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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第10話 捕えられていた者


「ゼノン様、すぐにお怪我を! 『回復(ヒール)』!」


 ミラが回復魔法を発動させると腕の傷がすぐに消えていく。


 右腕を動かすと、今までと同じように問題なく動かすことができた。


「ふむ、さすがであるな」


「お褒めの言葉ありがとうございます。ですが、あまり心配させないでいただきたいです。人族の身体はあまりにも脆弱なので、たとえ魔王様の命令といえど、手を出しそうになってしまいました……」


「心配をかけてすまぬな。我の想像以上に人族の身体は脆いことがよくわかった。これから無茶はしないぞ」


「はい! もしも魔王様が死ねば、ミラもすぐに魔王様のあとを追いますので!」


「……その忠義、見事である」


 若干ミラの忠義が重い気もするが、こんな盗賊くずれを相手にするだけでミラに心配をかけたのは不覚であった。


 魂の収奪によって多数の敵相手ならばこの身体でも長時間戦闘を持続することは可能であることを確認できたが、人族の身体の脆さは課題だ。ミラはすでに人族として転生してからしばらく経っていることもあり、すでに既知のことだったらしい。


 今後はできるだけ距離を保って戦うとしよう。


「さて、残りの者を始末するとしよう」


「はい!」


 残りの盗賊どもはまだ絶望の嘆きによって幻影を見ている。この闇魔法は魔物や魔族よりも人族の方が効果はあるのだが、それにしてもよく効果があるものだ。




「嫌だ、死にたくない! 助けてくれ! ぎゃああああああ!」


 我の目の前で拘束された盗賊がゆっくりと闇の霧へと呑み込まれていく。


「フハハハ、少しだが力が戻ってきたぞ」


 前世よりも遠く及ばないが、20人以上の盗賊を呑み込んだことにより、多少の力は戻ってきた。


「おめでとうございます、魔王様」


「うむ。力の戻る条件についても多少はわかってきたな」


「さすがでございます」


 盗賊どもを順に奈落の暴食で呑み込んでいったことにより、我の力の戻る条件がある程度理解できた。


 呑み込むのは生きたままでも死んだ状態でも変わらず、心臓が存在する胸の部分を呑み込んだ瞬間に力を得ることができる。そして呑み込む者によって戻る力も異なっていた。


 おそらくではあるが、年齢でも身体の大きさでもなく、これまでに犯してきた悪事の大きさによって異なる。そう考えれば、ダレアスや盗賊団の首領を呑み込んだ時に多くの力が戻り、この盗賊団に入ったばかりという男を呑み込んだ時に力がまったく戻らなかったことにも説明がつく。


 とはいえ、偶然という可能性もあるので、これからもできる限りは検証していくとしよう。


「さて、こいつらが蓄えている盗品などをいただくとしよう」


「はい!」


 拠点である洞窟から他の盗賊が出てこないところを見ると、ここにいる盗賊どもはこれですべてだろう。他にも外へ偵察に出ている盗賊どもがいるらしいが、そいつらは戻って来た時に始末すればいい。


 ミラと洞窟の中に入る。洞窟の中には光を放つ魔道具があるので十分に明るい。洞窟の中はだいぶ広く、多くの部屋があった。もしかすると土魔法によって作られたものなのかもしれない。


「ほう、さすがにため込んでいるものだな」


「はい。人族であればかなりの価値になりますね」


 いくつか部屋はあったが、まずは盗賊どもを尋問して聞いた一番奥の首領の部屋へと移動してきた。部屋は洞窟の中なのに贅沢な造りとなっており、金貨や価値のある武器などが乱雑にため込まれている。


 金はあればあるだけいいからな。ちょうど我の物となった領地が金欠のようであるし、ちょうどいい。盗賊の人数は多いため、食料なども多少はあるようだな。


「偵察に出ている盗賊どもは屋敷から来た護衛に任せればいいだろう。護衛が到着したらさっさと帰るぞ。我の力も把握できたことだし、早々に同胞たちを助ける手立てを考えるとしよう」


「承知しました。()()()たちはいかがいたしますか?」


「ふむ、まずは様子を見てみるとしよう」




「ひぃ……」


「お願い、もう許して……」


 盗賊の拠点にあったとある一室。その部屋の中には金属製の牢屋があり、その中には裸の女が5人ほどいた。


 我とミラが部屋の中に入ると怯えた様子で牢屋の奥にうずくまっている。鍵を探すのも面倒なので、葬送の闇鎌によって牢屋を切り裂いた。


「ミラ、治療してやれ」


「承知しました」


 盗賊どもに捕らえられていた女たちは乱暴に扱われていたようで、痩せこけており、身体中に怪我もあった。


「き、傷が!? あ、あなたは盗賊じゃないの!?」


「盗賊どもはすべて殺しました。あなた方を治療し、村や街に返してあげましょう。ゼノン様に感謝しなさい」


「ああ……ありがとうございます!」


「まさか助けが来てくれるだなんて……!」


「ありがとうございます! ありがとうございます!」


 女どもは顔をくしゃくしゃにして涙を流しながら我とミラに感謝している。これまでよっぽど盗賊どもに虐げられてきたのだろう。


 今は我の力が戻り、盗賊どもの金品が手に入って非常に気分がいい。それに一応はこの者たちも我の領地の所有物である。ついでに村や街まで帰してやるか。もちろん面倒だから護衛の者にすべて任せるがな。




「ゼノン様、ご無事ですか!」


 女どもを治療し、拠点にあった水や食料などを与えていると屋敷の者が馬車を引き連れてやってきた。


 グリフォンに比べればはるかに遅いが、馬車なら十分早い方か。


「当然だ。洞窟の奥に盗賊どものため込んでいた金品があるからすべて屋敷へ運べ。それと盗賊どもに捕らえられていた女がいたから、家に帰してやれ」


「承知しました! 夜闇の骸蛇団をたったひとりで壊滅させるとはさすがはゼノン様でございます! そしてなんと慈悲深い……」


「ふん、この領地の者はすべて我の所有物であるだけだ。それと偵察に出ていた盗賊どもがまだいるから、戻ってきたらすべて始末しろ。死体もすべて回収しておけ」


「はい、命に代えましても!」


「「「命に代えましても!」」」


 護衛の者が全員我の前で跪く。契約をしたこともあるが、随分と従順なものであるな。


 盗賊団というだけあって、こいつらの他にもいくつかの盗賊がいる。こいつらを尋問してその情報も得ることができた。


 盗賊の持つ金品を得ることができ、我の力も得られる盗賊の討伐はなかなか益がある。しばらくは盗賊を狩って力を得るとしよう。


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