第1通:永遠の夜に咲く青春_新たな問題-2
ルーリーは慎重に曾祖父の手紙を広げた。紙は黄ばんでいて、文字は丁寧に書かれているが、どこか切なさを帯びていた。
手紙には、旅人が通る山道の食堂で曾祖父と出会ったことや、そこで起きた硫黄事故が彼女のせいにされたこと…彼女に伝えるべきことがあるといった内容が記されているだけだ
「ここに書かれているのは、昔のことみたいだね……山道の食堂での出会い。曾祖父が、イーウェイに伝えられなかった想いと謝罪を綴っている。」
オウフェイは静かに頷き、金色の瞳を細めた。
「現在は廃墟になっていて、まだ硫黄の匂いが残る場所だ。彼女はそこでアルバイトをしていたらしい。だが、詳しい事情は書かれていない。まるで、過去の記憶の断片をそっと置いていったようだ。」
ルーリーの目が遠くを見つめる。
「窓の外には、永遠の夜の闇が広がっているけれど、部屋の中の灯りが二人の影を長く伸ばしている……まるで古い恋物語の一場面みたいだねえ。言葉にできなかった想いが、空気の中に溶けていくような。」
オウフェイは静かに言葉を継いだ。
「この手紙が示す過去の断片が、イーウェイの居場所を探す手掛かりになるはずだ。」
ルーリーはアレックスの肩に優しく手を置き、少し微笑んだ。
「二人の歩んだ道がきっと道しるべになるさ。時間の長さじゃなくて、想いの深さがな。」
オウフェイも静かに頷き、金色の瞳を細めて言った。
「そうだな。時の流れは長くとも、心の刻みは変わらぬものだ。」
***
ルーリーは古くからの知り合いである長寿種の冒険者に、アレックスをレイロンの元に送り届けてもらった。
郵便ギルドで一番多い配達は、街中の配達。この手の配達は冒険者ギルドと連携し、身元が保証されたものに委託している。そのおかげで正規メンバーは特殊な配達をメインに処理しているのだ。
これは、古くから冒険者ギルドとの付き合いがあるルーリーだからこそできる運営法だった。冒険者にとっても街中配達と言うリスクの少ない範囲で路銀が手に入り、住民にとっても石階段の多いこの街で、体力自慢たちに確実に届けてもらえるのは嬉しいことである。
突発的な事態に応援を得られやすいのも、日ごろのこういう付き合いがあるからだ。