第六話 再びのフェスティバル!
「えー・・あー・・・・・・・・・出し物決めるぞ」
「何のだよ!!」
龍のやる気無き言い方に突っ込みを入れたのは函崎だった
「知ってるだろ?クリスマスパーティーだよ。ク・リ・パ」
「いやでもこれを見てる(または読んでる)人たちがわからんだろ!」
「何のことだよそれ。誰がわかんねんだっての・・・・・とりあえず、決めるぞ、出し物」
現在11月30日
クリパ開始は12月13、14日
二日連続で行われる
クリパまであと二週間
ちなみにその二日後から冬休み
「案はあるか?」
「てかその前になんでそんなやる気ねぇんだ?」
「あー・・なんてぇか・・・・・だりィ・・・」
「!!!」
クラス中のみんなが驚いている
その理由は普段の龍がやたらと元気だからだ
いつもの龍なら・・・
『さっさと決めろ!あと二週間しかないんだぞ!!決めねぇと俺が決めちまうからな!!』
『えぇー!?んな勝手な・・・』
『なら今日中に、今すぐ決めな!』
と、まぁ騒がしく賑やかでうるさい教室になるからだ
なのでこれは生徒の間では・・・
「あ、嵐が来るのか!?」
「て、天変地異が起こるのか!?」
となってしまうわけで・・・
てか失礼だろ
「えー・・・とりあえず・・・俺の代役を呼んでる・・・・入れ」
「おはようございまぁす♪」
入ってきたのは薄青色の長髪でラフな服を着た女性
ちなみに地毛です
その人を見て半分以上の男子が目を輝かせた
「・・・誰?」
誰とは失礼な
「えーっと。私の名前は瑞浪氷柱。龍君の代役としてやってきました」
ちなみにとある旅館の若女将
これでも和服が似合います
その説明が終わったあと
男子の口々からとある言葉が出てきた
「・・龍、君?」
「ど、どういう?」
「どういう意味だ、またはどういう関係だ、だね」
それを言ったのは氷柱だった
氷柱も龍とどうように心が読めるらしい・・?
「戦友、だよ」
「・・え?」
「あぁ・・氷柱も俺と同じなんだ・・・」
「お、同じ・・?」
意味がわからないようだ
その意味は一つなのだ
「俺と同じ、ドラゴン。人とドラゴンの間に生まれた子なんだよ・・・」
龍は静かに、はっきりと答えた
そしてその意味は・・・
「ま、マジで!?」
と一人の男子が大声で言うと
「いデッ!!?」
「うるさい」
龍がチョークを飛ばした
そして男子の額にあたり
あたった場所が軽くこげていた
ちなみに気絶はしてない
「い、ててて・・・」
「だ、大丈夫か?」
「いたい・・・何すんだよ先生・・・」
「騒いだ罰。公開処刑。次は貫通させる」
その貫通という言葉を聞きクラス中の血の気が無くなった
顔色悪ッ!!
「龍君。そういう事いっちゃダメ!」
「はいはい・・・」
「あの、えっと、瑞浪さん?」
それを言ったのは瑠奈だった
何かを聞きたいようだ
「氷柱」
「え?」
「氷柱でいいよ」
「え、と・・じゃあ氷柱さん。聞きたいことがあるんですけど・・・」
と瑠奈が聞こうとしたとき
「年は!?」
と馬鹿野郎な男子が聞いてきた
「私?私はねぇ、えっと・・・何歳だっけ・・・・・あ、そうだ。923歳」
「キ・・・」
龍との差
約300歳
「・・そんなに驚かなくても・・・」
「お前の容姿じゃ十代、二十代にしか見えねぇからな・・・」
「それは龍君もそうでしょ?」
龍は机に顎を乗せて言い
それに氷柱が振り向いて答えた
「とりあえず、クリパの出し物、よろしく。あ、いかがわしいような事があったら・・殺す気で」
「わかった」
「うぉい!!!」
男子たちからの突っ込みだ
うるさいので制裁を
「イデェ!!」
龍からの超チョーク投げで
ちなみに超チョーク投げとは
本来のチョーク投げとは違い高速回転が加わり額に当たると回転しながら吹っ飛ぶこともある
ちなみに焦げてる上に血が出てる
そしてとってもいたい・・・
「黙れ!!」
その声には死を感じさせる物と殺気があった
目を見るとやばい・・・
死にそうと思う・・・
「俺寝る。うるさくするな・・・」
「おやすみなさい。早く熱上げてね」
「ん・・・zzz・・・」
その言葉にみな意味がわかってないらしい
「熱、上げる・・?」
「あ、うん。龍君今日風邪なの。学校来ないほうがいいって言ったのに来ちゃって・・・・熱、というより温度が40度しかなくて・・・」
「それは違うんじゃ・・・」
「あ、ううん。違わないよ。私たちはドラゴンでしょ?だからちょっと人と違うの。龍君は炎のドラゴンだから体温が通常の人より高いの。ちなみに70度くらいね。だから風邪になると体温が下がるんだよ」
それは・・・
普通なのだろうか・・?
