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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第14話 領主継承式


「……想像していた以上に人が多いな」


「これもすべては魔王様の人望によるものです。魔族だけでなく人族をも束ねてしまう魔王様の人望には誰も敵わないでしょう」


「キィ!」


 エリオンに乗りながら上空から広場へと降りていくと我が想像していた以上に集まっている。


 その理由はミラが言った人望などではなく、税率を下げて盗賊どもから奪った金で領地内の施設などを向上させようとしているからであろう。人族は魔族以上に現金なものだ。


 後々下げた分はしっかりと回収するのだがな。そして魔王である我がそんな飴だけを与えると思っていたら大間違いである。




「ゼノン様~!」


「あれがゼノン様か。本当にまだ子供じゃないか!」


 継承式の会場に上空から舞い降りると領民の歓声が湧き上がる。


 ふむ、どうやら前評判は悪くないらしい。


「我がゼノン=カルヴァドスである。今この時よりこの領地は我の所有物となった。我は前領主であるダレアスとは違い、冷酷ではあるが理不尽ではない。正当な労働には相応の対価を、怠惰や罪には相応の罰を与える! 貴様らが我に従うのなら、この地に飢えや恐怖を許さぬことを約束しよう!」


「「「おおおおお~!」」」


「さすがゼノン様です、たった一言で領民の心を掴んでしまいましたね!」


「ええ、本当に立派なお姿です!」


 領民が更に湧き、後ろに控えているミラとユルグが呟く。


「さて、我の一番の配下を紹介するとしよう」


「くふふふ……一番……」


 我の言葉により、ミラが前に出てくる。


 我に対して服従を誓うのであれば、褒美があることを見せてやるのが一番早い。


「おおっ、なんて綺麗な女性なんだ!」


「すごく綺麗な方ね!」


「あれ、もうひとり前に運ばれてきたぞ。……ひでえ怪我だな」


 そして屋敷の者の手によってミラの前に全身が包帯に覆われた子供が運ばれてきた。


 足があらぬ方向へ曲がっており、自らの力で立ち上がれることができないことは明白である。


「ミラ、頼むぞ」


「お任せください、ゼノン様。『ヒール』」


 ミラが女の子に向かって手をかざすと、眩い緑色の光が女の子を包み込んだ。そしてその女の子は自らの力で立ち上がった。


「……あれ、身体が痛くない」


「リアナ!」


「お兄ちゃん!」


 屋敷の護衛のひとりであるクレイヴが涙を流しながら妹を抱き上げる。


 我と契約を結んだ屋敷の者だが、契約を結んでからこれまで我の想像以上に熱心に仕えているため褒美を与えることにした。クレイヴは事故に巻き込まれて大怪我を負った妹の治療費を稼ぐためにダレアスへ仕えていたようだ。


 屋敷に仕えている者の中にはそういった理由のある者も多い。治療をするついでに領民へわかりやすく見せてやるとしよう。


「す、すげえ! あんなに酷かった傷が一瞬で!」


「あの修道女、ただの聖魔法使いじゃねえぞ!」


「ちょっと待て! まさか、あの綺麗な女性はアデレア国の聖女ミラ様じゃないのか!?」


 領民どもは目の前で奇跡を目撃したかのようにざわめいている。


 どうやら領民の中にはミラを知っている者もいるようだ。


「我の配下である元聖女のミラだ。我が領地に対して多大な貢献をした者に対しては今のように望む者を無償で治療することを約束しよう」


「「「おおおおお~!」」」


 ……今日の中で一番の歓声であるな。まあ、今の魔法を見せられてしまってはそれも当然か。


 ミラから聞いた話だが、人族の中でも聖魔法が使用できる者は希少で、あれほどの大怪我を治療できる者はほとんどいないうえに治療をするためにはかなりの大金を積まなければならない。それを無償で治療してやると言うのだから、こうなるのも当然か。


「……ゼノン様、ミラ様。妹を助けてくれたこのご恩は一生忘れません! この命、この魂が果てるまで、絶対の忠誠を御身のために!」


「あ、ありがとうございました!」


「うむ、期待しているぞ」


「ゼノン様に仕える喜びを今まで以上に噛みしめるとよいでしょう」


 クレイヴとその妹は我とミラに跪き、礼を伝えてから壇上を降りていった。我の方こそ、我に従う利益をわかりやすく領民に見せられたことに対して礼を言いたいくらいである。


 さて、飴の方は十分に見せた。次はムチの番であるな。


「ユルグ、例の()()を用意しろ」


「はい」


 ユルグと屋敷の者が壇上へあるものを運んできた。


「お、おい……あれって……」


「一体これからなにを……?」


 ユルグたちが運んできたもの、それは磔にされたこの街の騎士団長であったヴェルザークであった。


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