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―5.DEATH(3)―

 そこはいつもの図書館。とても小さい踏み台に上って淳は一番上の段にある本をとろうと格闘している。

「おっとっと」

 あと少しというところでバランスを崩し転びそうになる。

「ふー。危ない危ない」

 淳はまた目当ての本に手を伸ばす。


(麗は何故あんなことを言ったのだろう)




「これからしばらくの間、私に関する言動は控えて。特に私がいない間は」

「はぁ。わかったけど、どうして?」

「私に関してのスパイみたいな者が最近動きはじめたの。だから。これは昶にも伝えて。くれぐれも人がいないからって喋っては駄目。何時でも何処でもね」

「はぁ。わかった」

「何時でも何処でも、だからね」




(何時でも何処でも、かぁ。そこが引っ掛かるんだよな)

 そんなことを考えていたら目当ての本に手が届いた。

「おっ、やったー!」

 淳はここぞとばかりに手に力を込め、おもいっきり後ろに手を引いた。が、それが失敗だった。

「うわぁっ!」

 バランスを大きく崩したのに気付き、両手を鳥のように羽ばたかせたが、その甲斐なく後ろに派手に転んでしまった。そして、追い撃ちをかけるように、勢いをつけて抜いた一番上の段の本が淳にむけて落ちてきた。

「なんで僕ばっかこんな目に〜!」





……ガシャガシャガシャ

 大きな段ボールの中身を乱暴に放り出した。中には拳銃が二丁と銃弾が数箱。そして、日本刀が一本入っていた。

「確保には十分な装備ね」

 麗はそう言ってテレビを点ける。

『……日また新しく死者が二人出ました。どちらも地域では名の通ったガンマンで出身国は…』

 あれから二週間。誰ひとりとして死に神を仕留められなかった。それだけではない。誰ひとりとして生きて戻っては来なかった。

 現場には被害者以外の血痕は認められなかったらしい。こう何度も狙われているのに毎夜こりずに出てくるところをみると、死に神は実力の半分も出していないだろう。仲間に引き込むには十分な理由だ。もうそろそろ行動を起こそうと、先週届いた武器の最終確認をしたところだった。

 刀を使う時に邪魔にならないような位地に小型リボルバーをセットしたホルスターを二丁提げる。ポケットにはローダーと銃弾を少量仕舞い、日本刀を手に取る。

 仕上げに例の薬を一粒胸ポケットに入れ、ホテルを後にした。




「死に神さんよ!いったい何処にいるんだい?」

 身長2メートルもある大男が大口径のリボルバーを二丁手に持って夜の街を徘徊している。そこへ二色の目の少女が大きな鎌を持って現れた。

「何か御用かしら?」

「はあ?お前みたいな小娘が死に神だと?……笑わせんじゃねえ!」

「嘘かどうかは私の態度でわかりませんか?」

「………ほう?それじゃあ今までやられてきた奴らの実力もわかるってもんだ」

「あまり舐めてかからないほうがいいですよー。私強いですから」

「はははははっ!お手並み拝見といこうじゃないか!」

 大男はそう言って銃を構える。

「俺のこの銃から逃げられるかな?」

 そう言っていきなり銃をぶっ放した。少女はひらりと銃弾をかわす。

「よくかわしたなぁ。だが次はそういかない!!」

 大男は今度は両手にリボルバーを構え撃ちまくる。少女はその全てをよけている。が、攻撃を仕掛ける様子を全く見せない。

「どうだぁ!俺様のS&Wモデル500の味はぁ!」

 ガキンッという音を立て、弾が無くなったことを大男と少女に知らせた。大男は焦る様子もなく弾をまた詰め始めた。

「いいのか?俺に黙って弾を詰めさせて。これが最後のチャンスかもしれんぞ?」

「あなたの実力はわかったわ。……無駄ね」

「ほう、俺の実力の前に何をやっても無駄と悟ったか。それは賢い判断だ。大人しく捕まると言うのなら命を助けてやってもいいぞ」

「あなたが私に何発撃ち込もうとも無駄と私は言いたいのよ、このウスラトンカチ!」

「なっ、なんだと!」

「その銃を両手で計十発撃った今でも腕がぴんぴんしてるのわ褒めるけど……やっぱりその銃の強い反動のせいで連射スピードがのろまだし、当てることが出来ないんじゃ、ただゴリラに銃を持たせただけにしか見えないのよ」

「……言わせておけば付け上がりやがって!許さねぇ、殺してやる!」

 顔を林檎のように真っ赤にした大男が、銃を乱射し始めた。だが、やはり当たらない。

「ほら、当たらない。私、もうあんたには飽きたから、死んで」

 そう少女が言って、大男が銃を撃った直後のがら空きの懐に素早く入り込んだ。

「なっ!!」

「バイバイおじさん」

 スバン、という音と共に大男の体は上半身と下半身に別れた。血が辺り一面に一瞬で広がる。

「……っは……っは……俺はまだ…死に…たく……」

 そう言い残し、大男は事切れた。

「先に仕掛けてきたのはあなたでしょう。自業自得でーす」

「全くその通りね」

「!」

 さっきまでこの大男に気を取られていたとはいえ、自分に気付かれることもなくこんな近くまで接近されたことに少女は驚いた。そして、

(この人、ただ者じゃない)

と本能でこうも感じ取っていた。

「あなたは?」

「私?私は柊麗。あなたを勧誘しに来たの」

「一体何に?」

「私の所属している殺し屋集団にね」

「…もし断ったら?」

「力付くになるね。私としては、それはなるべく避けたいんだけど」

「無理ね。まだ私はあなたを信用できないもの」

「なら、しょうがないね」

 そう言って麗は薬を飲み込んだ。直後、麗の雰囲気ががらりと変わる。

「Its a show time!ド派手に行こうぜ!死に神さんよ!」


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