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推理少女は死を追った  作者: ReMiRiA
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 5話 探偵と助手は心配性

「この教室だね」

そういうと彼女は教室のドアを開けたが…中には誰も居なかった。

放課後だから当然と言えば当然だろう。

「なぁ、推理。何でこの場所って知ってるんだ?」

「そういえば、話してなかったね。私が聞いたのは広報部なんだ」

広報部。学校の様々な情報を扱う部門であり情報収集には最適な相手だった。

因みに部活動ではなく学校公認の委員会部門故に色々と扱えるのだろう。

「広報部もこの事件は重要視してるんだってさ」

「それで、この教室の人だって特定出来た訳なのか。流石に本業は違うな」

餅は餅屋。とも言うしそれは納得だな。そうしてふと思った。

「どうやって聞けたんだ?相手は推理が探偵をやってるって知らないだろ?」

「それは、宮乃先輩が話を通してくれたんだ。先輩には感謝しないとね」

俺と話した時は情報ないって言ってたのに…あの人も相当なやり手らしい。

「それで、どうするつもりなんだ?」

「その人は男子なんだけどね。コレを使うべきなのかなって」

「それは…手紙?」

「そうそう。女子から貰ったら喜ぶ…恋文(呼び出し状)だよ」

…その手紙(ラブレター)、別の意味を含んでるよな?そうジト目を向けた。


次の日の放課後。俺と推理は校舎裏に来ていた。

此処で推理が仕掛けた罠を利用して本人と出会う予定なのだ。

「上手く、嵌ってくれると思うか?」

「それはバッチリだよ。先輩がさり気なく聞いたど舞い上がってたんだってさ」

宮乃先輩曰くそれはそれは凄く喜んでいたらしい。先輩は哀れんでいたらしいが。

「じゃあ、君は隠れてて。もし、抵抗したら参戦するって形で」

「分かった」

そうういうと俺は推理の居る場所から見えにくい場所を探した。

そうして暫くすると校舎から男子生徒が出てきた。

何かを話しているが俺の方には聞こえない。何時出るべきか?そう思った瞬間、

男子生徒がいきなり逃げ出した。それを見るや否や俺は飛び出し少年の前を塞ぐ。

「ちょっと待ってくれないか?」

「な、何なんだよ。お前。退けよ!」

怯えたような表情を浮かべ横をすり抜けようとしたがそれを阻止すると彼は激昂し

「退けって言ってるだろ!」

そう叫んだ瞬間、体当たりして来たのに受け身を取れず吹っ飛ばされてしまった。

推理が駆け寄ってくるが男子生徒を逃がしてしまう…そう思った時だった。

「俺の後輩に何をしてるんだ?」

視線を上げると宮乃先輩が立っていた。そうして男子生徒に手刀を叩き込んだ。

「様子を見るに…うん、大丈夫そうだな」

それは皮肉ですか?と言おうとしたが声が出ない。気力はまだ戻ってないようだ。


「君も対人術を学ぶべきだと思うんだよ」

今は保健室で軽く手当てを貰った後に宮乃先輩と落ち合いそう言われた。

「そうですね…。それと、ありがとうございました。それで…推理は?」

「彼奴なら今頃、尋問も終わっているはずだと思うけど…何なら今から行くか?」

探偵を心配するのは良い心掛けだと褒められその場所へ行くことにした。

「あ、大丈夫だった?」

「ちょっと痣が出来てるけど…大丈夫だ。心配掛けてすまなかったな」

「まぁ、別に私は助手のことだし大丈夫だって思ってたけどね」

視線を向けずにそう受け答えする推理に対し宮乃先輩が突っ込んだ。

「…さっき、保健室に送ったって言った時に慌てていたのは誰だっけ?」

「…何のことかさっぱりだね。あ、そうそう。色々と知れたよ」

話題をすり替えるなよ。と先輩がジト目をしたが推理は無視して話し始めた。

「まぁ、結論から言うと裏があるのはほぼ確実なんだよね」

「というと?」

「さっきの男子の話によれば泥棒は『対価』だったらしいんだ」

そうして推理は説明を始めた。

男子生徒はある人に依頼して情報を隠蔽して貰ったこと。

それの対価で男子生徒の度胸を試す為に菓子パンを盗んだこと。

付き合うのを辞めたくなっても色々と脅されたことなど散々たるものだった。

「…つまり、男子生徒を校則で縛っても事件は解決しないという訳だな」

「そうなるね。私も裏で活動してるのが誰なのかは特定出来なかったし」

