就任
研究所の方に移動すると決まってから一週間、仕事はなかった。
移動手続きや部屋の片付けをし終え、移動前日の日に2年間一緒に働いていた仕事仲間達が研究所の就任を祝うためにパーティーを開いてくれて、がんばれよと応援してくれる人、うらやましがる人、自分と変れという人と様々な応援をしてくれた…俺はそんな人達と共に仕事していた事を嬉しく思うと同時に誇りに思えた。
人は一人では生きられない。沢山の人と支え合って生きているという事を物凄い実感した日でもあった…
次の日、俺は通い慣れた道では無く新しい初めて通う道を歩いている。
そして、研究所…いや、研究所長の部屋に近づくにつれて空気が重くなっていく…
これに耐えなければ室長の頼みを叶えることも何もできない…
そんな事を考えながら進んでいると、所長室にいつのまにかついていた。
俺は2.3回深呼吸してからドアをノックした。
少ししてから入りなさいと声がした。俺は失礼しますと言い部屋に入ったが…
部屋の中は廊下やドアの前と違い、空気が重いとかのレベルでは無くつねになにかしらの重圧を感じた。
「ドアの前で立ってないではやくこちらにきなさい。」
そう所長に言われて我に返りもう一度失礼しますと言って部屋の真ん中の方に進んでいった。
「工藤功です。よろしくお願いします。」
緊張のしすぎのせいで声が上ずってしまったが所長は気にした風でもなく。仕事の内容について話を始めた。
「あなたには、人妖とともに過ごしてもらいます。もちろん、各自の訓練とかの日程もあなたが組むのですよ。詳しくはサポーターの二人に聞いて。」
言葉と醸し出している空気が全然違う事を疑問に思いながら、はいとだけ返事をした。
俺の返事を聞き所長はなにか満足した感じの表情をした。
「あなたのサポートしてくれる人の名前は…アンジェラ・コールとエルの二人よ。もうすぐ来るから…所で…あなたは、何か感じ取っているのかしらね?」
「感じ取るとは…何のことでしょうか?」
俺は、本当にわからないため質問を質問で返したが所長はそりゃ当然だと言わんばかりの表情で会話を続けた。
「ここに来て、そこまで緊張しているのはあなたが初めてなのよ…だから何かを感じ取っているのではないかと思ってね。まぁ、気にしないでちょうだい。」
俺は何の反応をすることができないでいた…そして、その言葉を最後に数分なんだろうが数時間とも思えるほどの時間がすぎた…
ふいにドアからノックの音が聞こえた。
「所長、アンジェラです。」
所長は入りなさいと言って、すぐにドアが開いた。
そこには、18歳ぐらいの若くて美人な女性が立っていた。
「アンジェラ。前話した永山先生だからサポートよろしくお願いね」
所長の言葉を聞きアンジェラはわかりましたと返事をした。
「工藤先生、サポートのアンジェラです。これからよろしくお願いしますね。」
俺はこちらこそと言ってアンジェラさんと握手をした。
「それじゃ、二人ともさっそくだけどあの子たちに挨拶にいって。そこにエルもいるから。」
俺とアンジェラさんは、わかりましたと声をそろえ二人で所長室から出て行った。
「それでは、工藤先生がみる人妖の子達の場所に行きましょうか。」
そう言って、アンジェラさんは歩きだした。
「アンジェラさん。すいませんが先生をつけるのをやめてくれませんか?性に合わないので…」
アンジェラさんはクスクスと笑いながら返事を返してきた。
「わかりました。私のことは呼び捨てで良いですよ。」
それから、俺とアンジェラはこの研究所の事や俺の前居た場所の仕事について話しているうちにちょっと離れたところからどなり声が聞こえてきた。
「こらぁ!アルパ、部屋の中で刀振り回すな!」
その言葉を聞いた瞬間、アンジェラは硬直していた。
ちなみに俺は何が何だか分からない状態でぽか~んとしていた。
「工藤さん、少し待っていてください。」
そう言うとアンジェラはツカツカとその部屋に入って数秒後…
物凄い音が響いてきた…
そして、アンジェラは何事もなかったかのように部屋からでてきた。
「工藤先生、おまたせしました。あの部屋にお入りください。」
部屋に入ってまず目に入った物は…隅で二人の女の子が抱き合ってガタガタと震えていて、一名は地面に頭から突き刺さっている…
「工藤先生ですね。はじめまして、エルと申します。」
誰もいないところから声がして、俺はあたりを見回して正面を向きなおした瞬間さっきまではいなかった所に女性が立っていた。俺は、思わず後ろに引いてしまった。
