表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

第八話 依頼の報酬、函崎の勘違い

前回の家に帰宅する途中

「・・・俺、今日ひさしぶりに家帰ろうかな」

「家・・?って今私が住んでる?」

「そこ俺の家だし」

「あ、そっか・・・」

こいつ・・・

一年あって忘れてたのか・・・

居候(いそうろう)分際(ぶんざい)で何を言うか」

(ひど)い・・・」

「・・なんて、冗談だ。お前ももう俺の家族みたいなもんだ」

・・・家族、か・・・

俺の妹は・・今どこに・・・

「龍?どうしたの?」

「え?あ、いや。何でも・・・・それにしても、瑠奈は一年たっても何も変わんないな。身長だって、精神面だって」

「そ、そんな事・・・ないもん・・・」

「ほぉ。なら、例えばどこが変わったのかな?」

と龍は悪戯(いたずら)に微笑み

瑠奈は(ほほ)を赤らめた

帰宅途中

あと十五分ほどで家に着くと言うとこで

龍の携帯に電話がかかった

「もしもし・・・何、依頼・・?この時間にか・・・・わかった。すぐ行く」

「どうしたの?龍」

「依頼だ・・・悪ぃ、瑠奈。ちょっと帰れなくなった」

と言いながら走り去る龍

「あ、ちょっ、龍!」

「俺の晩飯作っといてくれ!」

その言葉を残して龍の背中は見えなくなった

瑠奈はもう!と言って頬を少し(ふく)らませて家に帰った


そして喫茶、太陽

「待たせたな。依頼者は?」

「こちらの方です」

「ど、どうも・・・・」

・・見た目、30代の男性だな

・・・身に着けてる物は、スーツに革靴か・・・

そして鞄と、腕時計・・・

「見たところサラリーマンですね?」

「え、えぇ・・そうです・・・・・・あの・・・」

「はい?」

すこし気にしているように聞いてきた

「・・奇怪な事を解決する方って・・・」

「俺ですが?」

即答で答えた

依頼人から言うとこんなガキが解決できるのか

と言った感じかな・・?

「大丈夫ですよ。俺はあんたよりも場数踏んでますから」

「・・はぁ・・・」

「で、あなたは?」

「私は佐藤(さとう)秀樹(ひでき)、会社員です」

会社員・・・

だとすると、上司か、同僚か・・・

「俺は火炎龍だ。よろしく。それで、依頼は?」

「・・私の、息子の事で・・・」

「息子さん?・・息子さんがどうかしたんですか?」

「それが・・・」

佐藤さんは一度息をついて

話し始めた

「・・私の息子は小学校の中級生なんですけど・・好き嫌いが多くて、給食でも弁当でもよく残していたんですが・・・最近は何でも食べるようになったんですよ・・・」

「それは親として喜ばしい事なんじゃないんですか?」

「・・えぇ・・・ですが・・・変、というか・・異常なんですよ・・・なんでも食べる、残さない、といっても・・・生ゴミすら食べてしまう事に・・・」

!!

