第二話:許された命
病院で目を覚ました俺はその日のうちに退院し、家に戻った。そして、またいつもと同じ大学生としての生活が始まった。
ただ1つ違うのは俺のポケットには
「願い星」
が入っていた。
死神の説明によると願い星は使いたいときに空に向けて放り投げながら願い事を言うと願いが叶うらしい。使えるのは一度限り。願い事は自由だと言われた。
しかし、死神は監視していると言った。何故監視などするのか?俺の願い事で何の実験になるのか?
俺は生きることを許された。実験台となることと引き替えに…。もしかして俺の願い事によっては命を奪われたりして…。そんな説明は無かったが、果たしてどうだろうか。そもそもこの星が本当に使えるのかわからないじゃないか。
しかし、もし願い事が1つ叶うとしたら何を叶えるだろうか?普通に考えれば富や名声…永遠の命などか?昔良く漫画で見たようなことだ。
俺なら何を願うだろうか…?よくそればかり考えていた。
「陽介!何たそがれてんだよ〜」
友人のただしが話しかけてきた。
「なあ、ただし、もし願い事が1つ叶うとしたらどうする?」
「はぁっ?お前事故のせいでどうにかなったのか?」
「いやいや、この通りピンピンしてるよ。もしもの話だよ、ただしならどうする?」
「う〜ん、そうだなぁ…やっぱり優子ちゃんが俺の彼女になりますように!とかかな」
「また優子ちゃんかよ」
「いいじゃねぇかよ」
優子ちゃんとは同じ学部のアイドル的存在の女の子だかわいくて性格も良く俺も良くみとれることもあった。
好きな女の子を彼女にする…それもありがちな願いの1つかもな…。
家に帰ると母親が忙しそうに家の掃除をしていた。ウチの母親は専業主婦で父親はサラリーマン。決して裕福な家庭ではないが、俺が高校生のとき両親は念願のマイホームとやらを建てた。俺には高校生の妹がいるが毎日のように遊び歩いていてあまり勉強もしていない。
俺は母親にも聞いてみた
「母さん、もし1つ願い事が叶うなら何を願う?」
「何よ?忙しい時に。願い事?そりゃあお金よ。ただでさえ家のローンがあるのにお父さんのボーナスは減るし直子(俺の妹の名だ)にはお金がかかるし…あんたはバイクなんか買って事故起こしちゃうしクドクドクド…」
なんだよ、バイクは俺がバイトして買っただろ。しかし、そこまで金はかかるもんなんだな。母親の苦労は少しはわかるのであえて何も言わずに俺は
「なるほどね」
とだけ言って自分の部屋に行った。
俺なら何を叶えるかなぁ…。
「悩んでるみたいだね」
「誰だっ?」
後ろを振り返ると身長120センチくらいの子供のような女の子が立っていた。
「私?私は天使だよ」
「天使?どっから入ってきたんだ?出ていけよ!」
「出ていけって言われたって私あなたを監視しなきゃいけないし〜」
「監視?」
そういえば死神が我々は常に監視しているとかなんとか言ってたな。しかし、この天使とかいうやつが俺を監視するのか?
「何か聞きたそうだね?」
「てか、天使って死神の手下なのか?」
「違うよ〜。私は正確には天使見習い。死神さんは私達の先生みたいなもんかな〜」
「先生?」
何を言っているのかさっぱりわからない。
「とにかく私はキミを監視させてもらうよ。ちょっと来るのが遅くなったけどまだ願い星は使ってないみたいだね。良かった。良かった」
「はぁ…もうわけわかんねぇよ」
「とにかく私はキミが許された命をどう使うのかしっかり見させてもらうよ〜」
「許された命?」
「あっ、今のは気にしないで〜。私ちょっと人間界観光してくるね〜」
そう言って天使は部屋から出ていった。おいおい、監視するんじゃないのかよ。いきなり職場放棄か?まあ良いか。
しかし、さっきあいつが言った許された命って一体どうゆうことなんだ?