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―1.依頼―

「…もうすぐ…もうすぐ私の念願の計画が始まる。…クククク……ここまでくるのに長かった…」

 明かりは蝋燭だけという暗い、倉庫らしき場所に二人の人間がいる。一人は先ほど独り言を呟いていた男と、陣痛を起こしうめき声をあげている妊婦が一人。

 窓には雨が打ち付けるように降っている。

 ふと、突然白い光が辺りを強烈に照らす。



……オンギャーオンギャー



 それは、雷の轟とともにに産声をあげた。










………ッハァ……ッハァ……ッハァ……ッハァ…

 一人の男が木の陰に佇み息を整えている。

(………ようやく逃げきれたか?)

 そんなことを思いながら立ち上がり、辺りを見回す。

 …人影は見当たらない。

 男は安堵の息を吐き、ゆっくりと前へ歩きだす。…が直後、ビクッと体を震わし足が止まった。

 背後に人の気配を感じながら、顔には怯えの表情が浮かんでいる。

 叫ぼうとしても声が出ない。体も動かない。これが本当の恐怖というものなのだろう。体温が急激に下がっていくような感覚を感じ、冷や汗が流れ出る。

 それでも後ろにいる存在を確かめるために思い切って振り返る。

「………っぁああ…」


ザンッ…ブシューーーッ


 支えを失った首が転がって行く。さっきまで首があったところから鮮血を噴き出しながら胴体が倒れる。


 悲鳴をあげきる前にその男は絶命していた。


「…クッ…ククッ…クハハハハハハハハハ!」

 そこには、人を殺すことに「喜び」を感じる“鬼”がいた。






 …そこは図書館。時刻は午後5時。もうすぐ閉館するためか、人の気配が少ない。そこには受け付けの二人の他には二人しかいない。一方は資料コーナーで何かを探す男子学生に、もう一方の座って本を読んでいる人は女性に見える。

 そこに男が一人、入口から入ってきた。その男は女性の方にむかって行く。

「よお、彦斎。相変わらず男にゃ見えねえな」

 男はそう言ってすぐ前の椅子に座った。

「…あまりその名前で呼ばないでください。まだ直らないんですか?小松さん」

 本を閉じ、顔を上げながら今まで女性だと思われていた男が答える。

「悪い悪い。だがよ、毎回名前が変わるんだ。いちいち覚えてらんねーんよ。おまえみたいに天才じゃーねーんだ」

「それで、次の仕事は?」

「これだ」

 そう言って小松は少々分厚い封筒を彦斎に渡した。

「これが今回のリストだ。いつも通りやってくれよ。期待してっから」

 彦斎は封筒の中身を確認する。

 その光景をみていた小松は寒気が走った。彦斎の目が尋常でない輝きを放っている。


………ズキン………


「つっ!」

 突如襲われた頭痛に彦斎は顔を歪め、もとの顔に戻る。

「おいおい、勘弁してくれよ。ここで仕事モード入られたら俺まで危ねーんだから」

「すいません。ついあいつが出てきそうになりました。あっ、でも、もし出てきても小松さんは多分大丈夫ですよ。こいつの大好きな仕事を毎回持ってきてくれてるんですからね。まぁ、多少は危害が加わるかもしれないですけど」

「まったく、そういうこと笑顔で言うんじゃねーよ。おまえの顔じゃあなおさら不気味にみえちまう」

「そんなこと言わないでくださいよ。私も少し困ってんですから」

「ハハハ。じゃあ頼んだぜ。そいつらの暗殺」

 小松は立ち上がりながら小声でそう言った。

「そういうことは余り口に出さないでください」

「悪い悪い。最後に一言言わせてくれ。ナンパに気をつけろよ。ククク、じゃあな」

 男はそう言って図書館を立ち去った。

「…本当にそのことに困ってるのに」

 彦斎はそう言って時間を確認する。

 図書館の時計は18時を指していた。もう30分後には図書館が閉まる。

 最後までこの本読みたかったのに、などと思いつつ本をあった場所に返し、図書館をあとにした。ここに次戻ってこれるのは来月になるな、とも考えながら。

 彦斎は支度のために家に向かった。

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