生ゴミすら・・・

「ずっと、一日中、何かを口に入れていて・・・それに、いくら食べていてもぜんぜん太らないんです・・・むしろ痩せていってる!でも本人は全く気付いていない・・・」

龍は手をあごに当て考えた

何か思い当たるようだ

「・・・生ゴミすら食べる・・・・・一日中食っている・・・・・なのにどんどん痩せていく・・・」

・・・心あたりはある・・・

きっと、そうだ・・・

「・・わかりました。じゃあ明日のこの時間にまた、ここにいらしてください。息子さんも連れて・・・」

「・・・・はい・・・」

龍は紙を取り出して何やらを書いた

「じゃあ報酬はこんなもんで」

「・・こんな、持ってないですよ!」

そしたら違う紙に何か書いた

「ならここへ行ってください。ここで・・・取り扱っていますから」

「ここに行けば・・・・もらえるのか?」

「はい、必ず。俺の名前を出せばいくらかまけてくれるでしょう」

「・・・わかった・・・」

佐藤さんを喫茶の扉近くで見送った

「鎌鳴」

「なんですか?マスター」

「明日、頼めるな。妖怪・・・」

「マスターの命令とあらば何でも」

命令か・・・

ちょっと違うんだがな

「じゃあ、切り裂け」

「了解いたしました」

その返事を聞いた後

龍が扉のノブに手をかけると

扉が開き函崎が入ってきた

そして入ってきた途端、龍の胸倉をつかんだ

「何なんだ・・・」

「おい炎!!今の会話は何だ!?」

「会話ぁ?」

「何なんだ!!今のは!!?」

今のってもな・・・

ただの取引なんだけど・・・

そんな状況の中で再び扉が開いた

「こ、こんばんわ・・・」

以前の依頼者がいた

「猪原か、久しぶりだな」

「えぇ・・・・あの、どうしたんですか?」

猪原の見た光景は

龍の上に知らない男性がまたがり

胸倉をつかんでいる・・・

ある意味いじめだな

「いや、特に意味はない。放せ、暴行障害で逮捕するぞ?」

と手錠を見せると少し顔が蒼くなり

函崎は手を引いた

「で、どうした?またなんかあるのか?」

「あ、いえ・・依頼成功していただいて、あの、お礼を・・遅れてしまいまして・・・」

と手に抱えていたバスケットを差し出した

そのバスケットには果物がたくさん入っていた

「あぁ、この前の報酬か」

「はい。家に無かったので、集めるのに時間がかかってしまい・・・」

そんなにかかったか・・・

「ふん、ふん、ふん・・・・・うん、そろってるな。じゃ、これはサービスだ」

と言ってリンゴを猪原に投げ渡した

「え、いいの!?」

「おぉ!これが俺のやり方さ。報酬の中からいくらか依頼人に分けるってのがな」

「ありがとう・・・」

「じゃあ、もう遅いし、帰んな」

時刻はただいま18:38

「はい。ではまた、何かあったら頼みます」

「うむ」

「では・・ありがとうございました」

そして猪原帰宅

「聞いたか?今の」

「だ、だからってさっきのやり取りが消えるわけじゃ・・・」

「依頼の報酬だよ。それに珈琲(コーヒー)を報酬に要求しただけだ。金なんかじゃねぇよ」

「・・・・証拠は・・?」

証拠・・・

裁判ですか

お前は検事ですか!?

「鎌鳴、証言しな」

「はい。確かにマスターは報酬としてコーヒー豆を要求してました。録音もしてます」

念のため言って置くが

録音は記録のためである

俺が誰にどんな依頼を受けたか、それを記録するのが鎌鳴の仕事だ

鎌鳴はその録音した物を函崎に聞かせた

そして最後のあたり

『「じゃあ報酬はこんなもんで」

「・・こんなモノ持ってないですよ!」

「ならここへ行ってください。ここでこの豆を取り扱っていますから」

「ここに行けばそのコーヒー豆をもらえるのか?」

「はい、必ず。俺の名前を出せばいくらかまけてくれるでしょう」

「・・・わかった・・・」』

それを聞いて函崎は笑った

「ははは・・何だ・・・俺の勘違いか・・・」

そして龍のほうを向いて謝った

「悪ぃな、炎。変な言い掛かりしちまって・・・」

「いや、わかればいい」

龍は微笑みながら言い

そのあと、鎌鳴の方を向いた

「じゃあ鎌鳴、俺は住んでた家にまた住み始めることにしたから、ここで寝泊りする事は無くなる」

「そうですか。わかりました。・・喫茶(ここ)にある私物(もの)は、処分いたしますか?」

「んー・・・いや、とりあえず取っときな。何があるかわかんないからさ」

その「何が」は

もし自室の物が無くなっていたり、破損していた時の事だろう

つまりはそれらを予備にする気だ

「わかりました。それでは、また、明日(あす)に」

「おぉ!また明日!」

龍は笑顔を残し、喫茶から家に帰った


「お前、何で来たんだ?」

帰宅中

龍は函崎に聞きそびれた事を聞いた

「あ、いや。今日何か俺の父さんと母さんが喧嘩してさ、居心地悪かったから出てきたんだ」

「いやそれなら帰れよ」

「もう外で食ってくるって言っちゃったから・・・・今更・・・」

と函崎は頭を()きながら答えた

龍はやれやれとため息をつき

「しゃあねぇなぁ・・・今日は泊まってくか?」

「いや、さすがにそこまでは・・・」

函崎は本当にそのつもりは無かったのだろう

泊まる気なら何かしらの準備をしていただろうから

それにきっと親からの許可も無い

「居辛いんだろ?だったら一晩くらい・・・それに、多分お前の親も二人だけで一日かけて頭を冷やす必要があると思う」

よくわからないが函崎は納得してしまった

まぁしてもしなくてもどっちでもいいけど・・・

「・・だけどな、俺がいないと、あの二人いつまでもケンカしてんだ」

さっきは居心地悪いって言ってたくせに・・・

「じゃ、飯食ったら帰るのな?」

「・・あぁ、帰る。あの二人を仲直りさせないと」

函崎はその両親にとってクッションなのだろうか

そのクッションを置いて仲直りをするって感じかな

「・・了解。じゃあ早く帰って瑠奈の手料理食べるぞ!」

「今日は櫻井が作ってるのか?」

「あぁ。依頼が入ったからな。初めての瑠奈の手料理だ」

うまいだろうな

と龍はウキウキしながら帰った

「ただいまぁ!」

「おかえり。龍、ご飯・・・あれ?函崎くん。どうしたの?」

龍と函崎は説明をした

「・・そうなんだ・・・よかった、今日お鍋にして」

「鍋?何鍋?」

「石狩鍋だよ」

「へぇー、俺食ったこと無いわ」

そりゃあ北海道石狩地方の郷土料理だもんな

北海道行かなかったら食えないと思うぞ

「鍋かぁ・・・俺鍋自体食ったこと無いかも・・・」

龍、新事実発覚

鍋を食ったことが無かった!!

「ま、マジか・・?」

「・・・鍋を使って汁物作ったり雑炊作ったりはした事あるけど、何鍋ってのは食ったことないな・・・多分・・・」

・・多分食った事はあるんだろう

でもそれを鍋として認識していないんだろう、きっと・・・

「じゃあ鍋デビューだね!」

鍋デビューって何だ!

という顔だな

「じゃあいただきます!」

そして一口食べてからの龍の第一声は

「・・・やっぱ食った事あるわ」

だったとさ

やっぱりあったか・・・


第八話 終

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