6.王都に帰還
メグたちは数日の野営を経て無事王都に戻って来た。
「じゃあね、レリック。」
メグはレリックに手を振ると城とは違う方角に馬を進めようとして彼に止められた。
「なに?」
「帰るのは普通殿下に報告した後だろ。」
「はあぁ?何言ってるの。命令を受けたのはレリックであって私じゃないわ。なのになんで私がその報告に付き合う必要があるの?」
「いや、それは・・・その・・・」
やけに口ごもるレリックをその場に残してメグは馬を進めようとしたが今度は守備隊長に捕まった。
「一体なに?」
「メグ様、殿下に今回の事の顛末をぜひお話しください。」
「いやよ。私が話したって彼らは聞いてくれないわよ。」
「そんなことはありません。」
「今までもそんなことがあったのよ。」
「メグ。」
レリックの必死の眼差しにメグは大きな溜息を吐くと結局二人の男の懇願に屈して城に馬を進めた。
「いい。これは貸しだからね。きっかり返してもらうわよ。」
「わかった。」
レリックは頷いた。
彼らはそれから速足で馬を城に向かわせた。
門では守備隊長とレリックが一緒だったので早々と面会の許可が降りてレリックとメグは殿下に面会した。
「ご苦労だったね、レリック。アンジェも心配してたんだよ。」
一体何を心配していたんだか是非とも聞かせて貰いたい。
そう口にしようとしているとバンと扉が開かれどこかで見た憶えるのある人物が部屋に入って来た。
「レリック!」
部屋に入って来た人物はメグの前を素通りすると殿下に報告しているレリックに抱き付いた。
「あまりにも遅いんで本当に心配したのよ。大丈夫?どこも怪我していない。」
どこかの人物はそういうとレリックの全身を撫でまわした。
それを見ていた殿下の額にピキピキと音がして表情が険しくなっていく。
メグは三人が気がつかないうちにそろそろと開け放たれている扉から逃亡しようとして殿下の声にそれを遮られた。
「メグ。久しぶりに来たんだ。ぜひアンジェとお茶でもしていくがいいだろう。」
「まあメグ。久しぶりね。すぐにお茶の用意をさせるわ。」
アンジェはそういうと殿下のいる前でレリックの頬にキスをすると部屋から出て行った。
「レリック!」
惚けていたレリックが我に返って殿下のほうを見た。
メグは相変わらずな三人の関係に今すぐ王宮を辞去したいと願い出たが殿下の妨害でそれはかなわなかった。
結局、今回の顛末を事細かに説明したがアンジェには理解して貰えず。
何とか殿下にだけは支払い金額の大きさを実感して貰えた。
メグは終始ご満悦な表情のアンジェをお茶会会場に残して何とか帰途についた。
もう二度とあの三人には関わるまい。
そう決心したにかかわらず。
後日、某有力貴族の圧力と養父の個人的都合でメグは違う案件でまたあの三人にかかわることになった。
メグの不運はまだまだ続く。