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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第5話 50年後の世界


「盗賊団とはどういうことだ? 盗賊というのは村や人を襲って金品を奪う輩であろう。なぜそんなやつらに金を支払っている?」


 魔族領でも同族の者から食料などを奪う輩もいた。もちろんそんな者どもはすぐに粛清したがな。


「……年々領内の治安が悪くなっていき、生活に苦しい者が増え、盗賊の数が次第に増えてまいりました。そして盗賊たちが徒党を組み、巨大な組織となったのです。そして盗賊団はこの街に目を付けました。自らの地位を脅かされると思ったダレアス様は盗賊団と交渉をして、自分の領地に手を出させないことを約束させる代わりに、毎年多額の金品を盗賊団へ支払うを選んだのです」


「「………………」」


 呆れて物も言えん。


 そもそも税をとる代わりとして領民の安全を保障するのが王や領主の役割であるはずだ。それなのに領地を脅かす輩と自ら手を組むとはな。


「領民や騎士からの反発はなかったのか?」


 いくらこの領地の民衆が愚鈍であったとしても、さすがに自分の領地が盗賊団と手を組めば反乱を起こすはずだ。


「その盗賊団の首領がとても強いということもありますが、ダレアス様が逆らう者は家族をも見せしめに処刑したことによって反する者はいなくなりました」


「……実に愚かな」


 領民から搾取をし続け、盗賊と手を組み、逆らう者をすべて排除するとは本当に腐っている。本人だけでなく、家族をも見せしめにするとは品もない。


 そんな領地からはさっさと逃げ出せばいいとも思うが、ミラが言うにはこの周りの領地もすべて同じようなものらしい。


「そんな無駄な防衛費など不要である。盗賊団はさっさと処分してくるとしよう」


「ゼ、ゼノン様! 夜闇の骸蛇(よやみのがいじゃ)団はこの辺りを荒し回っていた大きな盗賊団で、その首領の強さは――」


「その程度問題ない。大きな盗賊団であるということは随分と蓄えていそうだな」


「さすがゼノン様ですね!」


「い、いくらゼノン様が強大な闇魔法の祝福を得たからといってさすがに無謀すぎます!」


「問題ない。命令だ、黙って従え」


「は、はい……」


 力を失ったとはいえ、そんな人族の盗賊団など魔王たる我の敵ではない。この身体についてもいろいろと確認したいところであった。


 さて、そろそろ本題に入るとするか。我としてはこちらの方が重要だ。


「ユルグよ。この領地には魔族はいないのか?」


「なっ!? ゼノン様、どこで魔族のことを聞いたのか知りませんが、魔族のことはあまり触れない方がよろしいかと……」


 ふむ、ミラの言った通り、この世では魔族のことを話すのは禁忌らしいな。


「いいから話せ。このカルヴァドス領にも魔族はいるのか?」


「いえ、おそらくいないかと思われます。大昔に魔王が討たれた後の大規模な魔族狩りでそのほとんどが一掃されたはずです」


「……魔族狩りか」


「はい。ですが、一部の魔族は逃げ延びて隠れ里を作って暮らしているという噂もあります。そういった魔族を捕らえた際は国が賞金なども与えております」


「………………」


 思ったよりも魔族の立場はよくないようだ。


 さすがにこの状況で魔族の保護を頼むのはまずいか。もう少し現在の状況を把握してからにした方がよさそうだ。




「ほう、この料理は美味であるな」


「ええ。こちらのレッドワイバーンの肉の柔らかさと濃厚なソースは実にすばらしいですね。この芳醇な香りのワインもおいしいです」


 食事の時間となり、屋敷の料理人が作った料理をミラと共に食べている。


 この焼いた肉にソースをかけた料理や雑味の少なく口当たりの良いワインは五十年前に我が飲食しているものとはレベルが数段上だ。屋敷内の明かりにも我が見たことのない魔道具が使われており、ここが我のいた世界の先を進んでいることがよくわかる。


「ゼ、ゼノン様にお褒めいただけるとはとても光栄でございます! ゼノン様の賞賛に恥じぬよう、これからも精進していきたいと思います!」


「「………………」」


 我とミラの言葉に大袈裟に驚き、頭を下げる料理人。


 確かにゼノンの記憶を辿っても、ダレアスとゼノン共々これほど美味なる料理に対してまともに褒めたことがなかった。むしろどんな料理に対しても文句ばかり言っていたようだ。なんとも贅沢なやつらだ。




「ふむ、50年後の世界というのも悪くないものだな。夜までこれほど明るいとは」


 ミラと2人で元ダレアスの部屋で話をしている。


「人族は便利な魔道具を開発するのが得意ですからね。料理などの研究も祝福のおかげで我ら魔族よりも進んでおりました」


「祝福か、便利なものであるな」


 掌の上に闇魔法を発動させる。前世の力がなくなったとはいえ、この身体で闇魔法だけはある程度使えることができるのも祝福のおかげだろう。


「魔王様、これからいかがいたしましょう?」


「我らの同胞を探すためにはいろいろと情報が必要なようだな。そして我の力を把握するためにも今は焦らない方がよいであろう。この領地は我の物となったことだし、人族の世界を我が手中に収めるのも悪くない。しばらくはここを拠点として動き、同胞の情報を集めるとしよう」


「承知しました。さすがは魔王様です!」


 さて、明日は盗賊どもを血祭りにあげ、我の力を取り戻すとしよう。


「ま、魔王様。もしよろしければ、今日は私もこちらのお部屋で寝てもよろしいでしょうか?」


「いや、護衛に関しては問題ない。屋敷の者は契約で縛ったことだし、力を失ったとはいえ、賊が来たところで問題ないぞ」


「さ、左様でございますか……」


 せっかくこれだけの屋敷で部屋の数も多いのだから、ミラも広々とした大きな部屋を使ったほうがよいだろう。


 とはいえこの部屋は趣味が悪いので、早々に手を加えるとしよう。


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