熊アポカリプス
これはありえなくもない、近未来を予想したデストピアものです。
ある夏の暑い日、小学校の教室。教壇に立った教師が、生徒たちに夏休みの注意事項を伝えていた。
「まず、夕方五時以降、生徒だけで外を出歩かないこと。どうしても必要な場合は、保護者の人に付き添ってもらうこと。みんな、わかりましたかー?」
生徒たちは声をそろえて答えた。
『はーい』
先生は続けて残りの注意事項を告げる。
「次に、日中でも低学年の子は一人で外に出ないこと。必ず高学年の子か、できれば高校生以上の子と一緒に市街地に限ること。プールに行くときは、うっかりフェンスに触らないこと。今の時期は電圧を上げているので、触ったら黒焦げになっちゃうよー」
生徒の一人が笑いながら言った。
「せんせー、そんなバカな子いませんよー」
教室は笑いであふれた。
「まあ、みんなが生まれたころからこうだから、今どきの子は大丈夫か。それで次に──。外に出るときは必ずスタングレネードと小火器の携行を忘れないこと。それと緊急避難ケージの場所を確認すること。わかりましたねー?」
『はーい』
――おそらくこれを読んでいる人たちは当然違和感を覚えただろう。
ここは死の国、四国。正確にいつからそう呼ばれるようになったのかは定かではないが、冗談として使われていた「死国」が現実のものとなり、いまや観光客など来ない。訪れるのは命がけで八十八ヶ所巡りを行う修験者だけだ。
そして一度入れば、出るときには入念な出国検査が行われ、四国の住民が外に出ることはほとんどない。
その始まりは三十年前、たった一つのコンテナが四国に運び込まれたことに遡る。
そのコンテナには「熊を守ろう」と書かれていた。
30年前 ― 第一の分岐点
中型の冷凍コンテナを積んだトラックが四国の山奥を走っていた。
「こんな山奥、走りたくないなぁ…。まあ客の事情は聞かないのがこの業界の鉄則だけど、一体…」
コンテナは指定された牧場跡地で引き渡された。
中には強制的に冬眠させられた5組の熊のペア。
それらは四国の山奥に放たれた。
25年前 ― 第二の分岐点
農家「なんか最近、猪も鹿も猿も減って、害獣駆除しなくてもよくなったなぁ」
狩人「最近大物狩りもないし、ライフル所持許可の維持も面倒だし、散弾銃だけでいいか」
20年前 ― 終わりの始まり
テレビニュース
アナウンサー「これまで四国では生息が確認されていなかったヒグマが、四国山脈で目撃されました。登山の際は細心の注意を!」
18年前 ― 死の国のはじまり
テレビニュース
アナウンサー「山奥の養豚場が熊に襲われ、経営者夫妻も犠牲となる事件が発生しました」
アナウンサー「遺伝子調査により、この熊は北海道のクマ牧場で飼われていたもので、熊保護団体が購入した熊の子孫であることが判明しました。どのように四国へ運び込まれたのかは不明です」
アナウンサー「さらに、この熊は比較的社交性のある熊との交配で品種改良されており、通常のヒグマと異なり行動範囲が狭く、群れを成すという特徴を持っていることがわかりました」
15年前 ― 死の国の拡大
テレビニュース
アナウンサー「増えすぎた熊が山を下り、市街地で目撃される事例が多数発生しています。市民の皆様はご注意ください」
高知県議会
議員「ハンターによる駆除はできないのか?」
ハンター「熊を仕留められるような大型ライフルは、所持許可を持つハンターでも少なく、散弾銃では歯が立ちません。逆に撃った熊が怒ってハンターを襲う事件が起きています」
議員「なら特例で大型ライフルの所持を認めればいいのでは?」
ハンター「可能かもしれませんが、市街地での発砲は禁止されています。外せば二次被害も起きますし、以前北海道で警察の許可のもと発砲したハンターが所持許可を取り消された事例もあり、山以外での駆除は無理です」
岡山県議会または広島県議会
議長「ヒグマの本州侵入を防ぐため、四国からの船舶往来を禁止し、四国を出る橋には検問を敷き、熊が入るサイズの荷物はすべて検閲する条例を全会一致で可決します」
10年前 ― 死の国
国会
議長「あまりにも四国での熊被害が多すぎるため、四国を特別区とし、銃火器の所持規制を解除します。四国は国内にありながら、入国審査・出国検査を要する区域とする特別立法を全会一致で可決します」
こうして四国は「死国」となった。
これ実際に起こった場合を予想したんですが、この世界だと大型ライフル含む
銃火器を解禁できたから、無人地帯になるのはギリ避けれたけど、
現実ならそれはまずむりで、四国の山奥は人間の手が入ってない箇所も多く
猿や猪、山の幸も豊富で、1ペアでもヒグマを放たれたら最後で
駆除したくても探すのが困難で、気が付いたら駆除できるレベルを
超えるという怖い話なんですよねー
ゾンビハザードなら冗談と思えるんだが、熊ハザードについては
現実にあるし、怖いんだよねー
ほら今あなたの前を通って山に向かってるトラック
その荷台には・・・