第一幕
連載と言うほど長くならないようにしたいと思います。
5月11日12日 加筆・修正
「おつかれー」
「お疲れ様です」
「ふふふっ。お疲れ様です」
三者三様のあいさつ。
「今日も鈴ちゃんかわいいねー」
「ありがとうございます」
いつものあいさつになれたように返している。
こんな風に話をするぐらいには仲のいい私たちにみえるんだうけど。
三人とも学校も学年もちがって、近所ってわけじゃない私たちのつながりは。
「今日来るのにちょっと手間取ってさー。あいつ。一緒に帰らないっていったらすっごくキョドって」
「部活はなかったんですか?」
「体育館が別件で埋まってたんだって」
「前から言ってたのに。わすれてたんかな?」
「戸惑われるなんていいですね」
「あー。鈴ちゃんの彼なら、ああわかった、とかで終わりそう」
解像度高めの意見。
「そうでしたよ」
正解なんかい。
「ふふふ。絢さんはどうでした?」
口元に手を当てて上品に笑う鈴さんが私をみた。
「特別なことはなかったよ。私も前もって言ってたので」
「いいなー。理解のある彼氏で」
プクーと頬を膨らませる朔先輩は、不満そう。
「帰らないとだけ言ったんですか?」
この人だとそれ以外にも言ってそうな気がするから聞いてみたら。
「んー? デートだからっていった」
「それですね」
「それだね」
正解でした。
「ん?」
顔を見合わせる私たちにたいして、首をかしげる朔先輩。
「デートなんていったら、戸惑いますって。彼氏さんそういうの真に受けそうなタイプに見えますよ?」
「真面目そうな方に思います」
「やめてよ二人して。なんで解像度高めなの」
こちらも正解と。
「そうなると。絢さんの彼氏さんは意外でした。5W1H。聞いてきそうだなと勝手に思っていたんですが」
「そうそう! もしかして今日の集まり正直に話したとか?」
そして私の彼にたいしてもお二人とも正解で。
「言ってないですよ。友達と遊ぶとだけ。たぶんクラスメイトだと思ってるんだと思いますよ」
今日のことは。というか。
この三人での集まりは絶対に言わない。
邪魔されたくないし、根掘り聞かれたくない。
私たちは試合会場で出会ったんだから。
彼氏の試合そっちのけってわけじゃないけど、私たちは彼氏の部活の試合会場で、応援に行ってて知り合った。
「私、お二人のこと彼に行ってないんです。でも気づいてはいるみたいなんですよね。親しくしている人がいることは」
「感づいてるんだね。でもそれ以上言ってこないってことは信じてるんでしょ」
「朔先輩はデートとかいうから混乱させるんですよ。女子会って言えばいいのに」
「いやー女子会って感じじゃないじゃん、この三人」
そういって、カップを持ち上げた。
「デートでしょ。学校も学年も違ってご近所でもなくて、鈴ちゃんのおすすめのカフェでケーキに紅茶で。放課後デートじゃん」
「制服ではなかったらよりデートっぽいですね」
「鈴さんまでのっからないの」
かわいくこちらをみて、首を傾ける仕草はかわいいのだけれど。
そこでふと、視界に入ってきた。
男性二人。
上着を着てるけどあれは制服。
私は二人に目配せをしたら、二人もわかってくれて。
鈴さんはにっこりわらって。
朔先輩はすこし嫌そうな顔をして。