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向日葵畑と無明の間で“そっ”とさようなら  作者: 豚煮豚


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1/17

終わり


 いつまで経ってもこの世界は変わらない。

変わってほしくもない。

変わっても問題はないのかもしれない。

それでも、この空はこのままでいてほしかった。

今もまだ空はいつも通りの色をしている。

いつも通りになった空の色をしている。

まるで神話のような世界に来てしまった。

文脈的な連続性がない新たな神話の世界に来てしまった。

まだ教えすらもない神様と出会ってしまった。

この世界ではあらゆる物が平等に照らされる。

あらゆる物に平等な価値が発生する。

ここにあるのは悟りよりも前向きな虚無だ。

幸福を許容しただけの悟りだ。

真綿(まわた)腫瘍(しゅよう)だ。

好きな物が好きだった僕はこの世界にも適応することができた。

わからないことはわからない。

それだけわかっていれば十分に馴染むことができる世界だった。

真綿の腫瘍に未だに見られている。

それを示すかのように瞳はまだ低い場所に留まっている。

黒いストローでコーラを飲んでいたときと同じ場所にそれはいる。

薄い光の中では影の中すらも明るい。

薄い光の中では影の中すらも明るかった。


 今日も風車(ふうしゃ)は回っている。

転輪(てんりん)するそれは何度も何度も同じことを繰り返している。

何回も何回もそれをいつもの場所で見ていた。

何度見ていてもなんにもならないのに見ていた。

なんにもならないがなにもないわけではない。

ここに存在しているのは確かに幸福だ。

風車を見ている僕はそれによって幸福になることができる。

自己の中にある幸福を連想することができる。

人間が乗せた幸福がここにはあった。

幸福は人間の中にしかないのだから、それを乗せるのは人間しかいない。

自分の幸福を自分に乗せることができるのはやはり自分しかいない。


 洋上風力発電は未だに世界に必要とされている。

文脈的に正しい物となっている。

世界にとって必要な物であるという文脈で存在することを容認されている。

それはありがたい。

なぜならば風車が好きだからだ。

それ以外の感情はどこにもない。

回っているそれに関する気持ちにはそれ以外の物などない。

そんなことを思っていてもいつかは必ず全てが変わってしまうのだ。

風車もいつかは撤去されるのだろう。

仮に画期的な発電方法が発明されたとしてもそこに残しておいてほしい。

景観としての風車をそこに残しておいてほしかった。

じゃないと自分の存在が否定されたみたいで悲しくなる。

別に環境に興味がない僕は単純に風車が好きなだけだった。


 二人並んでソファーに座りながらローストビーフおにぎりを食べていた。

こんなにおかしなおにぎりを食べていた。

いつもの沈んだソファーで二人でそれを食べていた。

何度味わったとしてもいいような味わいだ。

胡麻油の風味と出汁塩の風味が混ざって口の中に広がる。

あれから何度もこれを買って食べていた。

本当に価値がある物は何度味わったとしても価値が残り続けるのだ。

繰り返す価値がある物を繰り返すことはなにも問題ではない。

繰り返したことによって飽和(ほうわ)してから価値が発生することもある。

飽和した物には飽和した物にしか出せない味わいがあるという物だ。

日常には日常の味があるのだ。

おにぎりを二人で食べることはできている。

しかし、未だにドーナツを受け取ることはできていない。

ドーナツは未だに手に入っていない。

おにぎりを買ってきた僕とは違い、ドーナツを買ってこない彼女がいた。

それはきっとそのドーナツがそこまでの味ではなかったからだろう。

繰り返すような価値がなかったのだろう。

そこに少しの寂しさもあるのだった。


 同じ点に位置することはできないままだった。

同じことを見て、同じ物を食することはできていない。

与えられるのを拒んだ僕は未だに与えられるのを拒んでいる。

与えられるのを拒む理由。

それはきっと日常が変わるのが怖いからだ。

それでも、愛を受け取ろうとはしている。

愛によって自分が変化することは許容できるから。

愛によって不幸になってもそこには幸福の欠片があるから。

愛を受け取らないことによって天使を逃したくないから。

自分が思っていた人間じゃないかもしれない彼女が居たのだ。

愛想を尽かされないようにしなければならない。


「どうしたもんですかね。本当にずっとこのままですね」

「最近はみんなもおかしくなってきたしね。なんか、私までおかしくなっちゃいそうかも?」

「そんなこと言わないでください。きっと大丈夫なはずですよ」

「そうかなぁ。どうにも普通ではいられないような気がしてて大変なんだけど、そうでもないのかな?」

「そうではないことを祈りましょう。体内時計が狂ってしまっているだけです。だから、生活のリズムさえ整えることができればきっと大丈夫なはずです」

「それが難しいんじゃん。まぁ、でも、それはそうだよね。体内時計だよね」

「人間も植物も動物もみんなそれに支配されているような物だと僕は思います。だから、それから逸脱したような今の生活が馴染むわけがないんだと思います」

「それもそうかぁ。じゃあ、この世界が終わってくれないと困るね」

