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昔話
ザーザーと雨が降る。この世界にしては珍しい優しさだ。
さっきまでは温かかったはずの手から、今は一切熱を感じられなくなった。
私の殺した親友は、死んでいるはずなのに今も笑顔でとても死んでいるとは思えない。
クスクスと、周りから嘲笑が聞こえてくる。子どもが蟻を潰しながら笑うのと同じように、どうでもいいのだ私達のことなど。玩具をいじる子どもと一緒で壊すことにも躊躇はない。
怒りに満ち満ちている。自らで自覚するほどに。怒りは笑っている者達へと向く。
私の願いは――――――
これは、誰も知らない昔話。知るはずのない物語。神秘に満ちた時代の物語である。