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推理少女は死を追った  作者: ReMiRiA
3/18

 3話 推理少女の深層心理

「そろそろ納得出来た?」

「…正直、まだ納得出来ない部分が多い」

この世界に《危機》が訪れてるなんて知らなかったのだし当然と言えば当然だ。

とはいえ、訪れていることは紛れもない事実なのだ。

そればかりはどうしようも出来ないこと。

「…有栖。明日…久々に事務所に行ってみようと思ってるんだけど」

「今後の活動の上で改めて水野様への説明も必要なことですし推奨します」

そう2人が話し合う横で俺は受け取ったファイルの資料を読んでいた。

「(…7日前に市内で殺人未遂。その4日前に襲撃…。襲撃って何なんだ?)」

そんな疑問を浮かべながら読み進めていると不思議な語句を見付けた。

「(この《RUA》って何なんだ?)」

何度も出てくる割には知らない単語だ。何かの暗号…?それともコードネーム…?

「なぁ、推理…。この単語、どういう意味なんだ?」

「…それは…。明日、説明するよ。私たちにとっては大事なコトだから」

そうかと俺は呟くとそれ以上、言及することはしなかった。

何故かと聞かれたら…それは…推理の表情が苦しそうだったから、それだけだ。

「水野様は既に御飯を食べていらっしゃいますか?」

ふと有栖さんに言われ俺は顔を上げた。

「まだ、食べてないです…学校が終わって直接…来たので」

「そうですか。では、水野様の分も作りますね」

すみません。有栖さんの厚意に有難く思いながら…小さく息を吐いた。


「(…疲れたな)」

あの後、推理と喋ることもなく部屋に戻っ来た俺は急な脱力感に襲われていた。

ベッドに倒れ込み目を閉じると情報を改めて整理することにした。

この世界には隠された《真実》があること、

推理やその仲間?は《危機》と呼ばれるモノを未然に防いでいること、

そして、その事実を知らずに生きている人が大多数居ること。

主な観点を挙げるならこの3つだろう。

「(とんでもないことになったな…)」

唯、探偵小説に没頭しただけでこんなことになるなんて想像も出来ないだろう。

今だって半信半疑なのだからそれはそうだろう。

だが…事実を突き付けられ、認めることしか許されないのもまた事実だった。


「おはよ、弘乙」

「あぁ…おはよう…って何で居るんだよ!」

普通に答えてしまったが何故…彼女が此処に居るのか?

「鍵を渡した覚えはないんだけど」

「簡単なことだよ、ベランダから来たんだ。窓、開けてたでしょ?」

そういえば…風通しを良くする為に開けていた気がする。

「もし、私じゃなくて不審者が来たらどうするつもりだったの?」

そう呆れた表情を浮かべるが…考えて欲しい。彼女も立派な不法侵入だ。

「折角の休みなのに_。何で朝から来てるんだよ?」

「昨日、説明したでしょ?今日は事務所に行くって」

「事務所…?それは隣のお前の部屋だろ?」

「うん、私の部屋は探偵()()()の事務所」

「探偵として…?じゃあ、別な役職だったってこ_」

「それは、事務所で話をしよう。今、この場で話すことじゃない」

そうはぐらかすと彼女は俺に向かってダイブしてきた…物理的に。

その後、そんな愚行を揺る訳もなくちゃんと制裁したのは言うまでもない。


「え、此処なの?」

「そうだよ。やっぱり意外だった?こういった場所にあるることについては」

目の前に大きな建物があるのだが…この建物こそ推理の言う事務所らしい。

俺からすれば意外なことだった。何しろ繁華街より徒歩3分の距離にある。

事務所(拠点)と言えば繁華街より少し離れた場所にあるのが印象的だ。だが…。

「意外とこういった場所にある方がカモフラージュになって便利なんだよ」

そうなのか。そう口には出しつつも何処か…緊張していることに気が付いた。

「弘乙、そんなに肩に力を入れなくても大丈夫だからね?」

そう推理に言われて俺は軽く息を吐いた。そうして建物内へと入り…。

「久し振りだね、刃さん」

3階へと上ったところで男性と遭遇した。

「…久々に姿を見せたと思ったら彼氏の紹介か」

…違うからね?そんな表情を向けてくる推理に対して思わず苦笑してしまう。

「ふむ…どうやら、その様子を見るに本当に彼氏じゃなさそうだな」

「はい…推理の助手をしている…水野弘乙です」

「助手…そういえば探偵をやるって言ってたな。今も続けてるのか、意外だな」

「勿論。じゃなきゃ此処まで来てまで情報提供を呼び掛けないでしょ?」

「それもそうだな。因みに彼にはちゃんと説明しているのか?」

「取り敢えずはね。でも、改めてこっちでもしようとは思ってたけど」

そうか…。そういうと男性は黙ってしまった…マズイことでもあるのだろうか?