「それは……どうなんでしょうか? 僕にはなにもわかりません」

「そっか。君は変わらなくても生きていけるんだもんね。そういう遺伝と文脈があるからこの環境にも適応できるんだもんね?」

「今のところはそうみたいです。でも、将来的にどうなってしまうのかは今の僕にはわかりません」

「この様子なら後三年は大丈夫そうじゃない? 私はそこまで持ちそうにないよ」

「どうなんでしょうね。他の人と比べるとそこまで大変ではないかもしれないです」

「やっぱり羨ましいなぁ。君にはこういう才能があるみたいだね。変わらないで要られるっていう才能が」

「そうだと思います……それにしても、美味しいですよね? このおにぎり」

「そうだね。私もちょっと見くびってたかも」

「ですよね。また今度買いに行きましょう? 僕があそこへ行ったときは必ず貴女の分も用意しますね?」

「ありがとね。まぁ、よろしく。美味しい物を食べてるときは幸せでいられるからさ」

「僕もそうです。こういった幸福があればそれだけで幸せです」

「私もそうでありたいね。価値があると自分が思った物を大事にしていたい」

「それができたら、きっとこの世界にも馴染めますよ」

「それができないから馴染めてないんだけどね」


 線が太い髪の毛の彼女。

放っておいたままの前髪が乱雑になっていた。

薄い涙袋さえも隠してしまいそうなその長い前髪。

前よりも伸びた髪の毛はなにかを言ってきているようだ。

なんとも思っていない僕になにかを伝えようとしているようだ。

その言葉はきっと前髪の文脈を知らない僕にも理解できる文脈だ。

もっとありきたりで残酷な文脈と結合するような姿だ。

天使だった彼女が人間に近づいている。

ということは、人間だった僕は天使に近づいているのだろうか。

天使に近づいているとしたらどんな神様に仕えることになるのだろう。

そもそも、天使であるはずの彼女はどんな神様の使いなのだろうか。

きっとそれはどこにも居ない神様だ。

人間の心の中にしか居ないような神様の使いだ。

だから、天使になろうとしている僕もその神様に仕えることになる。

自分の心の中に居る神様に仕えることになる。


 未だに解決できてない空の問題。

狂気は顕在化(けんざいか)してきている。

狂気的になりそうだと言っている彼女。

狂気的であることを証明するかのような伸びた髪の毛。

不安定な彼女が狂気的になったとしても愛せるという確信がある僕。

今さらそんなことに狼狽(うろた)えられるほど、世界のことを愛していなかった。

世界のことを愛していない理由は単純に合わないからというだけだ。

世界で面白いと言われていることが面白くないだけだ。

どうせ正気的な物なんて面白くない。

価値があるとされているだけの物でしかない。


 風の中にあるような街だ。

毎日毎日同じような風が吹いている。

それは風が勝手にやっていることだ。

太陽が動いているのは誰のためでもない。

あくまで自分のために動いている。

それによって多くの人、生き物、星が救われている。 

風がない世界なんて成立しない。

だが、風は成立させようとして存在しているわけではない。

風は風車のために吹いているわけではない。

風車は風のために回っているわけではない。

お互いがお互いの利害のためにそれをしている。

つまりは、お互いがお互いに自分の幸福のために生きているということだ。

堕落(だらく)した僕はこの世界で幸福という浅い部分にしか到達できなかった。

しかし、本質が深みにあるはずがない。

本質とは誰しもが持っている物だ。

であるならば、それは必ず浅いところに存在している。

誰しもが手にできる場所に存在している。

苦難のない僕は幸福の成れの果てのような人間だ。

だから、睡眠が浅くなろうともまだ余裕があった。

解脱(げだつ)をしたいわけではなくて幸福になりたいのだ。


 日が暮れてもなお道は遠い。

あらゆる問題の本質は感情だった。

なぜならば感情がない人物には問題なんてあり得ないからだ。

問題だと認識することができない問題は問題にはならない。

人間が問題を問題だと認識することによって初めて問題が発生する。

向日葵(ひまわり)畑は今日も静かに歌っているのだろう。

そして、いつか自分たちが散る日が来ることを思って泣いているのだろう。

散ることを重大な問題だと思って雫をこぼすのだろう。

それでも、みんなで一緒に咲いているのが向日葵だ。

太陽を見なくても生きていける向日葵だ。

境界線の上に向日葵が咲いている。

価値と無価値、そして、意味と無意味の境界線の上で向日葵は咲いている。


――縛脱(ばくだつ)

価値がないほど高価なモナリザ

よりも推しが書いた落書きが欲しい

数千年の歴史がある文化

よりも流行りの歌で踊っていたい

価値があるとされる物、全て

その全てに介在(かいざい)している物

その物の名は、人間性

人間が持つ感情性

ならば、全ての本質は感情

それの中でも尊い幸福

幸福だけを追い求めればいい

幸福の中に被害者はいない

誰もが幸福の中に居ればいい

幸福の中に被害者はいない




応援本当にありがとうございます!!

他にもたくさん同時連載してます!

(ちゃんと書いてます!AI じゃないです!)

もしよかったらみてみてね?


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