表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

1

あぁ、この世界、前世とは美醜感が違うんだなぁ。

そう気がついたのは3歳の頃。


お母様に連れられて行った、ご婦人たちの小規模なお茶会で、絶世の美女だわ!将来楽しみね!!と、私自身が大絶賛された事がキッカケだった。





こんにちは。

私の名前はルシア・オードニー。

一応、この国の中ではそこそこ地位の高い、オードニー侯爵家の長女をしている。


前世は令和の日本のしがないOLで、乙女ゲームが趣味だった。


そんな私が生まれ変わったのは、魔法ありのファンタジーな中世ヨーロッパ風の世界。

転生!?

転生なの!?

まさかお気に入りの乙女ゲーム!?

それとも転生モノの小説とかかな!?


えーっ!

どうしよーーー!!

やっぱり悪役令嬢かな!?

侯爵家だもんヒロインではなさそうだしー??

…などと、最初はドキドキワクワクしていたのだが。


物心ついて鏡を見たら、悪役令嬢では無いらしかった。


艶々のブロンドに、真っ白くてすべすべの肌、までは良かった。

でも、困ったような下がり眉に、びっくりするようなタレ目で、鼻は丸っこくて低く、唇厚めの顔は、どう見ても悪役ではない。

愛嬌はあるけど美人ではない、その辺りにいるモブっぽい。

気の強さなど微塵も感じさせない顔である。

ついでに、物心つきたての幼児とはいえ、私は、ポチャ…いや、一歩間違えれば、デ…ブ………………。


こほん。



いや、幼児だし。

これからシュッとするだろうけど!

てかするけど!!

何としてもシュッとするよう頑張るけど!!



……みたいな見た目だったのだ。

悪役令嬢転生、してみたかった人生だった。





そして、件のお茶会である。

そのお茶会では、我が家以外も子連れで集まっていた。

多分、子供の社交慣れとか、顔合わせとか、そういう意味合いのお茶会だったのだろう。

我が家は侯爵家の中で、まぁ、上の方の地位らしいけど、我が家より上の公爵家のご婦人やご令嬢もいた。


そんな中で。

他の子供達を差し置いて、私はご婦人方に囲まれ。

そして、全てのご婦人に、はちゃめちゃに褒められていた。

曰く。

「まぁ!なんて愛らしいお嬢様なんでしょう!

ご覧になって、この眉の垂れ具合。

素晴らしいわ!」

「本当に!それに、太さも形も本当に美しいわね。」

「それにこの美しい瞳!縁取るまつ毛が目尻に向かって、徐々に下がっていく、この角度!!」

「私の目元もこんな角度だったなら良かったのに!」

「まさに全ての人々が憧れる目元よね!」

「鼻の形も完璧よ!丸くて小さくて、何て愛らしいの!!」

「唇だってそう!」

「顔立ちだけではないわ、この体型!!

さすが美男美女のオードニー侯爵夫婦のお嬢様ね!!」


と。

皆様、大興奮の、激褒めであった。


いやいや、あなた方がコンプレックスだと仰っている、そのシュッとした顎とか、むしろ羨ましいですけど…?

ちょっと気の強そうな吊り目も素敵では?

すっと通った鼻筋の、高い鼻の方が良くないですか?

え?

ダメ?

醜い???

ど、どこが…???

と、混乱しつつ、でも、何となく、あー、前世とは感覚が違うんだと、私は気がついたのだった。





結論から言うと、この世界の「美」は、信仰されている、世界創造の女神様の見た目が基準らしい。

女神様の像は教会に行けば飾られていて、教会を訪れた全ての人が、いつでも見ることができる。


ナチュラルメイクくらいの太さのたれ眉に、大きな瞳の垂れ目。

小さめの丸っ鼻に、ぷるんとしてそうな、色気を感じさせるぽってり厚めの唇。

私的には、美しいより「可愛らしいなぁ」と感じる見た目だ。

そして、前世基準で言ったら、肉付きが少々よろしい。

つまり、ぽちゃってる。

体重気にして、何回もダイエットにトライしてるのに、結局毎回失敗している女の子、みたいな。

親しみやすさを感じる見た目の女神様である。


しかし、その女神様の見た目こそが、この世界的には最大級にして最上級の美しさなのだ。

まさに神々しい、眩いばかりの美しさであるらしい。


うーーーん。

美しい…いや、可愛くはあるんだけど。

愛嬌はあるんだけど。


美しい…?


シュッとした顎は残念ポイント。

垂れてない眉も残念ポイント。

吊り目も残念ポイント。

細いモデル体型も残念ポイントで、痩せているくらいならデブの方が受けが良い。


それを、疑問に感じるのは私だけ。

違和感が無くならないが、まぁ、この世界の美醜感は、そういうものらしい。






そして、お茶会から13年。

デビュタントを迎えた16歳の私、ルシア・オードニーの見た目は、誠に遺憾ながら、そんな女神様の像とニアイコールに成長していた。


数多のダイエットは侍女と、メイドと、親兄弟に涙ながらに阻止されて、でもデブは嫌なので地味〜に隠れてダイエットした身体は、見事なぽっちゃり体型。

相変わらずのたれ眉、垂れ目に、丸くて小さな鼻。

年頃になってうるおい感が足された、ぷるんと厚みのある唇。

侍女達によって、日々丁寧に磨かれた、艶々でゆるふわのブロンドヘアと、白くてきめ細やかな肌。


そう。

私は、この世界基準の絶世の美女と、相成ったわけである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