とある店の守護者
日本とは思えない治安の悪さ、怪しい雰囲気で包まれたここ〘五行街〙では今日も争いの起きそうな空気があるが大々的には起きていない。
理由は簡単、4つの極道がこの中央の街を囲み牽制しているからだ。
北の翠命組、東の碧葉組、南の朱炎寺組、西の白銀組彼らは常に互いを睨み静観を守っている。
しかし中央に存在する華やかだがどこか荒んだ中央中華街は一見普通の中華街に見えるが情報屋、武器屋、運び屋と治安が悪い。極道達にバレない程度に今日も喧騒が響く。
そんな中央中華街にある料理店〘麒麟屋〙の店員、龍宮寺 勾遥は今日も忙しく料理を運び皿を洗いそして、店を荒そうとするチンピラを返り討ちにしていた。
カタン
「んっー!店じめはこんぐらいでいいですかね。」
「あ、ありがとうね〜勾遥くん」
仕事も終わり後ろで結んでいた髪ゴムをほどいた。少し髪が伸てハーフアップにしていた、なかなかに似合っているだろう。
「相変わらずきれか髪やね。薄灰色ん髪に黄色ん目、なんか神聖な感じがするわ〜」
「神聖かは分かんないですけどありがとうございます。」
他愛もない会話をしつつ片付けをしていく。ここは〘麒麟屋〙という料理店、従業員は店長である麒島 麟嶺と俺の二人しかいなかった。
「最近お客さんが増えて大変ですね。」
「ありがたかことなんやけどやっぱり二人じゃきつかな〜」
オレンジの癖っ毛で糸目、優しいオーラ全開の博多弁お兄さん。そんな店長とやっていけるアットホームな職場、それに
「はい、今日もお疲れ様」コトッ
そうこれだ、まかないが美味しすぎる。店長は有名な調理専門学校の卒業生でしかも首席だったらしい。本来なら有名なレストランなどに就職するものだと思うのだけど、まあそこは気にしていない。だって
「〜〜!今日は炒飯だ!」
店長の中華がうまい!焦がしネギにチャーシュー、具材はシンプルではあるもののそれが一番美味しい。お米がパラパラで味付けもちょうどよく止まらなくなってしまう。
「相変わらず美味しそうに食べるねw」
「〜、ん実際美味しいですからね。ふぅ、ご馳走様です!」
「デザートもあるばってん食べる?」
ニコニコしながら聞いてきた。答えはもちろん...
「食べたいです!!」
「んふふ〜なんと今日はね〜」
厨房に戻りお皿を持って帰ってきた。
「月餅だ!!」
大好物である月餅が出てきてテンションが更に上る。
「実は常連しゃんからもろうてしまいんしゃい、一緒に食べばい」
「やったああああ!!」
「お粗末様」
食器をシンクに持っていく。 カチャカチャ
「残りのお皿は俺が洗っときますんで先あがってください。」
「ほんと?じゃあお言葉に甘えようかな〜」
「ふんふふーん♪」
元気だなと思った、まあいいことなんだけど。鼻歌を歌いながらるんるんでエプロンを脱いでいる姿を横目で見つつ皿洗いを済ませていた。その時だった
バンッ
店のドアが蹴破られてガタイのいい大人が数人入ってきた。
「おい、ここが例の料理屋か?」
数人を観察すると赤いネクタイに気づいた、朱炎寺組の輩かもな。正直あたってほしくはないが。
「何用だよ、お前ら朱炎寺組の奴らか?場合によってはお役御免になるぞ。...店長は下がってて。」
「わっ分かった。」
少し下がってこちらを伺っている。できれば店の外に逃げてほしかったんだが。
「はっはっは、よく分かったな。...心配はご無用だ、俺らは若頭反対派なんでな。」
まじか、正直当たって欲しくなかったが。3年前、とある事件で朱炎寺組の頭が死に代替わりしてから朱炎寺組の良くない噂が立っていた。やっぱり反発があったんだな。
「俺等の要件は一つ、ここを若頭反対派の拠点にするため撤退を要求する。」
「はぁ、またか。」
ここの立地は一言で言うならば天国だ。中央中華街は情報屋、武器屋などが多くこの店はその他様々味方につけておきたい輩の店が近い。こうやって理由は違えどこの店を狙ってやってくるやつは今までもたくさんいた。でも今回は本当にやばい、反対派とはいえ朱炎寺組と事を構えるの得策じゃない。
「五行街の十二天将である二人がいる限り朱炎寺組とことを構えるのはいい話じゃねえだろ?」
...そうだ、それが正直一番だ。この街、五行街はここ中央中華街を4つの組が囲った場所。しかしかつては組も街もなく完全な無法地帯だった。そんな街を変えたのが〘五行街の十二天将〙。
「おい、そろそろはっきり言えや退くかボコされるか。」
「あー、もうちょっと待てよ。短気は損気だぞ。」
あ、つい言葉選びを間違えてしまった。これじゃ煽ったように聞こえる。荒ごとにはしたくなかったのに。
「...おい言ってくれんじゃねぇか坊主!!」ブンッ
「うぉ!?あっぶな、」
急に殴りかかり俺は慌てて避けた。主犯格(仮)が体制を整えて後ろに下がった。
「へぇ、なかなかやるじゃねぇか。おい!こいつをぶちのめせ!!」
んな無茶苦茶な!!平和に話し合いしようよ!!
「おらぁ!!」ブン
そんな暇ないか...四方八方から拳や蹴りが飛んできた。でも、冷静に
拳が飛んできた、右に避けて勢い余った奴の手を引っ張り蹴りかかってきたやつにぶつける。
その勢いに怯んだやつらに足払いをし転ばせて視線がそっちに行った主犯格の後ろにまわり頭を抑えて地面に伏せさせた。
「もう終わりでいい?」
睨みながら挑発してみた。だてにこの街に住んでいない、これで少しでも怯んでくれれば最高なんだが。
「ひぃ!!」ドタドタドタ
え、まじか。ちょっと睨んだだけじゃん。これ結構行けるか!
「そんな怖かっt」「わーん!!こーよーくん!!」ガッ
「あ、」ドテーン!
喜んでいたところからのいきなり店長アタックに耐えられなかった...正直輩の襲撃よりもびっくりした
「どっどうしましt」「無事!?怪我は!?どっか痛くない!?」
乗っかかってきた勢いのまま質問攻めに合う。目を見るともう泣きそうになっていた。怖いものを見てしまったんだ、しかたない慰めなきゃか。
「大丈夫ですよ。あの程度の奴らに汚させられる俺じゃないですし。」
「でっでも心配やし、客と共に変な輩も増えて心配たい!」
そんなにか。...いや自分を心配してくれる気持ちは素直に受け取ったほうがいいな。
「もし怪我してたら正直に言いますから大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
「...そう?」
疑いの目で見られている、でも本心だ。嘘偽りはない。改めて目を見て言った。
「自分に向けてくれた良い感情は無下にしては行けないと教わったんで。」
「...そっかぁ。」
こうしていつもの夜が過ぎていった。