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彼女のお話  作者: ひいらぎ
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第四幕の二

「そういうお前はどうして俺と……」

 そういってとまった。

 手を挙げたからだ。

 えっなに?

「こんにちは」

 俺の後ろに声をかけて。

 振り返ると。

「……まじか」

 俺たちのほうに来たのは、よく見知ったやつで。

 てかはやくね?

「こんにちは」

 そいつは俺の正面に座った。

「突然ごめんね」

「いや大丈夫だ。連絡をもらえて感謝している」

「彼女であっているよね」

「ああ。まちがいない。今日放課後予定が入っているということだったから、別行動していたのだが。驚いている」

「僕もだよ。でも来てくれてよかった」

「しかしどうしてここに? 帰路ではないと思うのだが」

「ああ。それならこの先輩に聞いてもらってもいいかな」

「他にも人がいるとは思わなかった。そのことにも驚いている。はじめまして。ではないと思いますが、こうして話すの初めてなので。はじめまして」

 俺をそっちのけで話してると思ったら、矛先が向いた。

「え。あ。はじめまして」

 は?

 追いついてない。

「おい」

「はい?」

「連絡したのって……」

「はい。彼です」

「まじか……」

 俺をまっすぐ見ているのは、県内トップの強豪校のエースだ。

 でなおかつ、強化選手に選ばれるようなやつなんだけど。

 つか。この二人同学年か。一応俺が先輩になるわけだけど、なんか貫禄っていうのか、でかいんだよな。まあ実際俺よりガタイはいいわけなんだが。

「聞いてもよろしいでしょうか。どうしてお二人はここに? どういった経緯で自分の彼女と同じ場所に居合わせているのでしょうか」

 ええーと。

 視線を向けたが、そっぽを向かれた。

 くそっ。助けてくれないか。

 ……自業自得か。

「君の彼女が一緒にいる他の二人の女性の内、一人が俺の彼女だ。彼女が予定があるといっていたのだが、様子が違ったから気になって後をつけた。そうしたら、このお店で、三人で女子会をしていた。こいつには俺に付き合ってついてきてもらった」

 ……。

 きちんと話すと気持ち悪いな、俺の行動。

「でっでも!」

 忘れてた。

 これだけは言っておかないと。

「俺は君の彼女がいるとは知らなかったし、彼女なんだと今知った。だから君をここに呼んだのは、こいつの判断。俺が呼んでくれとか言ったわけじゃないから!」

 もし俺がそれを知ってて呼んだんだとしたら相当だろ。初めましてって言ってるんだから知りようがないし。

「では。俺をここに呼んだのはどうしてだ?」

 今度は横に視線を向けてくれた。

 ああ。めっちゃ怖かった。

「道連れにしようと思って」

 さらっと言いやがった。

「道連れ?」

 意味が分からないという顔だ。

「二人の彼女と一緒にいる人が僕の彼女で。意図せず、それぞれの彼女がそろっているんだ。僕は彼女の跡を追ったわけではないけれど、結果、こういうことになってしまった。そして。僕たちがここにいることを、彼女たちにばれている。で。君の彼女もいたから。いっそ君も呼んで、三人ともそれぞれの彼女から、どうしてここにいるのかという事情聴取を受ける方向にしようと思って。一連托生ということだよ」

 ……。

 こえーよ。

「よくわからないが、事情聴取もなにも。俺は君に呼ばれてここにきた。そう答えるだけだ。でも二人は違うだろう。先輩は後を。君はそれに付き合った。一連托生というほどだろうか」

「いいだろ? それに君の彼女。すごく楽しそうだ」

「いや。お前、ぜってぇ嫌われるぞ。告げ口みたいだし」

「先輩がそれを言いますか?」

 ……。

「ごめんなさい」

「りんはそう思わない。りんなら笑って、そうですかというぐらいだろう」

 りん?

 ああ。彼女の事か。

「心広いな」

「怒ることもなく、そういうだろうな。だから俺はまだいいが」

 そういって俺たちを見た。

 ……だよな。

「間違いなく俺は怒られる」

「僕はどうでしょうね」

 こいつ―……。

 はぁ。でもやっぱりこいつを選んでよかった。

「てか」

「どうしましたか?」

「なんで連絡先知ってんだよ!」

 そこだよ、俺。

 これは聞いとかないと。

「ああ。それは、先輩と同じです。大会先で聞かれたので」

「お前誰にでも答えてんのか?」

「違いますよ。そんな節操のないことはしません。答えてもいい。連絡が来てもいい人としかしませんよ」

 見た目に判じて軽いやつなのかと思って心配になったわ。

 まあ、あんな、友達っていわれて、照れるようなやつがそうではないと思っていたけれど。

「俺のほうから声をかけました。りんがとても仲よさそうに話をしていたのが彼女の方だったので」

「は? どういうこと?」

 意味わからんが。

「りんが会場でとても仲よさそうに話をしていました。他校の生徒と話をすることは基本ないので珍しいなと思い。どういった方なのか聞こうと声をかけたんです」

「意味わからんが」

「僕も最初は何がしたいのかわからなかったのですが、単純に自分の彼女が話しかけていた生徒が僕と同じ制服だったのと、僕と話をしていたということで聞いてきたそうです」

「だとして」

 ちょっとまて。

「それで連絡先交換する流れになるのか?」

 俺にはわからん。

「悪いものはないと感じたので。単純に彼女さんが仲良く話しているのが嬉しかったようで、それを嬉々として話しているように見えたので」

 嬉々として?

 はじめましてから今の今まで、表情変わってないのに?

「それに。彼女のことを僕自身があまり話したくなかったので。知りたいのならまず僕を通してくださいといったら、連絡先を交換する流れになりました」

 まじで意味わからん。

「なにその行動力というか判断というか……」

「まああとは僕も彼と話をしてみたいというのがあったので」

 ……。

「おまえ、そっちがメインだろ」

「バレましたか」

「ほんと気をつけろ。俺たちだからよかったものの。変な奴だったらどうするんだよ」

「それについては大丈夫ですよ。先輩は部長ですし、君は有名だから。下手なことはしないだろうって」

 そういう安心感ってどうなん。

「……はあ。もういいよ。結果、仲良くしてもらえてるからいいや」

 なんかつかれた。

 まじで意味わからん過ぎて、頭が追いついてないけれど、もういい。

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