「工藤さん。エルはデータで作られて動いているプログラムです。」
アンジェラは笑いながら説明してくれたがいきなり目の前に立たれると誰でもびっくりすると思う。
「驚かせてしまってすいませんでした…そろそろ、言葉普通にしていいですか?」
とエルの声の質が一気に変わった。
「俺なんかに敬語なんかつかわなくていいですよ。あと、先生はやめてください。」
俺の言葉を聞き、エルはヤッタと一言だけ言って会話を続けた。
「え~っと、先ほどあのドリルヘアーが言ったとおりプログラムでできています。
主に、施設の使用の可否を調べたりすることができるよ。まぁ、その他の事も色々できるけどそこは追々知っていただくということで。じゃあ次、アンジェラさんお願いします」
なぜか、俺は後ろを振り向きづらかったが・・・振り向かなきゃいけないんだろうなぁと思い、ゆっくりと後ろを向いたら……
案の定、アンジェラは笑顔でコメカミをピクピクさせていた。
お願いだからその怒り方はやめてください、怖いです。
「え~、そこのヴァカプログラムの言ったドリルヘヤーのアンジェラです。主に。人妖の体長管理などについてサポートするよ。後は工藤さんの頼みごと…つまりデータにない調べごとが可能だからよろしくね。後、私も人妖だからね」
そう言って、アンジェラは工藤さんも自己紹介お願いと付け足してきた。
「え~っと、工藤功です。まだ右も左も分からないので迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします」
そう言って俺は頭を下げた。
「さて・・・次はっと。ほら、アルパ、ニコラにアスカも自己紹介しなさい。」
アンジェラの言葉を聞き、一名を除き、二人が近付いてきた。
特徴は…片方は自分の身長より高いハンマー…なぜか充電完了の文字があるが…ツインテールの女性と長い髪の毛をサイドでまとめていて、大人しそうな感じの女の子だった…
もう一人はというと、未だにに地面に刺さっていた。
「じゃあ、私からしますね。私の名前はニコラです。種族は人妖で、電気を操る程度の能力です。工藤さん、これからよろしくです。」
そういって、ツインテールの女性はペコリと頭を下げた。
ニコラはアスカの背中をポンポンと叩いて次はアスカの番だよと言った。
アスカと呼ばれた女の子はニコラの背中に隠れながら自己紹介をした。
「初めまして…アスカです…能力は氷を好きに作ったり動かしたりすることができます。」
言うだけ言ってアスカはニコラの後ろに完全に隠れてしまった。
「あはは、工藤さんすいません。この子人見知りが激しいんですよ」
俺は、いきなり嫌われたかと思ったけど違うようで安心した。
「そして、最後の一人は…アルパ、いつまで地面に突き刺さっているつもり?」
アンジェラがそう言ってアルパを地面から引っこ抜いたが…当の本人は気を失っているらしく白目をむいていた。
それを見て、エルは簡単に能力を説明してくれて、詳しくはまた明日という事になった。
こうして、俺の研究所での仕事が始まった…
「工藤さん、ここで変な事を考えない方が身のためですよ。たとえば…この子達を連れてこの島を出よう…とかね…」
そう・・・アンジェラが言葉を残して俺の研究所での一日は終わりを告げた。
誰もいない、暗い部屋の中に3人の人間が居た。
「そう、工藤君がこの研究所に所属したのね。」
「えぇ。ですが…他の世界同様で脱出とかを考えているみたい。」
「そこは、どうしても変更させることができないのね。」
「あなたが何とかしようとしているけど…徒労で終わると思う。」
「徒労になるってさり気にひどいですよ…これでも一生懸命なんですから。」
「でも、私が見ていて一つ違うところがあったからこの世界は平気だと思うよ。」
「その根拠は?」
「あいつの存在に気が付いているから。かな?」
それを聞いた他の二人は声をそろえて本当ですか?と返した。
「えぇ、あれをどうにかすることができれば、この世界でのあなた達二人の仕事は終わり。だけど他の世界が残っているからまだ働いてもらうからね。」
二人の女性は揃えてため息をついた。
「それでは、明日も仕事があるので、この辺で解散しますか…あなたも他の世界の様子を見に行かなければならないのでしょ?」
「さすがにお見通しか。また何か進展があったら報告するように。」
二人は了解と返事をして部屋から出て行った。
「ふふ…この世界はどうなるのかな?楽しみね。」




