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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第27話 屋敷へ


 真っ赤に燃える炎のように赤い髪を結い、髪の隙間から2本の黒い角が生えており、給仕服の下からは赤い尻尾が見えている。出会った時はボロボロの服を着せられており、まともに水浴びもできずに汚れていた時とはだいぶ違うものだな。


 セレネもこういった服は初めて着たようでいろいろと気になるのか、自らのスカートの裾の部分を気にしているようだ。


「この者が例の……。初めまして、ゼノン様に仕えておりますユルグと申します」


「は、初めまして、セレネと申します!」


「……こうして見ても可愛らしい女の子にしか見えませんね。これからよろしくお願いします」


「は、はい! ユルグ様、どうぞよろしくお願いします!」


 ユルグとセレネが握手を交わす。


 すでにセレネにはユルグのことを話してある。魔王である我のことまでは話していないが、我は魔族と関わりがあり、闇魔法の契約で縛っているので我らに不利益となる行動を起こすことができないということも伝えている。


 セレネも屋敷の者やユルグのような人族であれば、普通に接しても問題ないようだ。里の者の仇である人族だが、そういった人族ばかりでもないことは里の者からも聞いていたらしい。それに加えて今は我とミラも人族であるからな。


「魔龍族の特徴は龍族とは異なるこちらの黒い角のようですね。この数十年間まともに魔族を見た者はいないので、おそらく大丈夫だとは思いますが、念のため外へ出る際はそちらの角を隠すようお願いします」


「はい」


 この街にもそうだが、人族の社会にはドワーフや獣人など、人族とは異なる種族が存在する。どちらにせよ龍族はかなり珍しい種族であるため、屋敷の外に出る際は少し注意が必要だ。


 ちなみに魔族と人族の大きな違いは魔核があるかであろう。基本的には魔族は胸に人族の心臓と呼ばれるような核となるものが存在する。細かいことは知らぬが、魔族の肉体が強靭で強い魔法を放てるのはこの魔核のおかげかもしれぬな。


「なにか分からぬことがあればユルグかミラに聞くといい」


「はい!」


「ゼノン様の身の回りのことについては私が教えます。ゼノン様の尊さを学び、ゼノン様へ仕えることの喜びを噛みしめ、ゼノン様にすべてを捧げるすばらしさを教えてあげましょう!」


「……我のことは良いから、屋敷やこの街のことについて教えてやってくれ」


「はい、承知しました!」


 ミラは我への忠誠が少し強い気もするからな。セレネには帰る場所もあることだし、あまり変なことを教え込まないように注意しておくとしよう。


「セレネ様、これは我々が持ちますので……」


「これくらいは自分で持てます!」


「……これが龍族の力ですか。幼いのにすごい力ですね……」


「うむ、我もこれほどとは思っていなかったぞ……」


 この屋敷には無駄に部屋が多いので、セレネにはミラの隣の部屋を与え、家具などを運ぶために護衛のクレイヴに手伝いをさせているのだが、それが必要ないくらいにセレネの腕力は優れていた。


 ベッドや大きな家具を片手で持ち上げている様子にはユルグや護衛の者たちも驚いている。まだ幼いのに魔龍族の力はしっかりと受け継がれているようだ。




「おいしい! とってもおいしいです、ゼノン様!」


「ああ、落ち着いて食べるといい。相変わらずムシュールの料理は美味であるな」


「ありがとうございます! ゼノン様にお褒めいただき、そして名前を憶えていただいてとても光栄でございます!」


 夕食となり、ミラとセレネと共に食卓を囲む。


 今日は魚料理とスープの料理だ。ムシュールが作る料理はどれも香辛料が効いていてうまい。この数十年間で人族の社会には様々な香辛料が広がり、多くの料理が生まれたらしい。料理に関しては魔族よりも人族の作るものの方が美味であろうな。


 そしてこれだけ毎日料理を作っているのならば名前くらいは覚えるであろうが、ゼノンの記憶によると、これだけうまい料理を食べてもダレアスやゼノンは満足せずに名前を覚えることすらしなかったようだ。本当にこれまでなんの苦労もせずに生きてきたのだろう。


「……あとで作法なども教えなければなりませんね。ゼノン様に仕えるのであればそういったマナーなど見られてしまいますから」


「し、失礼しました!」


「いずれ直していけばよいだけだ。それよりも今は腹いっぱい食べるといい」


「は、はい!」


 里で生まれ育ったセレネはナイフとフォークをうまく使うことに慣れていないようだ。ミラの言うことももっともであるが、ここしばらくはあまり食事も楽しめなかっただろうし、今はそんなことを気にせず食事を楽しんでもらうとしよう。我も人族の世界で食事は楽しみでもあるからな。




「……なるほど、里では他の者たちと一緒に寝ていたのか」


 夕食を食べ終えると、セレネが目を擦って眠そうにしている。風呂に入り、美味な料理を食べると睡魔が襲ってきたのだろう。そしてなにやら不安そうにしている。


 いきなり見知らぬ場所へやってきて、人族のいるこの屋敷でひとりで寝るのは少し酷かもしれぬ。魔龍族の屈強な肉体を持っていても、セレネはまだ子供であるからな。


「不安であればしばらくは我の部屋で共に寝るか?」


「い、いえ!? ゼノン様と一緒のお部屋で寝るなんて、さすがに畏れ多いです!」


「そ、その通りでございます! それでゼノン様の疲れがたまってしまっては本末転倒でございます! しばらくは私の部屋で一緒に寝ましょう!」


「はい! ミラ様、ありがとうございます!」


「ふむ、ミラがそう言うのならば任せるとしよう」


 それではミラの方に疲れがたまってしまうとも思ったが、同性の方がより安心するだろう。ここはミラに任せるとしよう。


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