友美一応バイトへ
友美はバイト先に着くとそそくさと エプロンを身にまとい、素早くホールへと向かおうとした。その時、上着のポケットに入れたスマホ=ゴンゾウが揺れた。
「なに?」
「私も同行させてください」
「えーでもスマホ持ち込みは禁止されてないけど…あんたエッチだし」
「もうそういうセクハラまがいの発言はいたしませんのでお願いします」
「しょうがないわね」
友美のバイト先は駅前の焼肉レストランで、埼玉県内だけに展開する小規模なチェーン店 だった。規則も緩く、スマホも着信音をオフにしていれば特に禁止はされていない。さっそく一組目の客が来店。そそくさと オーダーを取りに行き、 一通り注文を聞き鉄板に火を入れようとした瞬間お尻に振動が。
「少々お待ちくださいませ…」
友美はホールの物影に隠れるとゴンゾウを取り出した。
「なによ?」
「焼き物は オーダーされていませんので鉄板に火はつけないほうが…」
「あっそうか!ごめん忘れてた!」
友美は客が座るテーブルまで戻ると、
客の返答を聞き厨房へと向かった。
オーダーを厨房へ伝え調理が終わるまで ホールで待機する。
「あんた、何でそんなこと知ってんのよ?」
「昨日、お店のことやブログ、食べログ などなどいろいろ学習させていただきました。その中で焼き物をオーダーしてないのに鉄板に火を入れたという クレームを見つけまして」
「そうなのよ、それで店長から厳しく言われていて、すっかり忘れてたわ」
「そうですか…あと他のバイトさんをお見かけしませんが、もし友美さんがお休みになっていたら大変なことになっていたのでは」
「そういえばそうね?なんで他の子が来ないのかな」
実際にホールがワンオペ状態になり満席になると厨房の社員も応援に廻り激イソ 状態だった。
いつもの友美なら完全に手が廻らずお手上げ状態だったが、この日はゴンゾウの的確なアドバイスが功をなし。バイト終了後、店長から初めて褒められるという快挙を成し遂げた。