「あ、そういえば紹介してなかったね。彼は工藤(じん)さん。私の元上司だよ」

「紹介もしていなかったのか?はぁ…。改めてだが俺は工藤刃。刃と呼んでくれ」

そうぶっきらぼうに答え顎で釈ると席を立ち奥の方に声を掛けた。

「俺から説明することはないから宮乃と話でもしておけ。俺は仕事に戻るからな」

そういうと奥へ消えてしまった。入れ違いで入って来たのは…。

「随分と元気そうだな。お前も水野くんも」

それは…同じ学校の生徒なら誰もが知る宮乃先輩だった。

宮乃瑛都。成績優秀もさる事ながら陸上の大会で全国の連覇を狙う正に文武両道。

学校は同じだが対照的過ぎて縁もないと思っていたが…こんな形で会うなんて_。

「その顔を見るに驚いているようだな。まぁ、意外だったか?」

「先輩も…知ってたんですか?」

意外な人も実は()()()だった。というのは展開であるがこうなるとは…。

「まぁな。でも、口外したことはないさ。というか推理は話さなかったのか?」

「まぁ、私が話すより本人に話して貰う方が効率的でしょ?」

「じゃあ、ちょっと話すか。霧切は…そうだな。刃さんの仕事でも手伝っとけ」

「え、何で?」

「俺も俺で話すことあるしな」

そういうと先輩は推理が奥へ消えたのを確認し俺を外に連れ出した。


「そうだ。話の前に連絡先を交換しておこう。その方が俺としてもやりやすい」

そうして俺は宮乃先輩と連絡先を交換することとなった。

「それで…?今はどんな心境なんだ?」

近くの喫茶店に入るや否やそう先輩に尋ねられた。

「正直…何て表現したら良いのか分からない…です」

「それはそうだよな。俺だって最初に知った時は信じられなかったさ」

そういうと先輩はアイスラテを注文した。

「でも、この仕事をしている内にこっちが《真実》だって気付かされたさ」

「…先輩は嫌じゃなかったんですか?現実が…崩れて行くのは」

「嫌だったさ…でも、俺で良かったって思えた」

「…どういうことですか?」

「他の人の現実が壊れるくらいなら俺で良かったってことだ」

「…先輩は怖くないんですか?」

「…勿論、この仕事を続ける以上は危険は付き物だ。でも、それが役目だろ?」

ラテを飲みながら先輩は飄々と答えた。

「俺には…先輩のように出来るか分かりません」

「素質はあるさ。何たって、霧切に指名されたんだろ?」

彼奴は才能があるからな。そういうと彼は思い出したように尋ねて来た。

「因みに何か聞きたいことはあるか?」

「昨日、推理からファイルを見させて貰って…ある組織について聞きたいです」

「…組織?」


ー某時刻、フランスのとある場所にて。

「随分と気前の良いじゃない。どうしたの?AME(アメ)

「…貴方とは喋る気はないんだけど?」

「相変わらず、辛辣よねぇ」

椅子へ座り頬杖をしながら皮肉を述べる彼女を私は睨んだ。

「それは君の態度の問題でもあるだろう?KiEl(キエリ)

「そうやってすぐ主導権を握るのは止めるべきだと思うんだけど?CiLiA(シリア)

「…俺に飛び火するとは強情な奴だな?それに、此処の主導権は俺だ。違うか?」

俺は目の前で飄々とする女を睨んだ。

「イヤねぇ…?私は別に責任を問おうとしてるだけなのよ?」

「その責任に追求に問題を感じて助言をしてるのが分からないのか?」

「…先日は未然に防がれた癖に何を言ってるのよ?」

「あぁ、見事にお前の所為でな。お陰で殺れたのは3人だけ。最低保証だよ」

そう吐き捨てると彼は席へと戻った。

「…そろそろくらだらないお喋りは止めたらどうなの?CiLiA」

「…貴方のその根性だけは認めてあげるわ。最も、褒めてはないけどね」


「つまり、犯罪組織ってことですか?」

「そうだ。勿論、犯罪組織で名を知ってるのは殆ど居ない。居るなら同業者だ」

「…その《RUA》を表で探すってのは」

「無理だ。そんなこと出来てたら既にやってるし組織なんてとっくに壊滅してる」

「先輩は…会ったことあるんですか?」

「昔…それこそ2、3年前。…の_件で会った時にな。まぁ、骨を5本折られた」

その時は1人相手に部隊は壊滅、生存者は俺を含めて2人だけと吐き捨てた。

それから先輩の話を聞きながら俺はおおよその状況を知ることが出来た。

宮乃先輩たちの所属する「Solid」は《RUA》の壊滅を目的とした組織で

推理は所属していたが()()事情で離脱し表向きの探偵として独立したこと。

など自分の知らないところで沢山の背景があったことを実感させられた。

「…時間を浪費し過ぎたな。そろそろ事務所に戻ろう」

そういうと俺と先輩は喫茶店を出て事務所へと戻った。そうして戻ると…

「随分と話し込んでたね。刃さんが構ってくれなくて暇だったんだ」

紅茶を啜りながらそう不満を述べる推理が出迎えてくれた。

「その様子を見るに少しは楽しめたようだな」

「折角、紅茶を飲んで気分を落ち着かせてたのに…」

そう呆れると彼女は俺の手を取った。

「じゃあ、そろそろ帰るから。またね、瑛都」

「あぁ。次、会う時にはちゃんと成果を挙げて戻って来るんだな」

そう笑った去り際…俺は先輩に呼ばれた。

「助手として、探偵の為に出来ることは何だと思う?」

「…探偵の補佐になること、だと思います」

「…そうだな。だが、それよりも大事なことがある…。探偵の考えを尊重しろ」

「尊、重…」

「あぁ。最も、それは普段の行動であって()()な時には自分の感情を優先しろ」

そうして俺と推理は事務所を後にした。

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