表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空探偵  作者: 來島 侑
1/1

ルールと日常

つまらない毎日に鉄槌を。

ルール

①時間を遡る回数は1回まで。制限時間は3日間。

②遡った時間の中で未来から来たことを公言した場合、本人は現在に戻り、『遡っていた時間の記憶』を失う。

③過去の物(証拠品・誰かの所有物・人間そのもの)を現在に持っていけない。

④未来に大きく影響を与える事象を起こした場合、ペナルティとして、その事象の重大さに応じたペナルティを本人に課す。※ただし、事件解決の場合はこの規定から外す。

⑤以上のルールを理解し、この契約書にサインし、我々『株式会社タイムパラドックス』が認めた方を、正式に『時空探偵』として契約させていただきます。




閑静な住宅街に、異様なピンク色のビルが一件ある。

建物は4階建で、1階には中華料理屋、2階には中華料理屋の店主が住んでいる。3階は店主の奥さんが趣味でやっているスナック『翠』がある。


そして、4階には『海堂探偵事務所』(かいとうたんていじむしょ)がある。依頼内容といえば、9.9割ぐらいで、浮気調査である。


4階の事務所は薄暗く、浮気資料が大量に乱雑した木の机と、部屋の中央にはテーブルとそれと向かい会う様に置かれた茶色いソファがある。

そのソファに2人の男が真剣な表情で向かい合い様に座る。

ひとりは髪はツーブロックで、痩せこけた頬に色白の肌が印象的で、白いTシャツの上に黒のジャケットと下にはジーパンという30代男性御用達のファッションの男。もうひとりの男が、海堂探偵事務所の所長[海堂ススム]である。


ススムの見た目は、色白の男と反して、髪はオールバックに健康そうな小麦色をした顔、上下青色のセットアップに、黒のインナーという一見すると[IT業界の若社長]という見た目である。


テーブルに置いてあるA4の紙と4枚の写真を見つめながら、色白の男は、一言

『妻の浮気は確定でしょうか?』


ススムは申し訳程度の間を開けてから返す。

『ほぼ100%黒かと‥。写真から見てわかる通り車内では濃厚なキスを交わしたあとに、ラブホテルに直行。3時間後に出て来ています‥』


20秒の沈黙あり、嫌でも3階のスナック『翠』で歌われている歌謡曲が耳に入る。


ススムは耐えきれず

『ラブホテルに3時間っていう事は、そこまで性の相性はよくないのかもですね〜。だって本当に‥』


色白の男が間髪入れず

『ふざけないでください!!』と怒鳴りをあげる。


ススムの楽観的かつ、ひょうきんな性格と後先考えない脳みそがこの発言を生み出した。

悪い癖と思いながらも、やめられない。


色白の男が一言

『離婚の裁判を起こします。もう限界だ。息子もいるのにこんな‥こんな‥』

涙を浮かべている。


ススムはティッシュボックスをそっと男の前に出し、一言、『いい弁護士紹介しますよ』と声をかける。


『大丈夫です。自分で探しますから、お世話になりました。こちらが依頼料になります。では。』


男は封筒をテーブルに置き、テッシュを取らず去っていった。


『あらー。怒らせちゃったかな』と悪びれのないススムの声が、コンクリートの壁に吸収される。


内心どこかで思っている。‘退屈な仕事’だと。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