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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第34話 面会


「これはゼノン様、遠路はるばるご足労いただき、誠にありがとうございます」


 ニコニコとした表情で、我らを迎い入れるランベル=ダスクレア。でっぷりと太った身体や顔は甥であるザイラスとそっくりだ。


 その周りには6人ほどの護衛がいる。直属の護衛だけあって、公開処刑の際にザイラスのそばにいた護衛よりは多少強そうである。


 この屋敷はザイラスの屋敷であるが、今はその叔父であるランベルがこの屋敷を使っているようだ。すでにこの領地と屋敷を引き継いだ気でいるらしい。


「ゼノン様の領主継承式には参加をすることが叶わず、誠に申し訳ございません。遅ればせながら、領主就任誠におめでとうございます。カルヴァドス領とダスクレア領は隣り合わせ、ぜひ今後ともより良い関係を築いていきましょう!」


 作り笑いを浮かべながら、我に向かって大袈裟に頭を下げるランベル。


 なぜこいつが子供である我に対してこのような態度をとっているかというと、面会を求める際に我がカルヴァドス領の領主を継承した挨拶をするために来て、先日多数の有力者がいなくなったことに対して援助をしたいと申し入れたからだ。


 プライドも何もないやつであるな。まあ、実際に先日の件もあって金が大量にほしいというのは事実であろう。


「ふむ、我としてもそうしたいのは山々ではあるが、どうやら我が領地からこちらの領地へ逃げ込み、良からぬことを企んでいる者がいるようだ。今後良い付き合いをしたいのであれば、そういった者を捕らえる協力をしてほしいものであるな」


「……なるほど、そのような者がいるのですね」


 我の話し方に一瞬反応したが、すぐにそれとは別のことを考え込むランベル。


 騎士団が集めた情報によると、カルヴァドス領の一部の者がこちらの領の情報を手土産にダスクレア領へ取り入ろうとしている。ザイラスはすでに死んでいるため、次期当主となるこの者に話を持ちかけているはずだ。


「もちろん、協力してくれた際には見返りもはずもう。具体的にはこれくらいでどうだ?」


「おお、こんな大金をですか! そういえば、最近このダスクレア領へ移住したいと申し出る者も多くいましたな。もしかすると、その中にゼノン様のおっしゃる不届き者がいるのかもしれません。すぐにこちらで確認をしてご報告させていただきます」


 我が領主の判を押した金額の書いてある書類を見せると、たちどころに上機嫌となりながら、手の平を返すランベル。


 大方逃げ込もうとした有力者たちと我のどちらの方がこの者にとって益になるかを考えており、我の方が益になりそうとわかった途端、その者たちを切り捨てることを選んだのだろう。なんともわかりやすい男だ。


「すでにわかる者の名はないのか?」


「そうですな、ちょうどガンドロス子爵家の者が我が領地に移りたいと相談をしてきておりました。もちろんゼノン様に確認を取るところでしたよ。残りの者はその者たちを引き渡す際ということでいかがでしょうか?」


「……ふむ」


 本当に白々しいものだな。


 とはいえ、これで裏は取れた。騎士団の話によると、複数家が結託しているそうだが、この者が知っているという事実がわかれば十分だ。あとはそのガンドロス子爵とやらを尋問するとしよう。


「いやあ~それにしてもゼノン様が話しの通じるお方でよかったです。領民ごときのために動き出したなどとはやはりデマのようでしたな。領民は領主、ひいては国のために働けばいいのですよ。ゼノン様とは今後ともよい付き合いができそうでなによりです」


「………………」


 本当にダレアスやこのランベルは腐っているな。まあ、それでこそ我も遠慮なくやれるというわけだ。


「それではゼノン様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」


 そう言いながらランベルは右手を差し出してくるが、我はその手を取らない。


「フハハハ、そろそろ茶番は終わりだ。我が貴様のような者と手を組むわけがないであろう」


「ゼ、ゼノン様!?」


 我の態度が変わったことにより、ランベルが驚く。


「なにを勘違いしているのか知らんが、そもそもこの領地は貴様のものになったわけではないぞ。今日からこのダスクレア領は我が支配することとなった」


「な、なんだと! このクソガキが、貴様に何の権限があるというのだ!」


 我の言葉に激昂するランベル。愚かにもすでにこの領地が自分のものになったと勘違いしているようだな。


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