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中学生の私へ

わたしは、自分へのメッセージノートを読む。


中学生私へ。


回避事項はこちら。

人生、多少の苦労をしなければ人としての成長はないが、この回避事項は人生に不必要だから回避せよ。

一、秋に告白ブームが巻き起こる。単純な私はその勢いに乗り、鈴木君にスーパーで告白するが玉砕。それを親戚のおばちゃんに目撃される。絶対やめろ。鈴木の顔は覚えていないが玉砕した記憶だけが一生のこる。しかも、高校生になった私は可愛くて鈴木が別の高校なのに話しかけてくるが、そのときには完全スルーするくらいの男である。告白ブームのるべからず。

二、冬に思い切りこける。頭を強打。気をつけて

三、人をからかったりしてはいけない。恨まれて嫌われる行動を自ら進んでしてはいけない。自転車が     

3回連続でパンクさせられる。

四、自分の家族が素晴らしく見えるのは世界が狭い証拠。母親父親の傲慢さは家では通用しても友達からみたら嫌味でしかないの。素晴らしい友達を傷つけてはいけないのよ。

五、中3になったら、とても大好きな子が出来る。その子には振られてもきっといい思い出になる。中学生の私の恋は彼だけで満たされる。お願いが一つ、彼から逃げないでほしい。どんな結果になろうとも彼が出した決断を私は受け入れてほしい。勇気を出して彼が何かを言うタイミングで決して逃げ出さないで。当てつけのように彼氏を作らなくていい。彼の決断を受け入れて自分の一部にしてほしい。大人になる私の為にお願いね。

六、高校は、愛正高校へ。

七、孝義に火事に注意してって言ってほしい。おばさんが唐揚げをしていたのを忘れて、彼の家が火事になったの。これは、回避するのが難しいかもしれないけどたとえ話でもして注意してほしい。


きっと悩みもたくさんあるだろうけど、日々勉強は頑張って、部活もつらくてイヤだろうけど、祐里子や歩と一番仲良くなれたのは部活のお陰だから頑張って行ってね。中学生のあなたに出来ることは多くはないから、この2つだけを頑張ればいいんだよ。あまりやることがないなら、自分磨きでもしてればいい』


自分が自分におくるメッセージノートを閉じて、鈴木の事を考えた。たしかに、最近鈴木がかっこいいと思っていたが、親戚にスーパーで振られるのを見られるのはしんどい。振られるってことは、私に興味がないんだろうから私も興味を持つのはやめておこう。私は忠実に自分のアドバイスに従った。未来から来たばかりの私は未来で十分しあわせだったのに満足をしなかった罰だ。子供達に会いたい。と書いていた。文字は涙で濡れていた。41歳の私はきっととても辛かったに違いない。41歳の私を少しでも慰めたかった。自分からのメッセージはとてもありがたかった。小学生の頃の私は自分の親が素晴らしい人たちで社会的地位も高いと勘違いしていて友達をよく見下していた。それがたたって全員に無視をされたこともあったが、今思えば当然である。あれはいじめではなく、嫌われていただけだった。アドバイスのおかげて、ほどよく友達も出来て学校は居心地のいいものであった。そして、中学3年生になった。新しいクラスが早く知りたくて早く家を出た。

