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AI ゴンゾウ  作者: 小池 隆彦
Prologue
7/15

友美の食卓

 帰宅すると軽くシャワーを浴びひとごこち着く。母がパートから帰宅すると、うどんを茹でてくれた。

「おいしい?」母が友美に聞いた。

「うん」ただそれだけの友美。

「よかった…」母が嬉しそうに答える。

「ごちそうさま」

 さっさと食べると2階の自室へと戻って行った。自室に戻るとゴンゾウが話しかける。

「もう少し、お母様にお声をかけてもよろしいのでは?」

「だって話すことないんだもん」

「では、今度こうした機会があった時、私がテキストを表示しますので、その通りお話ください」

「え!なにそれ?」

「それなら簡単でしょう?」

「まあ、ね…」

 父が帰宅し夕食の支度が整うと1階から母の呼ぶ声が聞こえる。

「もうこんな時間か…」

 動画やWebに熱中しまくりの友美の時間は速い。こんな調子でバイトのない日はあっという間に過ぎて行った。

とりあえずゴンゾウを連れ、下に降りテーブルに着く。いつも通り父は黙っている。

ゴンゾウをテーブルに置き箸を手に取ると。

画面に、いただきます。と表示された。

「えっ!」

「い…いただきます…」小声だがふり絞るように言葉を発した。

 父と母は驚いて大きく目を開けている。

―いつ頃からだろう いただきますも言わなくなった頃って…

 続いて画面に、おいしい と表示された。

―いや確かにおいしいけどさ…なんかいまさらと言うか。

「おいしい…」

 母と父が大きく目と口を開き見つめ合っている。かなり驚いているようだ。

「友美、あなた大丈夫?」いつもと違う 娘に心配して母が気遣う。

画面に、えっ! だいじょうぶだよなんで? と表示された。

「だいじょうぶだよ、なんで?」友美がそう答えると両親はなぜかそわそわしながら「あっ」とか「うっ」とか言い出した。

「なにかあったのか?」父が聞いてきた。父に話かけられたのなんてどれぐらいぶりだ?

画面に、え!? なにもないよだいじょうぶ。と表示された。

「なにもないよ、大丈夫だよ」友美が言う。

「そ、そうか…」父はなんとか取り繕い 気持ちを整えてるようだった。

 画面に、お父さんも毎日ご苦労さまです。ありがとねと表示された。

ーげっ!こっ、これは無理だあ!

画面が点滅しながらTEXTが表示される。

「……」口ごもる友美。

 しばらくするとゴンゾウはあきらめたのかTEXTは消去された。

 タイミングを見計らい画面にごちそうさまと表示された。

「ごちそうさま…」友美は席を立ち2階の自室に戻ろうとした。画面に、自分の食器を流し台に運んでくださいと表示された。

「自分の食器を…」あっ!これはセリフではなく自分への指示だと気づき途中で黙る。自分が使った食器をまとめ流し台へと運ぶ。

 父と母はその様子を信じられないと言った表情で見つめていた。

 2階の自室に戻るとゴンゾウがクレームを入れた。

「ちゃんとセリフ通りお願いします」

「セリフ通りだったじゃん」

「え!?が抜けてましたよ、あと2回目のだいじょうぶがだいじょうぶだよになってました」

「そんな細かいこと言われてもさ」

「まあ そうですね。 今日のところはこの辺で」


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