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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第47話 勇者の扱い


「それでおまえは今のままでいいのか? 英雄だという勇者の名声は地に落ちている。おまえも一生をこのままここで無様かつ無為に終わらせるつもりか?」


「っ! うるせえ、てめえみたいなクソガキになにがわかる!」


 アルテリアが机を叩き、立ち上がって大きな声で怒鳴る。


 拳は震え、その瞳にははっきりと分かるほどの怒りが満ちていた。


「てめえらみたいな貴族は自分たちだけは安全なところでふんぞり返ってなにもしねえじゃねえか! 自分たちから魔族に喧嘩を売っておいて、敵が攻めてきたら俺たち平民に戦わせるだと? それに魔王を倒したのはじいさんだってのに、貴族に逆らって邪魔になったら処刑するだなんてふざけてんのか!」


「………………」


 ほう、どうやらこの者はあの戦争が人族から仕掛けたものだと知っているようだな。ザイラスは人族の一部の者しか知らないと言っていたそうだが、勇者やその子供から聞いていたのかもしれない。


 ……それなら魔族が人を食べることがないということも教えておいてほしかったものだ。あるいはあの勇者もそう教えられていたのかもしれないが。


「お、大きな声がしたけれど大丈夫、アルテリア!?」


「お姉ちゃん、大丈夫!?」


「……何でもねえ、ちょっとイラついて怒鳴っちまっただけだ。すまねえ、悪かった」


 怒鳴り声を聞いて修道女と子供が部屋へ入ってきた。特に修道女の方はだいぶ狼狽している。貴族である我となにかあったのかと思っているのかもしれない。


 アルテリアもさすがに孤児院に迷惑がかかると思ったのか、素直に頭を下げた。


「気にする必要はない。むしろアルテリアの本音が聞けてよかったぞ」


 我がそういうと、修道女がほっとする。子供たちがまだアルテリアを心配そうにしていたが、修道女と一緒に部屋を出ていった。


 どうやらアルテリアは貴族の者を恨んでいるようだな。まあ、今も実際にこの者やこの孤児院を虐げているのはこの街の領主である貴族のせいでもあるからな。


「我の問いに答えてくれて感謝する。ひとつ提案があるのだが、我の領地へ来ぬか? 少なくともここで暮らしているよりはまともな生活を約束しよう」


「……はあ? いきなりを言ってんだ?」


 前世で我を殺した勇者だが、恨みのようなものはない。むしろ我が死んだ後に同胞である魔族を救おうとしてくれたことに今は感謝さえしているくらいだ。


「我はアデレア国の隣にあるラドム国のカルヴァドス領で領主をしている。そなたの祖父である勇者には縁と恩があってな。もしもそなたがよければ我が領地へ来るといい」


「おまえが領主? まだ10歳くらいのガキだろ……?」


「無礼な女ですね。ゼノン様は間違いなく一国の領主です」


「……というか、あんたは聖女だよな。ずっと行方不明だったのがなんでここにいるんだよ?」


 我が侮辱されたと思ったのか、ミラが口を挟む。先ほどマーナという修道女には説明したが、この者には説明をしていなかったか。


「私はゼノン様に助けられ、そのままゼノン様へ仕えることにしたのです」


「マジかよ!? 聖女なんだろ、よく教会がそれを許したな」


「厳密には許されなかったが、我には関係のない話だ。そうだな、いずれ事実とは異なる話が街の者に伝わるだろう。その件が片付いてから考えても問題はない」


 どうせこの国の者たちは自分たちの都合の良いように事実を捻じ曲げて我がミラを唆したことにするのだろう。


「……駄目だな。俺がこの孤児院からいなくなったら、みんな飢えちまう。それに俺はマーナさんに子供のころから世話になってんだ。俺が嫌われ者なのをわかっていながらこの孤児院で引き取ってもらった恩は必ず返す」


 アルテリアは即答する。


 自分一人であるなら名を隠して別の街へ移動すればよいだけなのに、それをしないということはこの孤児院に未練があると思っていた。


「ふむ、ならばこの孤児院にいる者すべて面倒を見ても構わんぞ。少なくともこの孤児院で暮らすよりはまともな生活を送れるだろうな」


「どうしてそこまでするんだよ。あんたの身内がじいさんからそこまでの恩を受けたってことなのか?」


「どちらかと言えばむしろ敵であったが、同胞たちが世話になったようだからな。それに我も勇者がそういった扱いを受けているのは無性に腹が立つ」


 我を倒した勇者やその子孫がそういった扱いを受けるのはなぜだかわからぬが腹が立つ。


「付け加えるならばアルテリアのような人材をこのまま腐らすのは勿体ない。能力のある者は使ってこそであるからな」


「………………」


 あの勇者とまではいかないが、この者の力は秀でている。この国が捨てるというのなら、我が拾おうではないか。


「すまねえが、いきなりそんなうまい話には乗れねえよ」


「ふむ、そうか」


 さすがに初めて会う他国の貴族をいきなり信用する者はいないか。


 それにこの者の淀んだ目はこれまでに多くの者に騙されてきたのだろう。


「すぐに決める必要はない。どちらにせよこれからひと騒動起こるだろうからその間に考えておくといい。ああ、それともうひとつ付け加えておくならば、我は勇者と戦っていた魔族に与しているぞ」


「なにっ!?」


「おっと、セレネが帰ってきたようだ。話はここまでだ。次に会う時にどうするかを考えておけ。国の貴族が話すことと我が話したこと、なにを信じるか自身で考えるといい」


「おい、ちょっと待て! 魔族ってどういうことだよ!」


 ちょうどセレネが必要な物を購入して戻って来たようで、外で子供や修道女の喜んでいる声がした。アルテリアはまだ我の話を聞きたい様子であったが、この話はここまでとなった。


 その後は宿へ戻り、グリフォンに乗ってアデレア国を出発した。


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