「有紀、何組?」

「1組。祐里子は?」

「2組」

「また離れた」

「まぁ、仕方ない」

「仲いい子誰か居いるかな。あ、ちいちゃんいる!」

「良かったじゃん」

「うん、祐里子は?」

「うーん、あ。さっちゃんいる」

「今年は修学旅行もあるし」

「有紀は恋をするし。でしょ?」

「あはは、そう。中学3年生だし思い出を作ろう」

「そうしよう。じゃぁ、また後でね」

教室に入ると一人の男の子がいた。初めて同じクラスになった子である。自分より小さく小顔の男の子は真と書いていた。

「おはよう!」

私が彼を見ていると彼から挨拶をしてきた。

「おはよう。初めましてだね、私は有紀って言います。北小出身です」

何を言えばいいのか分からずとりあえず自己紹介をした。

「あはは、今更小学校を言うの?じゃぁ、俺は真。東小出身で、多分、全校生徒の中で家が一番遠いよ」

「そうなの?」

「そう。バスで40分。バス停まで20分」

「遠い!」

「そう、遠いんです。だから優しくして下さい」

「なにそれ、距離と友情は話が違うでしょ?」

「友情の距離は近い方がいいでしょ」

「そうだね。一年間よろしくね」

中学3年生の男子にしてはとても話しやすかった。初めて会うのに、会話が弾むのがとても嬉しかった。私たちはあっという間に仲良くなった。真が女の子なら、唯一無二の親友になったに違いない。だが真は中学3年生の男子である。しょっちゅう下ネタを言っては私を困らせた。困る私をみて楽しんでいた。私は彼に恋をせずにはいられなかった。大好きで大好きでたまらなかったがそれと同時に真との友情の距離感が大事になっていた。私が告白したらきっと関係は崩れてしまう。でも、真が彼女が出来たら?耐えられるのかな。仲良くなる一方でどんどん私は臆病になっていった。期末テストが迫る中、席替えが行われ、真は私の後ろの席になった。

「有紀!やったな!今回は近いぞ!」

「あはは。そうだね。前回は遠かったもんね」

「休み時間に伊藤君の席を取らなくても有紀と話せるぞ!」

「伊藤くん、かわいそうに。ずっと立ちっぱなしだったもんね」

「伊藤くんも席が近いから3人で話せるぞ!」

私の隣にいる伊藤君は寡黙であるが、真ととても仲良しだ。

「俺は別に工藤と話さなくても平気だ」

「伊藤君、それは私が傷つく」

「まぁ、伊藤君が有紀と話さなくてもいいけどな!」

後ろを向きながら真をいつも通り話をしていると

「ほら、そこ。イチャイチャしない」

と担任に注意をされクラス中に笑われてしまった。前を向くと私の前には、小学校から腐れ縁の環がいた。環は、とても我が儘で頭も良かったが生意気なので友達がいない子だった。

「後ろは有紀か。俺に迷惑かけんなよ」

「はいはい、よろしくお願いします」

「お前はババくさいんだよ!」

突然の悪口に私は苦笑いをするしかなかった。チャイムがなり授業が終わった。

「有紀、また明日な!」

「あ。ねぇ」

「ん?なんだ?」

「最近さ、なんかあった?」

「なんで?あったとしても有紀に関係ないでしょ」

「ないけど。なんか、今までと雰囲気が違うような気がしたの」

「そんな事ないけどね。バスの時間だから俺行くね」

「うん、また明日ね」

いつもは元気に返事をしてくれるけど、その日の真は私の言葉に返事をしてくれなかった。

「帰ろう」

私も荷物をまとめて廊下に出て、隣のクラスに祐里子を迎えに行った。

「祐里子、帰ろう」

「祐里子、今職員室に行ったぞ」

答えたのは、幼馴染みの孝義だった。中学生になりあまり話をしなくなった。自然な形であると言えばその通りのタイプだったが、私はアドバイスノートを思い出した。

「そう。ねぇ、孝義。最近どお?」

「有紀が話しかけてくれるなんて、珍しいな。雨でも降るのか?」

「冗談はやめて、最近野球まだやってるの?」

「おう、今日も夕方から野球だ」

「そか、この前ね。ドーナツを作ってたんだけど、うまく出来なくてさ」

「突然なんだよ」

「まぁまぁ、聞いて下さいよ。祐里子が帰ってくるまで話し相手になってよ」

「なんだそれ、今まで無視してたのは有紀だろ」

いや、それは。お前の事を好きな女子に嫌がらせを受けたからだよ。そう、パンク事件の犯人は孝義を好きな女の子が私に嫉妬して行った愚行だったのである。って言えないしな。

