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8.養父とメグ

 メグが商館で仕事にいそしんでいると急に養父に呼び出された。

「たっく。このクソがつくくらい忙しい時に何だってあの養父おやじに呼び出されなきゃいけないのよ。」

「お嬢様。口調がひどくなっています。おやめ下さい。」

「大丈夫よ。お客様の前でだけはとりつくろって完璧令嬢をしてみせるから安心して頂戴。」


 お嬢様。

 その言い方自体まるで血のつながりがまったくないはずの大旦那様にそっくりです。


「えっなにか言った?」

「いえ、なにも。」

 メイドのトリノはなんでか全く似てないはずの二人の共通点の多さに毎度毎度驚かされていた。

「それにしても今回のお呼び出しは一体なんなのでしょうか。」

「そうなのよ。別にどこかの店が赤字だしてるわけじゃないのに呼び出しとかありえないんだけど。」


「たんにお嬢様の顔が見たくなったのでしょうか?」

「トリノ、頭大丈夫?」

 さすがにあの大旦那様に限ってそれはありませんか。

「申し訳ありません。失言でした。」

 トリノがそう話したちょうどその時馬車が本館の前に到着した。


「さあ、いくわよ。」

「畏まりました。」

 二人は馬車を降りると待っていた使用人に案内されて執務室に入った。

「何かありましたか。」

 机の上に広げられていた書類にサインをしながら仕事を続ける養父にメグが執務室に入るなり声をかけた。


「普通、養父にあったら言う言葉はそれじゃないだろうメグ。」

「そうですね。申し訳ありません。儲かっていますか。」

「うむ。まあまあだ。」


 この二人本当に血のつながりがないの。

 トリノが壁際に控えながら二人の会話を聞いて心の中でつぶやいた。


「それで何用ですか?」

「ああ、お前の結婚相手が決まった。」

「誰ですか。」

「セドリック王子だ。」

「はあ?頭大丈夫ですか。わがウエスト商会に何の利益があるんですか?」

「別にない。」

「じゃあお断りします。」

「命令だから結婚しろ。」

「いやです。」

「私はお前の養父だ。」

「では養子縁組を破棄します。」

「破棄するまでに最低一年はかかる。その間は王宮に上がれ。」

「どういう意味ですか。」

「そのままだ。」


 一人は書類にサインをしながらもう一人は拳をワナワナと握りしめながら場の空気を凍らせた。


「話は以上だ。」

「失礼します。」

 メグはくるっと踵を返すとその執務室を出た。

 すぐにトリノもその後ろに従った。


 メグは執務室を出るとそのまま養父の屋敷にいる執事長に馬車の用意をさせるとそこを出てなぜか娼館にむかった。

「なぜ娼館に向かっているんですか?」

「今回の件について詳細を知るためよ。」


 メグはそれだけ言うと娼館の裏にとまった馬車から駆け降りると娼館にある執務室にホソイを呼びつけた。

「なにかありましたか。」

「ホソイ。王宮でなにが起きているの。バカ養父が私にセドリック王子との結婚話を振って来たわ。」

「ああ、その話ですか。黒幕はアントワネット王妃ですよ。」

「なんでここに王妃が出てくるの。それよりなんでドケチの養父がその王妃の要望に応えたの?」

「前払いで公爵夫人の愛人になれたからじゃないんですか?」

「へ・・・なにそれ?」

「あれ知りませんか。大旦那様の昔の恋人ですよ。」

 うそー。

 あのドケチに恋人なんていたの。


「知ってたトリノ。」

 トリノは首を横に振った。


 へえーそう。

 昔の恋人で今の愛人のためにあのドケチは商会の利益にもならないのに娘を売ったんだ。

 それならいいわ。

 こっちにも考えがある。


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