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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第52話 終焉の回帰


「あっ、ああ……」


 元々は緑あふれる草原だった地が終焉の回帰によってすべて黒く塗りつぶされていた。


 そしてその中心には聖剣を杖のようにしてなんとか立っているルシアスの姿がある。もちろん3つの終焉の回帰を自力で防いだというわけではなく、あえて我がルシアスだけを避けたのだ。


「さて、一応聞いておくが、まだ続けるか?」


「……私の負けだ。降参する」


「ふむ、認めよう」


 聖剣を地面に置き、両手を挙げるルシアス。さすがに終焉の回帰を見て戦意を喪失したようだ。


「さすがゼノン様です!」


「やっぱりゼノン様はすごいです!」


 ミラとセレネがこちらに駆けよってくる。


 確かに剣技は見事で勇者よりも上だったかもしれないが、勇者の一番脅威であったところは自身の身が傷付くことをまったく恐れていなかった点だ。もちろん聖女の回復魔法があるという理由もあったが、それでも我の攻撃をまったく恐れず、死地へより深く踏み込んできた。


 致命傷をギリギリで避けつつ、どのような状況や態勢からでも我の魔核を狙ってきた。常に刺し違える覚悟で攻撃を仕掛けてくるのだから厄介極まりなかったぞ。己の命と引き換えにしてでも戦争を終わらそうというその確固たる意志は敵ながら見事であった。


 このルシアスという者も強くはあったのだが、そういった意味での怖さは皆無だ。我の攻撃に防戦一方であったからな。あれが勇者であれば、自身の防御は最低限で突っ込んできていただろう。


「さて、これ以上やるのであれば、今度こそこの男もろとも貴様らを皆殺しにするがまだ続けるか?」


「こ、降参する! だからルシアス殿を殺さないでくれ!」


 我が敵軍の指揮官に問うと、思ったよりも素直に降参した。たった3人で兵士を三分の一ほど倒したからか、国最強の剣士を倒したからか、終焉の回帰を見たからかはわからぬが、初めからこれくらい素直ならばよかったのだがな。


「いいだろう。だが、二度はない。今後このカルヴァドス領へ許可なく立ち入った場合は容赦なく殲滅する。こいつは戦利品としてもらっておこう。そちらの態度次第では返還してやってもいいと、国王に伝えろ」


 ルシアスの前に刺さっている聖剣を引き抜く。今のこいつらが持っていたところで脅威ではないが、こちらで預かっておくとしよう。勇者が持っていた武器としての箔はもはないかもしれぬが、古代の遺物としては十分に価値がある。今後の交渉としても使えそうだ。


「し、承知した……」


 終焉の回帰によって、こいつらには十分に恐怖を刻み付けることができただろう。二度とカルヴァドスに足を踏み入れることはないはずだ。再び攻めてきた場合は言葉通り、今度こそ皆殺しにするつもりである。我の所有物に手をかけようとする者は何人たりとも許さぬ。


 まだ身体が震えつつ、呆然としているルシアスを敵軍が回収し、そのままこの地を去っていった。




「さすが魔王様ですね」


「魔王様、本当に格好よかったです!」


「うむ、我も終焉の回帰を使えるくらいには力が戻ってきたな」


 終焉の回帰は前世でもそこそこ高位の闇魔法であったが、ようやくこの姿でも使えるようになった。ちまちまとだが盗賊どもを呑み込んできた甲斐があったというものだ。


「ですが、本当にあいつらをそのまま返してしまってもよろしかったのですか? さすがに再び魔王様に逆らうほど愚かではなさそうでしたが、このままアデレア国を乗っ取ってもよかった気もしますが」


「ルシアスという男とこの聖剣が我に対するあの国の最高戦力であったことから、おそらくそれも可能であろう。だが、アデレア国を乗っ取ったところで、今度は周囲の国すべてを敵に回すこととなる。それをするにはまだ早計であるな」


「なるほど、さすが魔王様です」


「私には少し難しいです……」


 人族の面倒なところはその数だからな。さすがに今は四天王もいないし、周囲の国すべてを一度に相手をするのは面倒だ。少しずつ戦力を増やしていくとしよう。


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