「そんな事なよ。タイミングが合わなかっただけだよ。全然話す。今までみたいに家に遊びに来てもいいし。私も行く」

「有紀が家に来ちゃダメだろ」

「美佐ちゃんと遊ぶからいいでしょ」

「で、ドーナツがどうしたんだよ」

「そうそう、ドーナツを揚げ終わった時に電話がなってね。うっかり火を止め忘れちゃったんですよ」

「危ねーな!」

「そう。たまたま、ばあちゃんが居たから良かったんだけど、もう少しでボヤ騒ぎよ」

「セーフだな」

「そうなの。だからさ、おばさんにもこの話して気をつけてって言っておいてよ」

「何で母ちゃんに?」

「よく唐揚げ食べてそうじゃん」

「それはそう。今日も唐揚げ」

「でしょ?野球の迎えもあるし、おばさんも忙しいだろうからさ。気をつけるにこしたことはなし」

「そだな、言っておくよ。俺も今日有紀と一緒に帰ろうかなー」

「それは出来ない相談だ」

「なんでだよ」

「・・・」

「何でだよ。言わないと抱きつくぞ」

「それこそ何でだよ!」

「急に無視したり俺は傷ついている」

どんどん近づいてくる幼馴染みに降参した。

「はぁ。孝義のファン?知らんけど、あんたを好きな女の子に嫌がらせされるんだよ」

「なんだそれ」

「でしょ。だから、無視してたの。ごめんね!だから、一歩下がって。あんま顔みないで」

「何で?」

「いやいや、勘弁してよ。ブスだなぁって思うでしょ」

「有紀は可愛いぞ」

「そういうとこ。あなたの悪いところはそういうとこ」

本気で嫌がる私をみて孝義は爆笑して離れた。

「やっぱ、有紀はいいな。俺、有紀好きだぞ。明日一緒に勉強しようぜ」

「はいはい。私も好きですよ。え?イヤだ」

そんな会話をしているうちに祐里子が戻ってきた。

「あれ、珍しく話してるじゃん。孝義良かったね」

「おう」

「孝義と話して疲れた。早く帰ろう」

「俺も一緒に帰るぞ」

「あれ?健二が探してたよ」

「あ、そうだ一緒に帰る約束してたんだ。また明日な」

「はいはい。あ、おばさんに言ってね」

「おう」

「祐里子、私たちも帰ろう」

「うん、準備するからちょっと待ってて」

「じゃぁ、トイレ行ってくる」

トイレに向かうと、さっき帰ったはずの真がいた。

「あれ?まこちゃん?バスに乗ったんじゃなかったの?」

「ちょっと忘れ物した。ねぇ、さっきのやつって誰?」

「祐里子のこと?」

「違う。ゆきちゃんと話してた男」

「あぁ、孝義?家が近所の幼馴染みなんだ」

「仲良くね?」

「幼馴染みだからね」

「ゆきちゃん、学校で男と乳繰り合ってはいけないよ」

「ちちっ?」

「健全な中学3年生でいてくれないと」

「何それ。別に乳繰りあってないし変なこと言わないでよ。」

「変なことは言ってないでしょ」

突然の絡まれ方に私はどうしていいのか何を言っていいのか分からなくなり会話を終わらせたかった。

「もういい?トイレ入って帰りたいんだけど」

真をしりぞいてトイレに入ろうとしたとき手首を捕まれた。

「ゆきちゃんは、あいつが好きなの?」

「何でそれをまこちゃんに言わなきゃいけないの?」

「俺たち親友じゃん」

「何でも共有するなら、先にまこちゃんが何かあったが言うべきだったでしょ」

「おれは何もナイって言った」

「うそ。関係ないって言った」

「じゃぁ、何もない。有紀の思い過ごしでしょ」

「私は信じない。最近おかしいよ。どんどん悪い方に行ってるように見えるよ」

「なんだよそれ。おまえ、キモいわ」

本気じゃないと分かっていても、好きな人からの絶対的拒絶言語に私はあからさまに傷ついてしまった。

「ひど。手、離して」

静かに手をほどかれ私はトイレに行かずに祐里子の所にむかった。

「遅かったね。どうした?」

「とりあえず、帰ろう」

「うん、帰り道でお姉さんが話を聞きましょう」

少し泣きそうなのをこらえて帰り道先ほどの出来事を祐里子に話した。

「焼きもちってやつですね」

「だよね。私もそう思った」

「思ったんかい」

「真は、私が好きだろうって思った事もあるんだけどね。好きな人は奈々って話してきたことがあるんだよ。奈々も真が好きらしくて、あー両思いなんだぁ。と。それで、私は一人失恋をしたんだけど、好きなのを辞める必要もないかなと今でも片思い中。分かりやすいくらいでしょ」

「隣のクラスだから分からんが、分かりやすいだろうね。有紀は顔に全部出るから」

「ポーカーフェイスなのに。本当はあんなふわふわした軽い人に見切りをつけたいんだけど、親戚のお姉さんに自分の気持ちを伝えてないのに諦めちゃダメってアドバイスをもらったからね」

「お姉さん、めちゃいいこと言いますね」

「人生経験豊富ですからな。だからもう少し頑張りたくてね。ケンカしちゃったけど」

「まぁ。明日は週末だし月曜日シラッといけば大丈夫でしょ」

「そうだね」

「週末で良かったわ。さて、期末の勉強でもしましょうか」

「そだなー。じゃぁ、また月曜日」

「うん、またね」

祐里子と別れて帰宅し今日の出来事をノートに書いた。届くわけもない自分宛に。

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