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―3.戦地―

 今、俺はある戦場に来ている。つい先日、とうとうイラクが、全世界に宣戦布告をした。つまり、ある戦場とはイラクのことだ。

 何故俺、彦斎がここにいるかというと、日本政府から要請がきた。武力がない今の日本に、戦闘に加われ、との命令が世界政府から出されたのが理由だ。

 世界政府が日本にこんな無理な命令をしたかというと、俺達『殺し屋』の存在を知っていたからだ。そして、俺達の実力も把握したうえで求めている。


 俺達の存在は全世界、トップレベルの人しか知らない。


 つまり俺達は全世界の多大な機密事項の一つなのである。そしてこのことは、世界政府容認の殺し屋ということも指している。恐ろしい世の中になったもんだ、とつくづく思う。

 当然、日本に出された命令など、国民は知るよしもない。

 俺達の内部は日本政府でさえ把握出来てない。全てを孜が糸を引いているためだ。

 先程も言ったが、実力だけはちゃんと響き渡っている。俺達は四人揃えば国家戦闘クラス位置する。自分で言うのも変な感じがするが、人型核兵器みたいなものだ。

 もう二週間前にもなるが今回の任務は重大なため、何年かぶりに柊家に四人全員集合した。



     ∽



「久しぶりですね。みなさん全員が集まるのは」

 孜はこう言って四人の顔を見渡す。

「田中新兵衛、その体は何年ぶりですか?」

「三年ぶりだなぁ。錆び付いてなくてよかったぜ」

「それはなによりです。さて、みなさん。今回の任務を説明します。まず、彦斎」

「おう」

「貴方は中央病院の破壊および、そこにいる全ての医者の抹殺です」

「OK」

「新兵衛、半次郎、以蔵はA、D、E地点の防衛線の突発が任務です。これが軍部から送られてきた詳細な地図になります。それでは健闘を祈ります」



      ∽



 彦斎は不満を抱いていた。ほかの四人は存分に暴れられるというのに、何故俺だけこんな任務なのかと。

「畜生!あいつらがうらやましいぜ」

 つい愚痴が零れる。

 身軽さや見た目、いろんなことを総合し彦斎が適任とのことで、故意にいじわるをしようとして選ばれた訳ではない、ということはわかっているのだが…。

「医者全員いたぶってから殺してやる」

 しかし、敵陣のど真ん中に病院はあり、いたぶっている時間がないことは重々承知である。だから頭でできるかぎりリアルに想像した。医者一人一人が逃げ惑い、死の恐怖に怯え、顔をひきつりながら俺に殺される様子を…。

 その後、病院へ入る準備の確認をした。

 服装は邪魔にならない程度にボロボロで、かなり汚れている。汚れているのは服だけに留まらず、顔や手まで泥がついたようになっている。

 彦斎はそんな自分を鏡で見て、最後に青酸カリと爆弾を持っているか再確認。

「よし。準備完了」

 深夜、イラク兵は隊のいる場所を悟られないようになるべく明かりを消す。そのため外は漆黒の闇と化す。その時間帯を狙い、病院に潜入。通気孔を通り、いたるところに爆弾を設置する。

 爆破ポイントに爆弾を設置し終え、次に食糧庫に移動。そこにある食糧全てに青酸カリをふりかける。

「ふう。下準備完了。もし見つかった時のために難民に変装していたが、見つからないですんだな」

 そんなことを呟き、病院から脱出。

 病院は、軍が食事やら行動やら全てにおいて厳しく管理している。朝食は医者、看護士、患者一緒に食べ始めるため、ほぼばれずにみんな青酸カリが入っている食べ物を口にする。その後の騒ぎを合図に爆破すればほぼ確実に全員死ぬ。それでも生きていた医者がいた場合は遠くからスナイパーライフルで撃ち殺す寸法。これで任務はほぼ完了する。

「あいつら、今頃楽しんでいるんだろうな…」

 一息つきながら彦斎はこう呟いた。




―イラク軍本部・会議室―



……ガチャ……


 会議室のドアが開き、威厳がありそうな男が胸に勲章らしきものをじゃらじゃらつけて入ってきた。

『起立っ!敬礼!直れ!』

『うむ。座ってよろしい。それでは、これから作戦会議を始める』

 どうやらイラク軍の最高司令官らしかった。1番綺麗なソファーに座り、机に乗り出した。その直後、乱暴にドアを開け、息を切らしたイラク兵が入って来た。

『しっ、失礼します!緊急事態です!』

『騒がしいぞ。ノックくらいしろ』

『もっ、申し訳ありません』

『それで、用件はなんだ。緊急事態とか言っていたな』

『はっ!ご報告いたします!我が軍の最重要防衛線の三ヶ所が計三人の敵と寝返り兵多数に襲撃され、うち、二カ所壊滅いたしました!もう一カ所も時間の問題かと…』

『何だと!?あそこがそんなに簡単に崩れるわけがなかろう!しかもたった三人に…冗談も大概にしろ!』

『いいえ、これは紛れも無い事実です!現に、各部隊の多数の負傷者が中央病院に向かっています』

『そ…そんな馬鹿なことが…』



……ドドーーン……



 地響きと共に会議室に爆発音が響き渡る。

『今度は何だ…!』

『緊急!緊急!中央病院が何者かによって爆破されました!生存者は無しの模様!』

『畜生!一体どうなっていやがるんだ!』




―D地点―




「よお、以蔵。手伝いに来たぞ」

「…半次郎……」

「ちぇっ、相変わらず無愛想なやつだねぇ。ところで、おまえは任務を終わらせるのに時間がかかりすぎでないか?」

「任務終了時間まではまだ3時間残っている」

「焦っても悪い結果が出るだけだ、ってか?いちいち堅いやつだな」

 かなりの数の銃弾が飛び交う中、平然とこのような会話をする。

「まぁ、勝手に手伝いさせてもらうよ〜。そのせいで人を殺す量が減ったとかで恨むなよ〜」

 そう言うと、半次郎は地に異常に大きな右手を当て叫んだ。

「燃えろ!」


……ア゛ァァァ……ギャァァァ……


 至る所からいきなり火の手が上がった。発火元は…


――人間――


「あちゃー。やっぱり遠くからだと少し威力が弱いね〜。即死させてあげられなくてごめんよ〜」


 数十分後、D地点は壊滅した。

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