジだな〜」




