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彼女のお話  作者: ひいらぎ
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第四幕の一

「空いている席にどうぞ」

「あ。はい」

 スッと奥の方に入っていった。

 で。

「なんで僕がこっちなんですか」

「俺がそっちだったらあいつに顔見られるだろ」

「僕が目が合いそうでこわいですよ」

 顔を突き合わせて、声をひそめて。

 ああ。横通るのめっちゃ怖かった。

「……さすがに声までは聞こえないか。ならこっちも聞こえないよな」

 はあぁ。

「そんなにも緊張しているのなら、しなければいいのに」

「いやそれな。ほんとそう思う。でも仕方ないだろ。気になったんだから」

「怒られるということよりも気になったことを優先するあたりがすごい行動力ですよね」

「……馬鹿にしてるだろ」

「いえ。その勇気はすごいと純粋に思います」

「もういいよ。何とでもいえ」

 お行儀はよくないけれど、ぐだっと姿勢を崩す。

「しっかし。お前の彼女までいるとはな」

 俺からは見えないけれど、正面のこいつには見えてる。彼女の後姿。

 あいつにこいつの彼女にもう一人。

 女子三人でのお茶会みたいだけど、このメンバーとは思ってなかったし、彼女の姿をみて目ぇ見開いてたし。

「でも安心したわ。お前の彼女と一緒なら。ああ。ほんとよかった」

「僕としてはよくないです。こんなところ彼女に気づかれたら」

 そう言いながら何かしている。

「何してんだ?」

「こうなったらもう一人呼びます。道づれです」

「え。怖いんだけど」

 誰に連絡したんだ?

 道連れ?

「まじで誰?」

「もう一人いる女性の関係者です」

 ……。

 ?

 もう一人……こいつの彼女の隣に座ってる子だろ?

 制服はあそこだから……。ああそっかこのあたりか。なら、あの子の生活圏に二人は来たってことか。

 ……? ん?

「え。……あの子って」

 確かあの子も試合会場で見たことある気がする……。

「彼女も大会先で見た事ありませんか」

「ある気がする……。え。まじで誰くんの?」

「あ。今日はロードワークの日らしく、自由解散だから来ると返事来ました」

「だからまじで誰?」

 めっちゃ怖いんだけど。

 え。

 こいつの方が行動力あるだろ。

 道連れとか不穏なこと言うし。呼ばれたやつも呼ばれたやつだろ。それで来るってこいつのこと信用してるってこと?

「しかし。どういうつながりなんでしょうね。あの三人は」

「いや平然と話変えるなよ……。まあ。確かに? 話してるとこ見た事あるけど、こんな風に会うくらいには仲がいいってどうしたらそうなるんだろうな」

「彼女たちからしたら僕たちもそう見えるのでは?」

「えー。俺たちの方がまだあるよ。ほら。大会で気になったやつに声かけたり、手紙交換したりとか。そういうのあるだろ?」

「僕はそういう文化圏にはいなかったので、体験したことはなかったですが。部員の中にはそういう部員もいましたね」

「俺もないけどな」

「え」

「ん?」

 なんだよ。すげー怪訝そうな顔しているけど。

「なんで僕に連絡先聞いてきたんですか? 自主練の声かけてくださったんですか?」

 あ。

 ……。

「ええーと」

 どうしよ。

 正直に話す?

 いや。確かにこいつのプレーをみていいなって思ったし、俺と違うから見てたのもあるんだけど。

「ええーと。……俺とお前ってプレースタイル違うだろ? 同じポジションのやつってつい見ちゃうんだけどさ。それでお前のこと見てたんだけど。……で。ああ。いるなぁって思って。で。彼女が応援に来てたじゃん? で……。あいつがお前の彼女と話しててさ。すげー楽しそうだったから。ああ。いい子なんだろうなって思って。あいつ気になった人には声かけるのためらわないやつだからさ。……俺も声かけてみよって思って……」

 ああ。歯切れが悪い。

 てか恥ず。

 いやめっちゃかんばったんだよ俺。

「戸惑ってたけど、連絡先交換してくれたからさ。あいつみたくうまく話しかけられなかったのに……。嬉しくてさ。それでつい一緒に練習したいなぁって。ほらおまえさ。なんていうの? こう……。俺んとこの部員とは空気が違うんだよ。だからさ。ついこんな事に付き合わせちゃったんだけど……」

 ちらっと目を上げると。

「……本当にまっすぐな人ですね」

 目が泳いでた。

「え」

「あ。いえ。……先ほどの友達ということもそうなんですが。僕の周りにはいない人なので」

 ……。

 なんか今日ずっと恥ずかしい。

 大丈夫か俺……。

「彼女が先輩の彼女さんと仲が良くなったのがわかる気がします」

 俺をまっすぐ見てきたと思ったら、すげぇ落ち着いた笑顔を向けてくれた。

「先輩のような人が好きになる人です。きっと彼女さんもまっすぐな方なんでしょうね。彼女が楽しそうに話をするのもわかります。……ほら」

 そういって視線が俺から外れて。

「三人とも、とてもいい笑顔です」

 そういう声も表情も全部。めっちゃやわらかいから、思わず俺は振り返った。

 ……。

 ああ。

「あいつあんなにも楽しそうなの久しぶりにみたな」

 教室では見たことのない笑顔。

 一層キラキラしてる。

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