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ありきたりな展開

寝返りを打ち違和感を覚える。

違和感があろうとなかろうと、憂鬱な一日が始まることには変わりない。

起きるか・・・のそりと起き上がると懐かしい光景が見える。

「ん?私の部屋じゃん?あれ?私、実家に帰ってきたっけ?」

少しほおけていると

「ゆきちゃん!いつまで寝てるの起きなさい!」

下から声が飛んできた。

ん?不安な気持ちを抱えながら懐かしい階段を降りる。一段降りるごとに心拍数はとんでもないことになっている。待て待て待て。私、体が軽いし細い。もしかして、もしかしなくてもこれは漫画で読んでいたありきたりな展開なのでは?恐る恐る居間のドアを開ける。

「おはようございます」

「おはよう!あんたいつまで寝てるの!」

「ママ、若っ」

「何言ってんのよ、早くご飯食べなさい!」

「・・・そのまえに顔洗ってくる」

やっぱりだ。私、過去に戻ってる。なんで?なんで?冷たい水で顔を洗う。

やっぱり、子供の私だ!何歳だろう。落ち着こう。一旦落ち着こう。ニュースか新聞見て今日がいつか確認しよう。

「ゆきちゃん、邪魔!お姉ちゃん電車の時間あるからどいて!」

顔を上げると姉がいた。

「お姉ちゃん、わかっ!」

「は?あんんた何言ってんの?寝ぼけてないで、さっさとどけ」

どんっと力強く押し出される。そうそう、この姉は高校生の時凶暴だったのだ。懐かしい。いや懐かしんでる場合じゃない。お姉ちゃんが高校生ということは、私は中学生だ。居間に戻りニュースをつけるが、、、年号なんていうわけもなく。

「ママ。私、何年生だっけ?」

「はぁ?あんた、何言ってるのよ。中学1年生でしょうが。来週期末テストってわかってんの?」

「期末?・・・なんですと?!」

「中間テスト悲惨だったんだから、ちょっとは頑張りなさいよ!」

誰が何の目的で私を過去に戻したかは、わからないが、来週期末テストとかダメでしょ。昔の記憶なんて全くないしどうしたもんか。そういえば、あの子達どうなったのかな。心配だわ。いや、私が過去に戻ったんだから、まだ存在してないのかな。どうなってるんだろう、パラレルワールド的な感じかな?私だけ過去に戻り、未来は未来で進んでるとか?そうなると、あの子達の世話は誰がするの?いや、分からないことに不安になるのはやめよう。きっと、大丈夫。私が過去に戻ったってことは、時間が戻ったわけだから、あの子達が今泣いていたりはしないはず。久々に食べる母のもりもりの朝食を前に途方に暮れるのであった。


「ごちそうさまでした。さて、学校に行くか」

「なんか、今日のゆきちゃんちょっと変よ。神様に手を合わせてから行きなさいね」

でたよ。そうだ、この母は神様神様神様信仰の人だったわ。でも今日は、素直に神様に手を合わせたい気持ち。状況把握が出来ませんが、あの子達が無事でありますように。強くお願いして私は久々に中学生の制服を着たのだ。クラスは確か、6組だったような気がする。一応教科書の名前を確かめる。

「6組か。なんかあまりいい記憶がないんだよね、中学生って」気の重さと不安感を感じつつ近所の幼なじみを迎えに行く。

「おはよー」

「おはよー。あれ?今日なんか雰囲気違うね。どうした?」

「え?そう?」

「うん、大人しいね」

「ママの料理が朝から重かったからかな」

「あはは、それは苦しいな」

何気ない会話に懐かしさと安心感を覚える。

「ゆりこ、今日って部活あったっけ?」

「あるね」

「だよね。何時に帰れるかな」

「いつもと同じなら6時か7時かね」

「長っ」

「そうだね、長いけど頑張るべ」

「おす」

帰る時間と部活の確認はした。同じクラスに仲いい子いたかな?名前覚えてないから、今日は大人しくしていよう。と心に決めている間にあっという間に学校に着いた。自分が想像していた以上に、記憶がなく断片的にしか覚えていないが、駐輪場に着いた時にイヤな記憶が2つよみがえってきた。一つ目は、クラスの男の子をからかいすぎて、胸ぐらをつかまれ殴られたことだ。これは回避しよう。と心に決めた。二つ目は、誰かに連続でタイヤをパンクさせられた。犯人は分からずじまいだったが、きっと私を気に入らない誰かのイタズラには変わりないはず。人生2週目。しかも戻ったのは自分の人生。未来にいる自分の子供達が気がかりだが、私は自分の人生をうまくやり抜いてやる!自転車の前で強く決心した。

「有紀!さっきから何物思いにふけってるのさ。早く教室行くよ」

「祐里子よ、信じられないだろうが聞いてくれ。実は私記憶喪失なのだ」

「何言ってるのよ。さっさと行くよ」

信じてもらえるはずもなく、祐里子の横を歩く。懐かしいなぁ。あ、ここで冬転んで頭打ったな。死んだかと思ったわ。これも回避しよう。回避リストがどんどん埋まっていく。中学生。自分の人生のなかで一位二位を争うハードモードな3年間である。いざ出陣。上履きに履き替え、祐里子と別れ自分の教師に入る。懐かしさに感動しつつ、どんどん気がつく。自分の席がわからん。このクラスで友達はいたかな?今6月だから、まだそんなに誰とも仲良くはないはず。キョロキョロしていると、後ろから話しかけられた。

「有紀、おはよう!」

くりくりした目の元気な女の子だ。名前はわからない。胸元の名前を必死に確認する。

「美咲ちゃん、おはよう」

「ちゃん?!何どうしたの?悪い物でも食べたの?」

「え?あ、いや、実はそう。ばれたか」

「やっぱりね。何突っ立ってるの?早く座ろうよ」

「美咲、私の席ってどこだったっけ?」

「いや、本当にどうした。窓際の前から3番目でしょ」

「あはは。なんか一瞬分からなくなっちゃって」

「大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫、ありがとう。さぁ、朝の準備しなきゃね」

鞄から道具を出し教室を見渡す。全く覚えていない...見た目は12歳中身は41歳である。困ったもんだ。途方に暮れていると担任の教師が入ってきた。

無事に授業と部活が終わり家路につく。ご飯を食べ、歯を磨きさっさと部屋に戻る。まずは、覚えている記憶、ほとんどイヤなことではあるが回避したい部分と改善する部分を書き出す。この作業は結構時間がかかりそうだ。次にやるべき事は勉強である。英語は分かるがあとはほとんど分からない。来週期末って言ってたよなぁ。と途方に暮れる気持ちを飲み込み必死に勉強する。中1の期末の範囲、1週間。明日からは部活はない。土日を挟んでも出来る時間は限られている。まずはワークをやって出来るところと出来ないところを確認しようとワークを解き始める。自分のワークを見直すと、笑ってしまった。あまりにもおバカ過ぎる。娘はとても努力していたんだなと、未来に残してきた娘を自慢におもった。


期末テストも無事に終わり夏休みがきた。

夏休みに入ったときに気がついた。未来の記憶が少しずつなくなっている。自分の日記読み返したときに記憶にない内容があった。私はそれから何でもメモを取るようになったが、中学2年の時にはメモをなんの為にとるのかが分からなくなっていた。1年間で書き出したノートは10冊。残った記憶はノートに書いてある事が自分へのメッセージだということだけで、普通の中学生に戻っていた。

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