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さて。

塔への道すがら、私はマーヴィン様を褒めまくっていた。



いや、別に褒めまくろうと思っていた訳ではないんですけど。

でも、私の婚約者様は、悪いところが見当たらないので、褒めるしかないんですよねー。

あと褒め言葉をケチらない、思ったら口から出す!

を信条に話していたら、こうなってしまった訳でして。



それでわかった事としては、女神様に似ていない部分は、褒めても響かない様子という事。


例えば、「キリリとした眉が素敵ですね」と言ったら、困惑気味に、「ご冗談を……」と返される。


私が二重顎褒められた時の心境と似てるかな?


いや、私は相手が本気で二重顎に美しさを見出している事はわかっている。

でもマーヴィン様は、私が眉を褒めても、本気で言ってるのか冗談で言っているのか、判断出来ないはず。

だから、やっぱり私の心境とは違うかも?


まぁ、褒められても全くピンとこないのは同じだろう。



なので、とりあえずそれ以外を褒めることにした。

「薄紫の瞳が本当に綺麗です。初めて拝見した時、マリアライトのようだと思いましたの。」とか。

「お手紙ありがとうございました。

マーヴィン様の書く文字は角がきっちりしていて、お手本のようですね。

私の文字は丸くなってしまって…」とか。


マーヴィン様は、顔を真っ赤にされながら、

「あ……えぇ、と、ありがとうございます…」

と御礼を言ってくださったり、

「ルシア嬢の文字も、お綺麗ですよ。少し丸いところも、愛らしいですし…」

と褒め返してくださったりする。



イケメンの照れ顔、最高。


マーヴィン様との時間を満喫した私だった。




楽しく歩いていると、マーヴィン様の塔が見えてきた。




塔、と聞いて、漠然と、長い階段の最上階に部屋があるような建物を想像していたのだが、実際は、2階建てのお屋敷に、4階建てくらいの塔がくっついているような作りの建物だった。



普通に考えたらそうよね。


長い階段のてっぺんにしか部屋がないとか、不便だもの。

軟禁用とかじゃなきゃ使わないよね。




建物の入り口が見えたあたりで、マーヴィン様がぴたりと止まる。


なんだか険しい顔で、前方を睨んでいらっしゃる。


どうしたのかと視線の先を伺うと、入り口に2人、人が立っているのが見えた。








何という事でしょう。


私の目の前に、イケメンが3人も……!!


マーヴィン様は、神が作りたもうた芸術品レベルのイケメンだが、それに匹敵しそうなレベルのご尊顔が、他に2人もいるとは!!!!



五体投地で拝み倒したい心境だが、やったら完全に不審者なので、令嬢の微笑みを顔に貼り付けて、私はソファに座っていた。



マーヴィン様の塔の前に立っていらしたのは、マーヴィン様以外の魔法使い様だった。

なんでも、マーヴィン様の婚約者となった私にご挨拶を、と待っていて下さったらしい。



ありがとうございます!!!!

心の中では大歓喜の私である。


マーヴィン様は嫌がったが、そんな事言わないで。せっかくだから皆でお茶でも。と黒の魔法使い様にニコニコ笑顔で押し込まれ、現在は4人、塔内のリビング的なお部屋でティータイムをしている。


