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それから数日。


ついに、マーヴィン様の塔へ行く日がやってきた。


この日、私は朝からお風呂に入り、侍女たちに身体を磨き上げてもらった。


本日はアルファちゃん達に会える予定なので、ドレスではなく、白いブラウスと、ライトブラウンのワンピース姿だ。

出来るだけ、マーヴィン様の髪と同じ色を探してみました!

ブラウスの襟とワンピースの裾には大きめのレースが付いており、胸元にはピンクのリボン。

スカートはチェック柄である。

うん、服だけ見てると本当に可愛い。

自分が着ると、スタイルのぽちゃさが際立って嫌だけど。

マジで痩せたい…

でも、痩せたら親に泣かれるんだよねぇ……


というか、これ可愛い?

白玉おばけじゃない??


不安になって、マーサに確認したが、

「お嬢様は何を着ても、本当によくお似合いです!女神が舞い降りたかのようですわ!」

と言われた。


両親もだいぶ酷いけど、マーサもちょっと、身内贔屓が入っていそうよね。

もうちょっと客観的な……一般的な視点がほしい今日この頃である。


まぁ、仕方ない。

私は美人、私は美人、私は美人。


この世界的には美女らしいのだから、全く実感はないけれど、この武器(見た目)(?)を利用して、少しでも気に入って頂けるようにがんばるぞ!!


支度ができたので、プレゼントの刺繍入りのハンカチを持って、いざ、王宮へ。





王宮に着くと、馬車用のエントランスに、マーヴィン様の姿があった。

出迎えに来てくれたらしい。


侯爵家(わがや)の馬車を見つけると、寄ってきて手を差し出してくださる。


日光に照らされたライトブラウンの髪。

淡い紫色の瞳は本日も大変美しく、私が満面の笑顔でマーヴィン様の手を取ると、眉尻を少し下げ、ほんのりと頬を赤く染められて、困ったように微笑まれた。


ひええええええぇぇ

麗しいぃぃ〜〜……


キラッキラに輝くマーヴィン様に、灰と化しそうな私である。


これ無理でしょ。

この芸術的イケメンの前では、私は白玉でしかない。

間違いないわ。



心の中では降参の白旗をブンブン振りつつ、なんとか挨拶をする。

「ご機嫌よう、マーヴィン様。

お出迎えに来て頂けるなんて!とても嬉しいです!」

私の言葉に、マーヴィン様は困り笑顔のまま視線をそらされた。

「……魔法使いの塔は、少し奥まった場所にありますので。ご案内いたします。」


先程、馬車から降りる時に貸してくださった手をナチュラルに離されて、マーヴィン様は、私の斜め前、護衛がとるような位置に移動した。



うん?


なんでその位置??




エスコートする気はない感じかな?


前回、2人きりで庭園を歩いた時は、きちんとエスコートしてくださったのだが。

ここは王宮のエントランスなので、そこそこ人目がある。

今も、チラチラと視線を感じるので、おそらく、これ以上目立たないよう、エスコートを避けようとしているのだろう。



しかし。


私たちは、間違いなく婚約者同士なわけだし。

ここでエスコートがないというのは、不仲を疑われる理由になる。


私としては、むしろ仲を見せつけてやりたいわけで。



私は、全く何も分かりません、という無垢な顔を貼り付けて、エスコートして貰うべく、手を差し出した。


渾身のきょとん顔を向ける。

私、箱入り娘なので、エスコート無しで歩くなんて、できませんわ。

とか言い出しそうである。


実際は独り歩き余裕ですけども。



そんな私を前に、マーヴィン様は何か眩しいものでも見てしまったかのように顔を顰め、ほんの少しの逡巡の後、私の隣までやってきてくださった。


そっと手を差し出されたので、笑顔で手のひらを重ねる。


「ありがとうございます。」

笑顔でお礼を言って、一緒に歩き出す。


マーヴィン様って姿勢がとても良いのよね〜。

背筋がピンと伸びていて、どの角度から見ても素敵。


でも、できればこうやって真横から見ていたいな。

この位置にいられるのは特別だから。



そう思いつつ歩いていく。


が。



率直に言おう、周囲からの視線がすごい。


今世においては、普段から視線を集めがちな私だが、これは酷い。

まず、私を見てうっとりされる。

これはまぁ、いつも通り。


その後、エスコートしているマーヴィン様を見て驚愕、慌てて私をもう一度見て、またマーヴィン様を見て、私を見て……って何回見る気!?



みたいな事が繰り返されている。


マーヴィン様をチラリと見ると、顔色が悪い。

注目されて辛いのだろう。


そのうち皆慣れるだろうけど、それまではこんな感じなのかなー。



でも、なんかアレよね。


周囲の視線にばかり、マーヴィン様の意識を向けられているのは、ちょっと面白くない。






「マーヴィン様」


私の言葉に、マーヴィン様は私の方を見てくださった。



うん。

近くで見ると、本当にかっこいいな。



男らしく形のいい眉、切れ長の目、高くしっかりとした鼻や顎に、男の色気がつまった唇。


本日も濃紺の魔法使いのローブを羽織られた姿だが、中の洋服はかっちりと着込まれており、マーヴィン様の真面目さが感じられる。


そんな固さと、女性慣れしていないせいか、ほんのり色づいた頬の甘い雰囲気とのギャップよ。



世界は美しい!!



「………?」




日光を受けてキラキラ光るライトブラウンの髪も素敵。

前髪はサラサラで長めだが、襟足は短めに切り揃えられていて、清潔感がありますねー。


おっと。


ついうっとり見惚れてしまい、意識がトリップしていた。



マーヴィン様の形の良い耳に顔を寄せる。



「周囲の視線より、私の方を見てくださいませ。」



私がニッコリ笑うと、顔が真っ赤に染まったマーヴィン様の口がポカンと開く。



そんなお顔も最高に美しいです。


「ルシア嬢は……こうして私と歩くのはお嫌ではありませんか?」



「嫌なはずありませんわ。」



「本当に……無理をしていませんか?」



マーヴィン様の瞳が、頼りなく揺らめく。

期待と不安、困惑、恐怖。


あぁ、この人が今まで感じてきたであろう孤独が、彼を怯えさせている。


私なんかが想像もできないくらい、何度も傷つけられてきたのだろう。


でも。


「無理なんてしていないです。」


私にはマーヴィン様の辛さを想像する事しかできない。

でも、多くの人から醜いと疎まれるのは、遠ざけられるのはひどい孤独だ。


認められない。


必要とされない。




それを仕方ないと諦めて、マーヴィン様は裏方にまわっている。


 

でも、その場所は、貴方に相応しくないと、私は思うから。


貴方の隣を歩きたいと思う人がいることを、知って欲しい。

貴方の魅力を、知って欲しい。


自分自身を、もっと大事に出来るようになってほしい。


だから。


私は満面の笑みで彼を見る。


「マーヴィン様の隣が歩けて、本当に嬉しいです。

婚約者になってくださって、ありがとうございます。」


そうなるまで、貴方の隣で。

貴方の魅力を、伝え続けていこう。

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