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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第30話 魔龍俗の力


「た、頼む、許してくれ!」


「逃がしません!」


「ぎゃああああ!」


 盗賊たちが泣きわめき、許しを乞いて逃げ出すが、セレネの速度からは逃れることはできず、その細い腕が盗賊の胸を貫いた。


「……これはすごいですね。もしかすると、将来はザルファードを超える器かもしれません」


「うむ、ミラの言う通りであるな」


 騎士団を訪れたあとは少しだけ街をまわって案内をし、セレネの力を確認するために盗賊の討伐へとやってきたわけだが、その力は圧倒的であった。


 魔龍族という屈強な身体を持っているとはいえ、それでもあの年でここまでの力を持っているのはセレネがこれまで積み重ねてきた努力があったからであろう。特に魔法を使っているわけでもないのに、素の身体能力だけであれとは恐れ入るな。


 大規模な盗賊団はすでに我とミラが殲滅したこともあって相手はそれほど大きくない盗賊団とはいえ、セレネはたったひとりで盗賊たちを殲滅した。隠れ里が攻め入られた時もだいぶ抵抗をしたようだが、敵の数が多かったことと、里の者を人質に取られてしまったこともあり、捕まってしまったようだ。


「ゼノン様、やりました!」


「うむ、よくやってくれたな。見事であったぞ」


「はい!」


「……?」


 我が褒めると、なぜか目をつむりながら我の方へ頭を差し出してくるセレネ。


 そういうことか。


「えへへ~」


「……っ!?」


 我が差し出してきた頭を撫でてやると、嬉しそうに表情を崩すセレネ。やはり里では良い事をしたら、大人が頭を撫でて褒めてやったのだろう。


 我もそれに習うとしよう。


「魔族にもいたが、こういった盗賊どもは他人を害し、まともに生きている善人にまで害を与える。この地は我の物となったため、我の所有物にまで手を出そうとする者は容赦なく排除しろ。それにそういった輩は我の力を取り戻す役に立つからな」


「はい、わかりました!」


「うむ。だが、人族の中には魔族に対して理解のある者もいるし、他者を尊重できる者もいる」


「……はい。確かにユルグ様は私が魔族であることを知っていても優しかったです。私も大切な里の者を殺した者たちは絶対に許せませんが、それ以外の人族に対して恨みのようなものはありません」


「そうか。だが無理はするなよ。頭ではわかっていても、どうしても受け入れられないことはある」


 大切な者を殺されたのだ。理解はしていても、その種族全体を恨んでしまう気持ちも仕方のないことである。


「なにか吐き出したいことがあったら、いつでも我やミラに相談するといい」


「はい、わかりました!」


 いい返事だ。我も部下の悩みや愚痴くらいであればいつでも聞いてやるとしよう。


「さて、後処理はいつものように屋敷の者へ任せるか。エリオン、屋敷まで頼むぞ」


「キィ!」


「ミラ、どうした、いくぞ?」


「……あっ、はい! あの魔王様、私もその……」


「どうした?」


「いえ、なんでもございません! 行きましょう!」


 なぜか焦った様子でガルオンに乗るミラ。


 ふむ、わからぬな。さすがに何百年の時を生きてきたミラがセレネと一緒に頭を撫でられたいなんてことはないであろうし……。




「ゼノン様、先日のダスクレア領についての情報が到着しました」


「ほう、どんな状況だ?」


 屋敷へと戻り、風呂で汗を流して夕食を終えたあと、ユルグがそのことを教えに来た。我らが公開処刑を阻止してから数日がたち、ようやくカルヴァドス領まで情報が伝わってきたようだ。


「はい。ゼノン様の仰っていた通り、公開処刑へ乱入し、その会場にいた者を殺害した犯人はいまだに見つかっていないようです。現場の状況から大規模な組織が関連していると推測されているようで、有力な情報を提供した者には賞金が出ているようです」


「ふむ、予定通りだな」


「さすがゼノン様です!」


 闇影兵の顕現(シャドウソルジャー)のことを大規模な軍や兵による襲撃と誤認しているらしい。念のために闇魔法で変装をしておいたが、それも不要だったようだ。


「会場には領主のザイラス様だけでなく、多くの商人や要人も行方不明となっているため、ダスクレア領ではかなりの混乱状況にあるようです。殺されたのか、連れ去られたのか、魔族の者たちもどうなったのか不明なようです」


「そういえば死体はすべて呑み込んでしまったか。だが、その状況では魔族を捜索している余裕などないだろう」


「はい、私もそう思います。少なくとも現状は今回の件がゼノン様に関わりがあるとは思われていないようです」


「よ、よかったです!」


 セレネがほっと息をつく。


 我はまったく気にしないが、自分たちのせいで我が悪い状況に陥らないか気にしたのかもしれない。


「それで、ダスクレア領は今後誰が治めることになるのだ?」


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