友美好転
1階の食堂兼台所では、両親が心配して話し込んでいた。
「おい、友美は大丈夫なのか」
「なにかあったのかしら、あの子?」
「心配だから見てこいよ」
「ええ、でも……」
「いいから」
母は2階をのぞきこむと友美の部屋の前まで上がり、
「友美ちゃんなにかあったの?」とドア越しにたずねた。
画面に、なにもないよ~なんで?もう寝るからお休み、と表示された。友美がその通りに答えると、母はそれ以上聞いては来なかった。
そんなこんなで3ヶ月が経ち、友美はなんとバイトリーダーになり、新人の指導やアドバイスも行い時給も若干アップしていた。父も食事中に柔和な表情を見せるようになり、家族の雰囲気も以前よりいい感じになっていった。
友美はそんな空気感をもともと苦手としていたが、ゴンゾウの表示したテキストを読むだけだし、ゴンゾウの言う通りにやっていたらこんな風になっちゃたぐらいに考えていた。
そんなある日の夕食時に。
「ところで友美、就職活動のほうはどうなんだ?」以前は腫れ物にさわるように就職についてはなにも聞かなかった父が珍しく聞いてきた。
「えっ!う~ん…」口ごもる友美。
画面に、今バイトが忙しくてちょと先送り気味で…バイトリーダーになっちゃたから。と表示されその通りに答えた。
「おっ! おまえがバイトリーダー!!」驚く父の横で母もあ然としている。
無理もない、この世に生まれ小中高と学級委員はおろかリーダーシップの必要な仕事についたことがないし。
「そ、そうか…」なんだか父は感動のあまり涙ぐんでいるようにも思える。
「実はな、父さんの会社の取引先で人を募集しているんだよ、それでもしよかったら、一度面接を受けてみないかと…」父が恐る恐るたずねてきた。
画面に、えっ!ほんと…ありがとう。分かった一度考えてみるね。(笑顔で)と表示されその通りに答える。
「そ、そうか…なるべく早くな。会社名は鈴森商事株式会社で事務職を募集中だそうだ」
画面に、うん分かった。なるべく早く返事するね!と表示されその通り答えた。
「うんうん」とうなずき父はなぜかとてもうれしそうだった。