よくわからん・・・
ちなみにドラゴンは体温が高い時から急激に低くなると風邪になります
「そんな事より。うるさくない程度にクリスマスパーティーの出し物を決めましょう。校長先生には許可を得てるから大丈夫だよ」
「その前に聞きたいことがあります。殺す気でって・・どういう意味ですか・・?」
「そのまんま。例えば水で顔を覆って窒息させたり水を氷に替えて造形して頭をかち割ったり裂いたり斬ったり首を捥いだり血肉を裂いたり骨が見えるまで擦りまくったり・・・・・・・みたいな?」
「み、みたいなって・・・」
それを聞いて静まりました・・・
とそんなこんなで決めることになりました
「何にしますか?」
と氷柱がたずねると手を上げたのは中山だった
「喫茶、とかは?」
「喫茶?」
「はい。去年と今年の学園祭にもやったんですけど、楽しかったので」
「なるほど。確かに楽しいかもですね。でも、今年はダメなんです。今年は喫茶店をやるクラスが多いようなのでもう受け付けないそうです。だから違う物を選んでください」
全クラス&クラブ25組で9組が喫茶です
これ以上やると客入りが減るんです・・・
「お化け屋敷、なんてどうだ?」
「お化け屋敷・・この時期にですか?」
「いやいや。この時期だからこそ、ってのもありますよ」
お化け屋敷は夏かハロウィンの時期だと思う
この時期だからこそ、というのは・・・
どういう意味なのだろう・・?
「この時期に、気になるあの人を誘ってお化け屋敷に行く。そうしてその人を驚かしたりするとその人は腕にキュッとつかまってきたり、って感じのドキドキハプニング満載のお化け屋敷。そんなのはどうだろうかってね」
ドキドキハプニングと一緒に下心も満載なお化け屋敷だこと
その言葉に男子たちは大盛り上がり
中には心中であわよくばとも考えている大バカ者がいる
「何だ・・お化け屋敷すんのか・・?」
その盛り上がりようで起きたのか
机に伏せていた龍が半目で生徒たちを見回した
「お、炎・・起きてたのか?」
「いや・・・眠りが浅くて、わりと聞こえてた・・・」
あー・・・
なんてったっけ・・・
えっと・・・
明晰夢・・・?
