友美動く
翌朝、ゴンゾウは友美の父の起床時間に合わせタイマーを作動させた。友美の好きな曲を中心に、次第にボリュームを大きくさせ、自然に気持ち良く目が醒めるよう努めた。
「なに……」タイマーをセットした覚えがないのにタイマーが鳴る。今までいくどとあったことなので慣れっ子となりゴンゾウにたずねた。
「はい、面接の件をお父様にお伝えしたほうが良いと思いまして」
「ああ……そうか」友美は寝間着から部屋着に着替えると急いで階段を降り、父に伝えた。
「面接の件、よろしくお願いします」
急ぐあまりゴンゾウを部屋へ忘れてきて、画面を見なくても父にお願いできることに少し驚いていたが、今まで何回となく画面を見てきて予測がついてきたとそのまま続けた。
「おお、そうか……分かった。今日さっそくお願いしておくよ」父はうれしそうに友美に答えた。
「友美ちゃん、朝ごはんは?一緒に食べる?」母がたずねてきた。
「そうだね、お願いします」
「あれ?今日は肌身はなさずいつも持っていた携帯はいいのか?」あれほど食事中のスマホを嫌っていた父がそんなことを言う。
「ああ、あれ?スマホね。忘れてきちゃた取ってこよ!」そう言いながら自室へと階段を上がって行った。
部屋ではゴンゾウがポツンとテーブルの上で充電器にささったままだ。
「ゴンゾウごめん、朝ごはん」すばやく手に取ると一階へと戻って行った。