多分、彼も知らないんじゃないのかな。そう推理は意見を出した。

「分かった。ある程度、バックは俺と刃さんで調査してみる」

先の見えないものだと思った矢先、宮乃先輩が助け舟を出してくれた。

「流石、瑛都先輩。此処ぞという時に頼りになるね」

「そうやってごまを擦っても俺は乗らんぞ。今度、飲み物奢りな」

「えぇ…」

「態々すいません。迷惑を掛けてしまって」

君が謝ることじゃないさ。そういうと先輩は早々に出て行った。

「…。じゃあ、私たちも済んだことだし帰るよ」

そうだな。そう頷くと俺は推理の隣に並んで帰ったのだった。


ー3日後。

「怪我は治ったようだな」

お陰様で。そう改めて宮乃先輩に礼を言うと席に座った。

「もうちょっとしたら刃さんも来るし待っててくれ」

「刃さんを起こしちゃってちょっと罪悪感あるな」

「刃さんは刃さんで楽しそうだったけどな」

そう笑いながら談笑していると刃さんが入ってきた。

「朝から随分と賑やかだな。学校の方は大丈夫なのか?」

そう心配してくる刃さんだが今日は土曜日だし成績は…大丈夫だろう。

「お前らの調査のお陰で大体、分かった」

そういうと4枚の資料を取り出した。

「この事件…弘乙は居なかったが2人は覚えてるだろう?」

資料の中身は隣町で起きた学生間による事件らしく既に解決済みだった。

「覚えてるよ。あの講堂の奴でしょ?」

「そうだ。俺らはあの時、単なる少年事件だと思ったが違ったらしい」

「そうなのか…」

「あぁ。今回の件もこの事件も同じ人物の影響であると判明した」

そうして刃さんは煙草に火を点けると軽く息を吐いた。


「最近になって、裏で知名度を上げたKLEAという人物だ」


ー推理と弘乙が探偵と助手になる数ヶ月前。

「こんな大規模な講堂、良く警察は野放しにしてたな」

「そうね。近所迷惑だし苦情は入れても可笑しくないはずだけど」

鎮圧された後の惨状を見ながら溜息を吐く。

依頼された内容は講堂の鎮圧だった。最も警察に横流することも考えたのだが…。

「他の同業者も居るなんてな」

「まぁ、それくらい()()()にも影響を被ったんでしょう」

他の仲間に軽く挨拶をし私と先輩は様子を眺めた。

「今日は何部来てるんだ?」

「えっと…見た限り私たちを入れて4部だったと思う」

「KLAUNとASSとGlOだな。此処らの活動者だと」

そう思っていると

「瑛都と推理じゃな。様子を見るに…今日も刃の奴は来てないのか?」

「家で寝てるんじゃないのか?事務所を出る時も眠そうだったし」

相変わらずだな。と菫さんは笑った。菫さんも刃さんと同期で相当な古株らしい。

「俺も今年で7年目だしそろそろガタも来るもんだ…若さを大切にするんじゃぞ」

そう笑いながら去る菫さんに思わず苦笑したのだった。


「…また菫さんに手伝わせたの?」

「ん?あぁ。彼奴が最近になって暇だって言ってたし案件を投げたんだ」

菫さんって誰なんだ?と疑問に思っていると他の部署の先輩だと説明してくれた。

「取り敢えずは菫のところに行くんだ。話はそれからだ」

そういうと他にも複数の資料を受け取り事務所を後にした。

「家に戻って今後の予定を考え…どうしたの?」

「刃さんも言ってたけど…本当に人生変わったなって」

実際、学校は普段通り通ってるものの休みの日は大体探偵業だった。

俺の何もない人生に新たな観点の増えた証拠でもあった。だから…。

「迷惑…だったりする?」

そう覗き込むようにして聞いてくる推理に俺は軽く頷いた。

「…やっぱり、迷惑に感じるよね。そりゃ、そうだ…」

「あぁ。でも…推理、お前と会えたお陰で楽しい日々も増えた。ありがとうな」

それは心から思った事実だった。

「そう…なら、良かったけど」

そっぽを向きながらも何処か嬉し気だったのは…俺の気の所為ではないだろう。


ー某日の深夜。

「改めて聞くけど、君としての意見はどうなんだ?」

「私としては…やっぱり何も知らずに過ごして欲しいと思ってる。でも…」

それは…ちょっと嫌だな。と霧散に吐露する。

「気持ちは分かる。でも…探偵として生きるのなら結論は出すべきだ」

そうだね。とそう頷きながらも…結局、結論は出せなかった。

その日の夜は…無駄に冷えていた気がした。

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