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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第31話 世襲制


「現在はザイラス殿の叔父にあたるランベル=ダスクレア殿が一時的に統治をおこなうようですが、彼以外のザイラス殿に血縁関係のある者は今回の件ですべて亡くなってしまったため、おそらくそのままランベル殿が領主を継ぐことになるかと思われます」


「ふむ、世襲制というやつだな」


 この国では親が死ねばその地位は子に受け継がれることとなる。まったく、我らのように一番実力のある者がその地位につけばいいものを。


 ……まあ、そのおかげで我もこの領地を引き継ぐことができたわけだがな。


「ゼノン様のお考えではザイラス殿の血縁の者が領地にいた方がよいと思われますので、ある意味ではランベル殿が残っていてよかったかもしれませんね」


「そうだな。ダスクレア領がまとまらないうちにことを起こしたい。ユルグの言う通り、我にとっては運が良かったぞ」


 午前中に騎士団の者から話を聞いたあとで我の考えをみなにも話したが、ダスクレア領が混乱している間の方が我らにとっては都合がいい。


「例の件につきましては現在調査をしているところとなります」


「ほう、もう動き始めたのか。さすがであるな」


「ありがとうございます」


 今日の午前中に騎士団の者と話してからあることをユルグに命じたのだが、もうすでに調査を始めたようだ。相変わらず有能である。


 この調査については少し時間がかかるだろう。だが、可能であればもうひとつの方も動き出したい。


「このカルヴァドス領は我の物でもあると同時に伯爵家のものでもあるのだな?」


「左様でございます。カルヴァドス領はこの地を治めるジルト伯爵領の一部となっておりまして、そちらをゼノン様が治めているという状況です」


「……なんとも面倒であるな」


 この国には貴族制度があり、子爵家は伯爵家よりも下の位となり、伯爵家の配下となるらしい。国が治めている領地を公爵家や伯爵家に割り振るが、その者たちだけでは統治できない領地を子爵家が統治するといった感じだ。


 つまりこのカルヴァドス領はジルト伯爵の領地でもあるというわけだ。……本当に人族の統治の仕組みは面倒である。


「ええ~と……ええ~と……」


「セレネはあまり深く考えなくて良いですよ」


 人族の生活に詳しくないセレネはすでに限界のようだ。我もゼノンの記憶がなければ怪しいところであったな。


 ミラの言う通り、セレネがその辺りのことを覚える必要はないだろう。


「そちらの方も同時に動くとしよう。ユルグ、準備を任せるぞ」


「承知しました」


 どちらも準備に多少の時間はかかる。加えて騎士団の方にも準備をさせておくとしよう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「みんな~」


「おお、セレネ!」


「キィ!」


 ユルグに指示を出してから2日ほどたち、こちらの準備はすべて終わった。あとは結果が出ることを待つばかりとなった。


 時間もでき、その間に準備をしておいた物資なども用意できたので、グリフォンに乗ってルシアルガの森へとやって来た。


「また大勢を運ぶ事態が起こるかもしれませんし、グリフォンももう一羽購入してセレネにも乗りこなせるようになってもらった方がいいかもしれないですね。そちらの方が物資などもより多く運べるでしょう」


「ふむ、そうかもしれぬ。確かに少し高価かもしれないが、もう一羽いてもいいだろう」


 ミラの言う通り、この里の者たちをエリオンとガルオンに運んでもらうのは中々無理があった。少し高価ではあるが、エリオンとガルオンは頑張ってくれていることだし、もう一羽仲間がいてもよいかもしれない。


「それにいつまでも魔王様と一緒に乗るなど、とても恐れ多いです」


「いや、それは別に構わんぞ。セレネであれば大した重さではないだろうからな」


「……左様でございますか」


 今回もセレネは我の前に座ってここまで来たが、我もこの身体は子供であるし、セレネなら軽くて大した負担にはならないだろう。


「ここでの生活は問題なさそうか?」


「はい。魔王様のおかげで、家や壁もあり、問題なく生活できております」


 青い肌をしたバルラトはここにいる者の中で最年長でもあるため、セレネの代わりにこの拠点の長を任せてあるが、今のところは問題ないようだ。


 今は森で切り倒した木材を使って家具などを作っている最中らしい。闇影兵たちに壁と家は作らせたが、他の物はまだいろいろと整っていないからな。


「問題ないようでなによりだ。服や工具、食料、農具などを持ってきてある。ここでの生活に役立ててくれ」


「感謝いたします。セレネ、ちゃんと魔王様にお仕えできておるか?」


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