マーヴィン様の家には使用人がいないとの事で、目の前のお茶は、私が手土産に持参した紅茶をマーサが入れてくれたものだ。

飲み慣れた味のお茶に、ほっと一息。


「さすが侯爵家ですね。いつもと比べものにならないくらい美味しいですよ。」

にこやかに紅茶を絶賛してくれたのは、黒の魔法使いこと、アドルフ・スタイナー様。


スタイナー様が得意なのは防御魔法。

ご年齢は28歳。既婚で、お子様が3人いる。

ここまでは事前に調べていたのだが。

見た目については知らなかったよね……


スタイナー様の見た目は、一言で言うと婀娜やか系だ。


色気の権化よ。


形の良い眉は、平行やや下がり程度。

目は切れ長の垂れ目で、羨ましいほど長いまつ毛に縁取られている。

肌は白くきめ細やかで、髪は紫がかった黒。

ゆるいウェーブを描いて耳にかかる、長い前髪。

そこからちらりと覗く、目元の黒子と、猫のような金目。


筋の通った高い鼻と、形の良い艶のある唇。




大人の色気すごい。





マーヴィン様がもちろん一番だけれど、あまりの色気にドキドキするわ。




「ありがとうございます。マーサが入れてくれる紅茶はいつも本当に美味しいのです。」

そう答えつつ、何とか心臓を落ち着けようと、ふたたび紅茶を飲む。




ちらりと、もう1人の、緑の魔法使いこと、イーノック・オッグ様を伺う。


治癒魔法を得意とする彼は、まだ20歳だが、天才魔法使いと呼び声高い存在だ。

そもそも、治癒魔法が使えるというのは、とても貴重な事らしい。

オッグ様はその中でも、治癒できるレベルが高く、腕や足が無くなっても、ふたたび生やすことができるとか。


こちらは、見た目としてはアイドル系とでも言おうか。

可愛い&イケメンである。


細い眉は、キリッとした上がり眉。

目は、丸くて大きめの垂れ目で、翡翠のような、鮮やかな緑色をしている。

スッと通った鼻筋に、小さめの小鼻。

髪はグリーンシルバーとでも言おうか。

光の当たり具合で、淡いグリーンに光る不思議な色をしている。

肩上くらいの長さで、毛先がエアリーにふんわりしていて。柔らかで、触り心地が良さそうだ。


撫でたい。

いや。撫でないけど。

落ち着くのよ私。ステイ。ステイよ。


心の中の変質者を鎮める。



首を振って、マーヴィン様を見ると、目が合った。

にっこり笑う。



大丈夫ですよ。

マーヴィン様のキリッとした雰囲気とお顔が、一番好みですので。

白玉が何言ってんのって感じですね、わかります。


あ、紅茶は渡したけど、ハンカチはまだ渡していなかったわ。

せっかくソファに座っているし、今渡して開けてもらおう。


そう思ってマーサをチラリと見ると、すぐさま、ラッピングしたハンカチが手元に届いた。

お礼を言って受け取る。

マーサは本当にできる侍女である。



「こちら、私からのプレゼントです。気に入っていただけたら良いのですが…」


そっと差し出すと、マーヴィン様は驚きつつ受け取ってくださる。

赤く染まる耳と目元が最高です。


「ありがとうございます。気が回らず、頂いてばかりで申し訳ない。」

「いえ、マーヴィン様の塔にお邪魔させて頂いているのですから、それで充分ですわ。」


マーヴィン様は、プレゼントを嬉しそうに眺め、その後丁寧にラッピングを外していく。

嬉しそうにしてくれるのはとても尊いけど、ハンカチで大丈夫だったかな!?


なんかどでかい宝石がついた貴金属とかの方がよかった!?!?





もっとしっかり貢ぐべきだったかと不安になったが、ハンカチを取り出したマーヴィン様の微笑みに、そんな不安は一瞬で吹き飛んだ。



「アルファとデルタのこと、よく覚えておいでですね。そっくりだ。」


そう言って、優しげな笑顔を浮かべたマーヴィン様。


それは、神々しいほどに美しい瞬間だった。

心臓が鷲掴みされたように痛い。


ドッドッドッと、自分の鼓動の音しか聞こえない状況下で、しかし、私はなんとかその瞬間を網膜に焼き付けようと必死だった。


心のアルバムに永久保存確定だ。


というか何でこの世界カメラないの!?!?

今のマーヴィン様を撮影せずして、何か他に撮影すべきものがありますか!?!?!?


今こそ、後世に残しておくべき瞬間だったでしょうが!!!



カメラを開発できなかった己を心底責めつつ、脳内のアルバムには全力で保存する。

未来永劫、思い返してニヤニヤするのだ!

うなれ、私の脳細胞!!



「ありがとうございます、ルシア嬢。」


マーヴィン様の美声に、ハッと頭を再起動させる。


「とんでもございません。ええと、喜んで頂けてホッといたしました。

可愛すぎたかと、心配していたので…。

もし良かったら、使いやすい構図やお好きな色など教えてくださいませ。」

何とか、ニヤニヤを引っ込めて返事をする。

マーヴィン様は、私の返事に虚をつかれたような顔をした。


…あんまり、刺繍とか興味ない感じかな?

好きな構図とか聞かれてもわからないのかも。


「すみません、今までこう言った事がなく、好きなものが咄嗟に思いつかなくて……」

マーヴィン様が申し訳なさそうにおっしゃって、私も申し訳なくなる。

「いえいえ!

私も、お父様やお兄様にしか刺繍した事がなくて……男性が使いやすい構図などが思いつかなかったのです。」


お父様とお兄様は、私が刺繍したものならなんでも喜ぶ。

なんならただの丸とかでも取り合うレベルで欲しがるので、参考にならないのだ。


しかし、そうか。

こういった事、無かったのね。

そうよね。お互い、初めての婚約だもの。

マーヴィン様のはじめて……



何となく気恥ずかしく、視線を下げた。

マーヴィン様も何も言わず、なんだか困った空気になってしまった。


どうしましょう。


もじもじしていると、アドルフ様が助け舟を出してくれた。

「オードニー嬢に刺繍して頂けるなら、皆、なんだって嬉しいですよ。お上手ですね。」

ありがとうございます、とお礼を言って、ふと気がつく。


アドルフ様は既婚なのだから、刺繍入りのハンカチを貰い慣れているはず。

男性らしいデザインなども、わかるのでは?


「アドルフ様の奥様は、どのような刺繍をされるのですか?」

期待を込めて見つめると、アドルフ様は、うっと言葉に詰まって、少し気まずそうに頭をかいた。


「……うちのは、あまり参考にならないと思いますよ。」

そう言いつつ、ハンカチを渡してくださる。

マーヴィン様と、オッグ様も、興味がおありなのか身を乗り出してきた。


丁寧に広げると、王都では珍しい、幾何学模様の刺繍が目の前に広がった。

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