自分は愛されている自覚がある
マルガリッタ王女の婚約者の視点。
孤児院の前で捨てられた時に置時計の魔道具と共にあったので置時計のけたたましい音が無かったら気付くのが遅れていたと何度か話を聞いていた。
そんな謂れがあるからかたまたまの性格なのか子供の時から魔道具に心惹かれる傾向があり、魔道具さえあれば満足だった。
そんな自分が魔道具以外に興味を持ったのは一人の少女。きっかけもまた魔道具で、たまたまころころと転がってきた魔道具は今まで見たことなかったから興味を持ち、いじってみたかったからだ。
金属摩擦で悪くなっていたが、大事にされているのが伝わってくる代物で、摩耗している部品なら自分の集めていた金属の部品で代用できるとすぐに加工して部品交換して組み立てていく。
音声を再生する魔道具だったのだろう。動かしたら子どもの声が聞こえた。
戻ったのに満足していると視線に今更気付き、どうやらこの魔道具の持ち主だろうと思って返そうとしたらいきなり腕を掴まれた。
『――あなた。魔道具に興味ある?』
その時になって彼女の顔を見た。
まっすぐに伸びた金色の髪。緑色の目。その少女が泣き笑いを浮かべながら必死に掴んだまま、
『本格的に魔道具の研究したいのなら支援するわ。だから、誰も見たことない魔道具を作って世界をひっくり返しなさい』
言われた内容も想像したことない面白いものだったが、彼女の顔も魔道具以外で初めて興味を持つものだった。
それに何より。
『王に褒美を尋ねられたら。第五王女のマルガリッタを妻に迎えたいと言いなさい』
孤児院に今慰問に来ているのは第五王女マルガリッタ。おそらく彼女だろう。そんな見ず知らずの子供に本気で言うのかと思ったのだが、そのマルガリッタ王女の顔を見て、
(それもいいかも)
今思えば恋の始まりはここからだったんだろう。
「ずるいわよっ!! 私だって、マルガリッタ王女さまに生涯を捧げられるのに~」
乱暴に木で作られたジョッキをテーブルに置くのは、流行の最先端と言われているデザイナーだと言っても信じてもらえないだろう。
「だよな。支援をすると言われたけど、名を売って自分を褒美にしろなんて……羨ましい……」
ちびちびお酒を楽しみながら愚痴るのは、劇作家として大成している青年。その近くではそうだそうだと同意しているのは彼の所属している劇の劇団員たち。
「うん。だから、早く迎えに行きたいから国が無視できない存在にならないと。――と言うことで欲しい魔道具とかない?」
作ってみるけどと尋ねると。
「そうね~。火を一定に保ってくれて火事になりそうになったら自動で消えてくれる調理器具かしら」
「あっ、分かる!! あと、冷気を保ってくれて材料が悪くなりにくくさせてくれる手軽な氷室とか」
「氷室が移動できるのが一番だけど、遠方の材料も新鮮さが保てるような~」
マルガリッタに支援されたことで料理人の道に進んでいる数人が食材あるある話を出してくる。
「それを言うと私も~。ドレスとかを縫う時に手伝ってくれる道具とか~」
「……細かい作業する時に材料が見にくい時があるから拡大して見れるもの……」
「肩こりとか腰を揉んでくれるのとか無いですかね~」
「二日酔いを何とかしてくれるものとか」
「ははっ。それは医者に頼みなよ~」
などと話をしながら、食が進む。
性別も、年齢も、職業も違う。ただ、共通しているのはマルガリッタさまに才能を見出された者たちというだけ。
自分たちの持てるすべてを尽くして彼女に恩を返したいという思いを持っている仲間たち。
彼らからもらった欲しいものを参考にして、魔道具の研究を進めていく。
庶民の感覚で欲しいものはどこの家でも欲しいものである。
魔道具で作られた氷室。持ち運びが便利でタイヤが付いている。
双眼鏡………を作ったら何か違うと言われたので顕微鏡を作ったら医者が喜んだ。
マッサージをする道具を作ったら、気持ち良すぎて椅子から立てないなどと微妙な感想をもらった。
そして、それが評価されて、王城に呼ばれて褒章を貰えることになった。
なので、躊躇うことなく。
「第五王女。マルガリッタ姫を妻に」
やっとプロポーズの返事を言えた。マルガリッタさまは信じられないと目を大きく見開いていたが、その様も可愛らしかった。
「ビアン。まさか、本当に褒美にわたくしを求めるなんて……」
驚いたようにある一室で話をする。
「約束したので」
ああ、相変わらず可愛らしい。無理して頑張ったかいがあったな。
そうだ。
「マルガリッタ王女。お願いが」
以前から思っていたのだ。婚約が決まったらお願いしたかったのだ。
「な。何かしら……!?」
警戒しているように尋ねられて、
「愛称で呼んでいいですか。リッタと」
と頼んだのだった。
婚約したのだから、リッタのためにいろんな魔道具を発明して……。ああ、結婚式にはあいつらも呼ばないと……。というか、ドレスとか装飾品は自分が作ると立候補しているから頼んでみよう。
と、かなりはしゃいでいたのだが、リッタは自分の言葉が俺を縛り付けたのではないかと後悔している事実に全く気付いていなかったのだった。
愛されていると思っている人は強し




