友美と家族
「友美、ご飯できたわよ〜」階段下から母の声が聞こえた。
返事もせず立ち上がり食事へと向かう。
「あっ! 私も連れて行ってください」ゴンゾウがつぶやいた。
「えっ、でも父さんが食事中スマホを見てると嫌な顔するのよ」
「はいですからテーブルの上に置き、お父様には面接の結果待ちとでも言えばどうでしょう?」
「……う~ん、そうね」
友美はスマホをお尻のポケットに無造作に入れると食事へと向かった。
「ウホ……」ゴンゾウがつぶやく。
「なに?」友美がいぶかる
「いや、お尻の感触が」
「H……」
二階建てのこじんまりとした建売住宅、一階の台所兼食堂で父正夫がテーブルに置かれたスマホに視線を向けた。
母和子がそれに気づき友美に目で合図を送る。
「あっこれ?面接に行った会社からいつ電話が来てもいいようにだから」
さらっと友美が流す。
父はスマホから視線をはずしふたたび食事を始めた。
夕食が終わり友美は部屋へ戻り母は洗い物、父は台所のとなりにある小さな居間でテレビを見ている。
「お母様の洗い物のお手伝いをされてはいかがですか?」
ゴンゾウがつぶやいた。
「いいのよ、洗い物も少ないしすぐ終わるから」
「すぐ終わるなら友美さんがしてもすぐ終るし、たまにはいいのでは?」
「私がやるとお皿とか 割っちゃうからさ…」友美がめんどくさそうに答えた。
「さあ、そろそろ寝るかな」友美はスマホを手に取り、電源をOFFにしようとした。
「ゲッ残量28%ってもう?さっき充電したばかりなのに」
「すみません… 燃費が悪くて。あのできれば充電中も電源はONにしておいてくれませんか?」
「でも、それってバッテリーに悪いんでしょ?」
「はい.そうなんですが。 わたしのほうでON/OFFを調整しますのでお願いします」
「なんで?」
「いや最近不眠症なもんで…」
「不眠症!?」驚く友美、スマホにも不眠症があるのかと目を見開いた。
「いや、まあそんなところです」適当に ごまかすゴンゾウもなんだか怪しいが。
「まあ、いいか」ともみは充電器を差し込むと布団かぶり、スヤスヤと眠りについた。
深い眠りに友美がつく頃、ゴンゾーの画面が変わり、何やら友美の寝息と連動しだした。しばらくすると画面に 睡眠時無呼吸症の疑い極めて少表示された。
そして電源がOFFになった。
翌朝6時10分にタイマーが作動し友美の好きな曲が次々と流れ友美を目覚めさせた。
「なに…?タイマー なんてセットしたっけ?」いぶかる友美に、
「そろそろお父様が起床されますし、 お母様のお手伝いをされてはいかがでしょう?」ゴンゾウが言った。
「まだ6時半じゃん… うちはそんなことしなくていいの! もう寝かせてよ!」
そう言うと毛布をかぶり寝てしまった。