1-1 時空の裂け目
時空の裂け目
そんな呼ばれ方をしているのはこの世界に現れた原因不明の超常現象だった。
その歪みに取り込まれた者は行方知らずとなる、しかし、稀に不思議な力を宿して帰ってくるという。
そんなモノに、僕は取り込まれてしまった。
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ユグド大陸、大陸歴425年4月1日
ユースタス村
「これからお前たちには成人として村を旅立つ
そのためこれから3人には山頂の祠へ向かい、加護の儀式を受けてもらう」
村長はそういって地図を手渡した。
それを受け取り、旅立ちに備えて事前に準備していた荷物を背負い、山へ向かった。
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山頂へは森や谷を越え3日くらい、途中野営をしながら向かう。
3人は歩く。先頭を歩くのはダナディ、青いバンダナ、革鎧に槍を持った男の子。
いや今日から成年なので男性か。
その次を歩くのはアリシア、背丈に合わない長い杖を地面に付きながら息も絶え絶えに歩く魔導士風のローブを着た女性。
そして僕、ガイ。お手製の弓を携え、簡単な革鎧に深緑のマント姿。それが僕だ。
「おい、ガイ。野営の跡がある、ここで昼休憩にしよう。アリシアが倒れそうだ」
ダナディがそう言うと、アリシアは力なく地面に腰を落とした。
「そうしよう。僕は何か獲ってくるから火起こしを頼んだよ」
そう言って僕は森の茂みに入っていった。
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茂みを影に獲物を見つけた、角兎だ。
静かに弓を構えて、矢を放とうとした時だった。
自分の後ろでバリバリと音を立てる存在に気が付いた。
村長が言っていた、
行商のおっちゃんも言っていた、
伝記物の物語にも書いていた、
「時空の裂け目だ…」
そういう間もなく、ガイは裂け目へ吸い込まれた。