いや違うな・・・
・・・まぁ、いいか・・・
「龍君、大丈夫?温度上がった?」
「あぁ・・寝たら、ちょっと上がったわ・・・・・で、お化け屋敷すんのか?」
再度尋ねる事になってしまった
だが、まだ決まったわけではない・・・
だからかみな顔を見合わせたり伏せたりと視線が違う方を向いていた
「・・・・まぁ、やるにしても、やらないにしても、どっちでもいいけど・・一つ、俺の小話を聞かないか?」
「小話?」
「何それ」
「私聞く♪」
口々にいろいろ言っているがそんなの気にしていない
龍は喋り出す
「じゃあ、雰囲気でも作るか・・・」
と言った瞬間
部屋は薄暗くなり霧が出てきた
そして妙な寒気があった
「んじゃ、聞いてもらおうか・・・俺の小話・・・」
そして始まった
龍の小話
「題は・・夜に泣く、赤ん坊
ある、薄暗い夜・・男が山道を小走りで通り抜けようとしていた・・・
その夜は月明かりにのみ照らされ、薄い霧が立ち込め、妙な寒気を感じる夜だった・・・
その時、男は何かの『声』が聞こえる事に気付いた
男は立ち止まり、その聞こえる『声』に集中した
その『声』は林の向こうの獣道から聞こえる・・・
そう気付くと男はその獣道に向かって歩き出した
近づけば近づくほどに大きくなる『声』
それは赤ん坊の泣き声だった・・・
んぎゃー、んぎゃー、んぎゃー・・・
そして男はその『赤ん坊』に近づいた
その場は月も当たらぬ暗がりでよく見えなかった・・・
男は思った
こんなところに赤ん坊が一人でいる・・・
捨て子だろうか・・・
こんなところにいては死んでしまう
一度村に送ってやろう
そのあと、引き取る人を探せばいい
男は『赤ん坊』を背に負い、また村へと歩き出した
でも『赤ん坊』はずっと泣いている
男もあやしてみるが泣き止む気配はない
それでも一生懸命あやし続けた
そのうち違う『音』が聞こえてきた
ズシッ・・ズシッ・・・
その『音』はすぐ近くでなっていた
ズシッ・・ズシッ・・・
その『音』と共に背中も重くなっていく・・・
なぜかはわからない
『赤ん坊』はずっと、ずっと泣いている
そして・・・
耐え切れなくなった男は倒れ、そして胸の辺りに大きな風穴が出来た・・・
その時、『赤ん坊』に月光が当たった
その姿は小さなおじいさんのようだった・・・
その者の名は”子泣き爺”
人に負ぶさり、泣き声と共に岩が如く重さになり、人を殺す妖怪だ
そして月のあたらない場所で・・また泣き始めた・・・
『赤ん坊の泣き声』で・・・」
小話が終わり辺りが明るくなった
「これで俺の小話は終わりだ。どうだった?」
「な、なんか話しと同様の声とか痛みとか感じたような・・・」
「それは俺の幻術だ」
「げ、幻術・・?」
幻術とは・・・
妖怪、魔物、魔術師、陰陽師など
何かしらの術を使える者たちによる幻を見せる術だ
この術は敵の五感、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、全てに訴えかけそれを実体験させ
精神的に敵を殺す術だ
これをかけられた敵は基本的に精神が乱れ正常に機能しなくなる
そうすると何も無いところで幻覚を見たり、幻聴が聞こえたり、異常行動をしたりする
「まぁでも。あの精神を破壊するような幻術を見てなお、意識を保っている。・・・よし!お化け屋敷の許可を出そうか。みんなやる気ならな」
「おぉ!!」
「よっしゃー!!!」
と喜ぶみんな
しかし再び辺りが暗くなり
「さぁわぁぐぅなぁ・・・」
と後ろから男の子の生き霊が抱きついてきた
生き霊というのは魂だけの人間
人の形をしているが触る事は出来ない
触ろうとしたら呪われると言う
「ぎゃーーーーーーー!!」
さらには教室中化け物だらけ
「ははははは・・・!!!」
と龍の笑い声と同時にそれらは消えた
幻術だったようだ
「龍!なにするの!?」
「あ、いやいや。騒いだ制裁のつもりだったがこれは面白いな!最高!!」
と机に座り大笑いしながら言う龍
これを聞いたみんなは
「龍、最低」
「見損なったぜ・・・」
「こんな人だったんだ・・・」
「大嫌い!!」
と口々に言っている
しかし龍は平気な顔をしているようだ
なぜだろう・・・
「・・別に嫌いでいいさ。俺はもう、誰も愛することは出来ないんだから・・・」
それを聞いてみんな静まった
そうだ・・・
龍は人を愛せなくなったんだ・・・
「・・・・・・・そ、そういえば龍君。風邪、大丈夫?」
「おぉ!みんなの恐怖する顔見て笑ったらなんか温度上がってきた!」
「外道だ!!」
「あきらめな。俺はこういう奴だよ。ほら、さっさと配置を決めるぞ。今回、お化け屋敷のテーマは『妖怪』だ!」
そうして決めることになった
それぞれがそれぞれの配置で準備を始めた
「二週間後は、クリスマスパーティーだ。楽しもうぜ!」
「おぉ!」
第六話 終