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ロイス伯爵が、毅然とした態度で話し始める。


「陛下。私とオードニー嬢は一昨日が初対面です。

名乗りあったのは今が初めて。

なぜ急に婚約などどいう命令が下るのか。

今すぐ取り下げて頂きたい!」

なかなかの剣幕だが、陛下はさらりと返される。


「そういうが、伯爵も良い年だろう。

もう身を固めよ。」


「私の事は、もう諦めてくださいと申し上げていたはずです!

巻き込まれてしまった、オードニー侯爵とご令嬢の気持ちを考えてください!

こんなに若くて美しいご令嬢に、今年25過ぎの、売れ残りの私の相手をさせるなど!!」


いや、私、前世の記憶があるから、むしろ同年代の男の子って子供にしか見えなくてピンと来ないのよね。

伯爵25歳なのかー。

それすら、前世基準だと若いわ。

もう少し上でも全然ありです。


というか、今私、若くて美しいって言われた気がする。

お世辞?

お世辞でも嬉しいけど。


「私はこの見た目です。

相手にしたい方がいるはずありません。

まして、オードニー嬢のような見目麗しい方など。


彼女は私の耳にまでその名が聞こえるほど、社交界の華と名高い女性なんですよ。

引く手数多と聞いております。

第一王子殿下から何も聞いていないのですか?」


ロイス伯爵の言葉に、陛下がウッと言葉を詰まらせた。


「第一王子は、まぁ、昨日、オードニー嬢の婚約の話は本当かと聞かれて、本当だと答えてから口を聞いてくれないが………」


殿下、口を聞いてくれなくなってる!!

まぁ、確かに、結構熱心に口説いてくださっていたけども…

いやでも、出来るだけ失礼にならない程度に、つれない態度をとっていたつもりなんだけど……


「陛下もですか。我が家もです。」

宰相閣下がそっと、陛下に寄り添うようにおっしゃった。


まさかの、そっちも!?


「……我が家の倅は、話を聞いて倒れましたよ。」

ぼそっと、陛下の護衛騎士の方まで参戦してきた。


あぁーーー!

先日のガーデンパーティーの、わんこ系騎士くんのお父様ですね!? 

彼、倒れちゃったの!??

大丈夫!?!?


驚き続けていた私だが、お父様は予想していたのか、そうでしょうなと言った表情である。

ロイス伯爵も、まるで、それが当たり前だとでも言うように頷いた。

「まぁ、絶世の美女が、魔物の生贄にされるようなものでしょうからね。」


ロイス伯爵の自己評価、魔物なの!?


というか………

これって、もしかしなくても、私が嫌がっていると思われている??

ロイス伯爵ではなく…?


私は恐る恐る口を開いた。


「あの、発言をお許し頂けますか?」

陛下からの許可を得て、続ける。


「急な婚約でとても驚きはしましたが、私としましては、今回のご縁を嬉しく思っております。

ロイス伯爵は…その、私のような小娘など、お嫌かもしれませんが……」


さすがに、好きです!とは言えないよねー。

お互い、相手を知らなすぎるし。

でも、婚約を嬉しく思っている、くらいならセーフでしょ??

そう思いつつ、ロイス伯爵を見つめる。


あ、顔がいい。


目が合うだけで、顔がかーっと熱くなった。

恥ずかしくて、慌てて自分の頬に両手を当てて冷やす。

落ち着いて私!

イケメンに興奮しないで!


そんな私を、ロイス伯爵はポカンとした顔で見ていたが、ガバッと顔を背けられた。


「…やはり、私が相手では、伯爵はお嫌ですわね。

庭園で転ぶような令嬢ですもの。」

本当は転ぶどころか、庭園の生垣にはまっていた訳だが、そこは忘れていただきたいので、あえてスルーする私。


「怪我まで押し付けてしまって……」

と言ったところでハッとする。

「そういえば、手のひらの傷はいかがですか?

化膿したり、悪化したりしていなければ良いのですが」

傷の具合を聞くと、ロイス伯爵は手のひらをこちらに向けて見せてくれた。

手のひらの中央に細いテープが貼ってあり、傷を隠しているが、周囲に赤らんだりといった様子はない。


「大丈夫ですよ。

昨日頂いた薬を塗っているので、保護してありますが、痛みもありません。

遅くなってしまいましたが、薬をありがとうございました。」

微笑みとともにお礼を言われて、首を振る。


「当然の事ですわ。

あの薬はお父様が、お母様や私の為にと、用意してくれているものなのです。

よく効くものなので、少しでもお役に立てればと思いまして…」


傷が酷くなっていなくて、本当に良かった。

そう思って微笑む。


すると、ロイス伯爵は私の目を見つめながら、真剣な顔でおっしゃった。


「このような傷、気にする必要はありません。

責任感で、婚約の件をお考えなのかもしれませんが、無理をする必要はない。」


その言葉に、私も真剣に返す。

誤解されているようなので、しっかり否定しなければ。


「無理などしておりませんわ。

私、ロイス伯爵の事を好ましく思っております。

……ロイス伯爵は、私が婚約者ではお嫌ですか?」


ロイス伯爵は被り振った。

「とんでもない!そんな事はありません。」


もしかして、押したらいけるのでは!?

私は何とかチャンスを掴もうと言い募る。


「この部屋に来るまでにも、何人かの方に婚約の話を聞かれました。

王命で婚約して、即日解消では…あまり外聞もよくありませんわ。

お互いの為、しばらく婚約者として過ごしていただけませんか?

もちろん、過ごした上で、ロイス伯爵が私では嫌だと思われたなら、その時は解消で構いませんので…」


私の言葉に、宰相閣下や陛下も、援護してくれる。

「そうです。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、即日では外聞が悪い。

せめて半年程度は、交流を持つべきです。」

「2人になんの確認もせず、先走ってしまったが、せっかくの縁だ。

相性を確認してからでも遅くはあるまい。」


援護をしてくれる2人にも、感謝を込めて微笑みを向ける。

すると、宰相閣下は斜め下を見ながら咳払いをし、陛下は一瞬言葉に詰まった。


「……これを正面から受け止めるのでは、マーヴィンも大変だな」


ぼそりと陛下が何か言ったが、聞き取れなかった。


そのまま、陛下と宰相閣下のタッグにより、しばらくは交流しながら様子を見よう、ということでゴリ押しされ、ロイス伯爵もなんとか頷いてくれた。

私とロイス伯爵には、週に1回程度は交流するように、と陛下からお達しがあり、では後は若い2人で!庭園でも散策しながら、仲を深めなさい!!と、私とロイス伯爵は、陛下の執務室から半ば追い出されるように退出したのだったーー。


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